干ばつ コロラド川 そしてフーバーダム 水位低下が脅かす数百万人の水供給と水力発電

2026/09/18
更新: 2026/09/18

ネバダ州ボルダーシティ—、ミード湖のコールビル湾マリーナでは、かつて湖水に覆われていた岸辺の上に、今や剥き出しの岩壁がそびえ立つ。

茶色と白の案内板が、今や消え去った2000年当時の湖岸線の位置を示している。それは地域一帯を襲う数十年にわたる巨大干ばつ(メガドラウト)の始まりでもあった。

さらに斜面を下るとマリーナや係留施設が見えてくるが、徒歩でそこへ辿り着くには華氏100度(摂氏約38度)の猛暑の中を歩かなければならない。

干ばつはこの人造湖をかつての姿から縮小させ、収束の兆しは見えない。水位低下は数百万人分の生活用水や水力発電を脅かし、水位が届かなくなった一部のボート進水場(スロープ)が、閉鎖を余儀なくされている。

「かなり恐ろしい状況になっている。水位が下がりすぎて、危険箇所の標識設置が追いつかないほどだ」と、匿名を希望するマリーナ従業員はエポックタイムズに語った。

「水位の低下ペースが速すぎて、ボートを下ろすのも一苦労だ。進水スロープの維持管理も難しくなっている」

浅瀬のせいで、かつては水深深くにあった岩や漂流物に衝突し、プロペラが破損したり船底が傷ついたりするボート利用者も出ている。

その従業員は数百フィート先を指差した。

「あそこのコンクリートが見えますか?」

2026年8月27日、ネバダ州ボルダーシティ近郊のミード湖にあるコールビル・ベイ・マリーナの旧水位線を示す標識(Allan Stein/The Epoch Times)

かつてはあそこに波が打ち寄せていたのだと、従業員は語る。

今では、干上がった湖底に青々とした草が生えている。

「かつて水があった年代や水位がひと目でわかる。水は下がり続け、どこまでも低くなっている」とその従業員は話した。

「周りを見てほしい。本当に深刻だ。どれほど静まり返っているか見てくれ」

しかし、ミード湖の話は全体のほんの一幕に過ぎない。その運命は、約300マイル(約480キロメートル)上流にある姉妹貯水池パウエル湖、そして双方を潤すコロラド川と直結している。

気温上昇と積雪量の減少により、川、ひいては湖に流れ込む水量が激減した。いずれの湖も、南西部一帯の利用者に電力を届けるダムにとって不可欠な水源である。

2026年8月27日、ネバダ州ボルダーシティ近郊のミード湖ヘメンウェイ港の桟橋付近に停泊するモーターボート(Allan Stein/The Epoch Times)
2026年8月27日、ミード湖のコールビルベイマリーナの入り口(Allan Stein/The Epoch Times)
2026年8月27日、コールビルベイマリーナのスロープ閉鎖を知らせる電光掲示板(Allan Stein/The Epoch Times)

 

歴史的干ばつ

コールビル・マリーナで陸上シャトルの運転手を務めるオリビア・コナーは、過去にも深刻な干ばつを目にしてきたが、この20