米民主党が分裂 ミシガン州上院選で党派を超えた支持表明

2026/11/03
更新: 2026/11/03

アナリストらは、この選挙におけるヘイリー・スティーブンス下院議員の共和党候補への支持表明により、彼女の民主党員としてのキャリアはおそらく終わったと述べている。

11月3日の投票締め切りまで48時間を切った中、民主党上院予備選の敗者が党の意向に背き、共和党のマイク・ロジャース候補を支持したことで、ミシガン州の民主党に激震が走った。

重大な局面を迎えた選挙戦が最終盤に差し掛かった先週末、ヘイリー・スティーブンス下院議員(ミシガン州選出・民主党)は11月1日に180度の方向転換を見せ、数カ月前まで激しく非難していたロジャース氏の支持を表明し、ランシング(ミシガン州の州都)からワシントンに至るまでの民主党員を驚かせた。 

8月4日に行われた進歩派ポピュリストのアブドゥル・エルサイード氏との激しい予備選(最終的にエルサイード氏が0.9パーセントポイント差で勝利)の後、スティーブンス氏は当初、左派の対立候補であった同氏を支持し、ロジャース氏は「ドナルド・トランプ(大統領)の危険なアジェンダの言いなりになるだけだ」と述べ、五大湖州(ミシガン州)全体で民主党候補を支援することを約束していた。 

しかし、8月6日に開かれた州党の朝食会でエルサイード氏と共に姿を見せて以降、スティーブンス氏は選挙戦から遠ざかっていた。 11月2日のソーシャルメディア上での声明で、彼女はエルサイード氏が左派コメンテーターのハサン・パイカー氏と選挙運動を行っていることや、エルサイード氏の叔父であるジェンク・ウイグル氏が、ミシガン州における消費者物価の高騰を米国のイスラエルへの軍事支援のせいにする広告を出したことを批判した。

スティーブンス氏は、広告の過激な文言を拒絶したエルサイード氏の決定を歓迎しつつも、その時点ですでに自分が彼の選挙イベントで歓迎されていないことに気付いたと記している。 「その経験はより大きな疑問を呼び起こした」と彼女は述べた。「予備選で対立候補を支持した人々を受け入れる余裕がない候補者が、どうして自分と意見の異なる人々であふれる州全体を代表できるというのだろうか」

 

激しい予備選の戦い

8月の上院予備選は、民主党の方向性を巡る全面戦争の様相を呈した。党の主流派の多くがスティーブンス氏を支持する一方、進歩派の大部分はエルサイード氏を支援した。 デビー・ディンゲル下院議員(ミシガン州選出・民主党)を含む一部の民主党員は、エルサイード氏による米国のイスラエル支援に対する強い批判を問題視した。予備選後、ディンゲル氏はエルサイード氏の支持に回った。 アドインパクト(AdImpact)の分析によると、この選挙は米国上院の予備選として記録上3番目に多額の費用が投じられ、エルサイード氏のための730万ドルに対し、スティーブンス氏のためには6390万ドルが費やされた。 AP通信が7月19日に報じたところによると、アメリカ・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)およびその関連団体は、スティーブンス氏のためにこの選挙に3000万ドル近くを投じており、これはAIPACによる単一の選挙への投資としては最大規模となった。

 

スティーブンス氏の心変わりをもたらしたもの

事態が頂点に達したのは、10月28日に放映されたエルサイード氏を支持するRebellion PAC(※エルサイード氏の叔父らが設立した進歩派の特別政治活動委員会=スーパーPAC)の広告がきっかけであった。

スティーブンス氏はこの広告を反ユダヤ主義的であり、米国の経済的苦境をユダヤ人のせいにしていると批判した。エルサイード氏は自身の陣営は無関係であると主張し、スティーブンス氏は11月1日にデトロイトの黒人教会でジム・クライバーン下院議員(サウスカロライナ州選出・民主党)やエルサイード氏と並んで同席し、広告に対する「非難声明を出す予定」だとしていた。 

しかしその後、エルサイード氏はスティーブンス氏の招待を取り消し、広告に関する彼女の声明は予備選での争いを「蒸し返す」ものだと非難した。その直後の日曜日、スティーブンス氏は別のデトロイトの教会でロジャース氏と共に姿を見せ、以前は「最悪のタイプの政治家」と批判していた同共和党候補への支持を表明した。 

スティーブンス氏はデトロイト・フリー・プレス紙のインタビューで、ロジャース氏を支持した理由について「彼は国を愛していると思う」と語った。 スティーブンス氏はCNNのインタビューで、エルサイード氏が「ますます怒りを募らせており」、自身の陣営に彼女を近づけさせたくなかったのだと非難した。

ロジャース氏支持を表明する前夜にディンゲル氏と交わした会話から何が変わったのかと問われると、彼女は「私自身には何の変化もない。…私は今でも自分の党全体を深く愛している」と答えた。 

ロジャース氏を支持しつつも、スティーブンス氏はCNNに対し、「共和党はトランプ氏を独裁者にすることにしか関心がないことを示しているが、民主党はそうではない」と語った。

4月、ロジャース氏の学生支援チームに問題のある人物が含まれていると報じられた。若手共和党員のグループチャット内でヒトラーが称賛された際、そのやり取りを擁護した人物である。当時スティーブンス氏は、反ユダヤ主義が台頭する中でこれは「恥ずべきこと」だとして、ロジャース氏を強く批判していた。 しかし今回、彼女はかつて激しく批判したロジャース氏の支持に回った。フリー・プレス紙への説明によれば、Rebellion PACの反ユダヤ的な広告問題が起きた後、エルサイード氏が民主党内のユダヤ系メンバーに対して無関心な態度をとり続けたことに、彼女は強い憤りを抱いていたのである。

11月2日には、エルサイード氏を当初支持した後に「締め出された」と感じたことについても振り返っている。「支持は歓迎されたが、その背後にいる人々は忘れ去られたかのようだった」と彼女は述べた。「私を支持してくれた有権者の声に耳を傾けたり、予備選で浮き彫りになった現実的な意見の相違を埋めようとしたりする努力はほとんど見られなかった」

 

民主・共和両党の反応

ランシングからワシントンに至る民主党の指導者たちは、スティーブンス氏による共和党候補の支持表明を批判し、彼女の政治的将来を疑問視した。 

ミシガン州民主党のカーティス・ハーテル委員長は、スティーブンス氏はもはや同党のメンバーではないと述べた。スティーブンス氏のもう一人の民主党予備選の対立候補であったマロリー・マクマロー州上院議員は、選挙戦の最終盤におけるロジャース氏への支持表明を「存在感を示すための悲しく絶望的な試み」と呼んだ。 チャック・シューマー上院院内総務(ニューヨーク州選出・民主党)はスティーブンス氏の行動を「卑劣な裏切り」と呼び、ナンシー・ペロシ元下院議長は、彼女が「マイク・ロジャースへの恐ろしい支持表明によって、ミシガンの家族の医療、自由、そして未来を危険な形で裏切る」ことを選んだと非難した。

8年間にわたりスティーブンス氏の首席補佐官を務めたジャスティン・ジャーマン氏は、自身を含め同下院議員のチームの多くが辞任し、エルサイード氏を「心から支持している」と発表した。 インディアナ大学インディアナポリス校の政治学准教授であるアーロン・デュッソ氏は、大紀元(エポックタイムズ)に対し次のように語った。「スティーブンス氏がこのような行動に出て何の得があったのかは不明だ。彼女の政治的キャリアはこれで終わった」 「たとえ彼女が共和党員になったとしても、政党を鞍替えした者が新しい党で大きな権力や名声を得ることはないという歴史があるため、彼女の先行きは暗い」と同氏は述べた。

一方、共和党はスティーブンス氏が離党したことを称賛している。今年は、上院の過半数奪還を目指す民主党がミシガン州の上院議席を死守しようと必死になっている年である。トランプ大統領はロジャース氏への彼女の支持表明を「勇敢」だと呼び、共和党への参加を促した。 スティーブンス氏は日曜日の夕方、デトロイトで開催されたイェシーバー・ベス・イェフダー(※ミシガン州最大規模の伝統的なユダヤ系教育機関であり、その年次晩餐会は政財界の要人が多数参加する一大行事として知られる)の年次晩餐会で、ユダヤ人コミュニティのメンバーからスタンディングオベーションを受けた。

 

婚約者もロジャース氏を支持

ミシガン州の複数の民主党員は、彼女の婚約者でミシガン州の弁護士であるジェイソン・ターキッシュ氏が、日曜日の朝にスティーブンス氏を説得して心変わりさせた張本人である可能性があると主張している。

スティーブンス氏は当初、婚約者がロジャース氏を支持した後も、エルサイード氏を含め投票用紙に記載されたすべての民主党候補を引き続き支持すると約束していた。 ミシガン州のジム・ブランチャード元知事は「State Affairs」に対し、金曜日に夫婦と夕食を共にした際、スティーブンス氏の婚約者が8月にエルサイード氏を支持したことで彼女を繰り返し非難していたと語った。 

11月2日の声明で、スティーブンス氏は婚約者が彼女の代わりに決断を下したという見方を非難した。 「それが何を意味しているか考えてほしい」と彼女は述べた。「女性が議会で働き、州全体の選挙を戦い、自らの信念のために戦っているにもかかわらず、人々に好まれない選択をした時には、誰か他の人間が糸を引いているに違いないと言われるのだ」

スティーブンス氏は、それは「政治分析を装った性差別」であると付け加えた。 FOX 2 デトロイトのインタビューでディンゲル氏が語ったところによると、前夜の電話でスティーブンス氏はロジャース氏支持の憶測は噂に過ぎないと述べていたという。日曜日の早朝に二人がテキストメッセージを交わした際も、スティーブンス氏の気が変わったようには見えなかったとディンゲル氏は述べた。 

ミシガン大学の理事でありスティーブンス氏の長年の友人でもあるジョーダン・アッカー氏は、日曜日の午前9時直前に同下院議員からロジャース氏に関しては「沈黙を保つつもりだ」と伝えられたと述べた。彼は困惑し、「その後の2時間で何が変わったのか」といぶかしんだという。 日曜日、スティーブンス氏はエルサイード氏からクライバーン氏とのイベントへの招待を取り消されたと述べ、これを近づくなというメッセージだと解釈したとしている。 

しかし、イースタンミシガン大学の政治学助教であるジョシュア・コス氏は大紀元に対し、スティーブンス氏が以前のCNNのインタビューで心変わりの理由をうまく説明できていないように見えたと語った。 「党内での政治的将来を焼き払ってしまった人物にしては、通常であればその意図についてより明確な道筋が示されるべきだと思う」と同氏は述べた。 コス氏は、スティーブンス氏の転向は「これまで公にされていなかった信念、個人的な人間関係、あるいは何らかの形で不当な扱いを受けていると強く感じたことなど、個人的な動機によるものであることはほぼ間違いないだろう」と述べた。

 

選挙戦への潜在的影響

スティーブンス氏は8月の予備選において、多くのユダヤ系および黒人の民主党員から強い支持を受け、デトロイトのあるウェイン郡では5パーセントポイント以上の差をつけて勝利した。同郡には、ディアボーン(※デトロイト近郊に位置し、全米で最もアラブ系人口の割合が高いことで知られる都市)に集中する米国最大規模のアラブ系アメリカ人コミュニティもある。 

コス氏によれば、スティーブンス氏が日曜日に支持を撤回する前、エルサイード氏への支持に様々な条件をつけていたことを踏まえると、彼女はユダヤ系やアラブ系といった特定層の票を動かそうと画策していた可能性がある。しかし、これらのグループの「伝統的な投票傾向」を考慮すると、その戦略は実を結ばないだろうと同氏は指摘する。

実際、ユダヤ人コミュニティの対応は割れている。9月には、ミシガン州のユダヤ人指導者や有権者を名乗る500人以上が「ミシガン・ジューズ・フォー・デモクラシー」名義の書簡に署名し、エルサイード氏に「懸念」を抱きつつも彼を支持するよう呼びかけた。同団体は「マイク・ロジャース氏はユダヤ人の支持を求めているかもしれないが、彼の極右的な政治アジェンダは、ユダヤ人を含むすべてのアメリカ人の安全を脅かすものだ」と記している。 一方で、これに対抗する動きもある。進歩系団体「シオネス・アクション・ファンド」が支援する嘆願書「ノンネゴシエブル(譲歩できない)・ミシガン」は、エルサイード氏をより厳しく批判し、ユダヤ人票を得るための「親ユダヤ的な立場」の条件を提示した。さらに別のグループは、ロジャース氏を支持する「極端主義に反対するミシガン州ユダヤ人」の嘆願書に賛同している。

コス氏は、スティーブンス氏の離反劇が、選挙戦最後の48時間で「ロジャースを支持する民主党員」の連立を築くための一か八かの策であったとすれば、それは裏目に出る可能性が高いと主張する。「これまでアブドゥル(エルサイード)氏の支援に消極的だった人物も含め、党組織のほぼ全体が即座に彼の下に結集し、スティーブンス氏の決定を非難した」と同氏は語る。「時期が遅かったとはいえ、今回の件は極めて深刻な裏切りと見なされているため、これまで選挙にあまり関心がなかった民主党支持層をも奮い立たせる結果になるだろう」

実際にその兆候は表れている。エルサイード陣営は11月2日、スティーブンス氏がロジャース氏支持に寝返って以降、240万ドルの資金を集め、1日あたりの資金調達記録を更新したと発表した。寄付者は6万5000人以上(平均寄付額36.74ドル)に上り、そのうち2万9000人以上が初めての寄付者だったという。

ディンゲル下院議員もCNNに対し、「私はアナーバーでのNAACP(全米黒人地位向上協会)のイベントや、障害者団体、UAW(全米自動車労組)のイベントなど、数え切れないほどの集まりに参加してきたが、スティーブンス氏の行動は完全に裏目に出ていると思う」と語った。「期日前投票の最終日には、閉め切り間際の列に駆け込む投票者が増えていた。黒人コミュニティの人々は、『誰が自分たちの声を代弁するのか』を他人に勝手に決められることに本気で怒っているのだ」と彼女は述べた。

なお、スティーブンス氏本人は、この記事の公開時点までにコメントの要請に応じていない。

エポック・タイムズで国家政治、航空宇宙、航空業界を担当する記者である。以前は「サラソタ・ヘラルド・トリビューン」でスポーツ、地域政治、速報ニュースを担当していた。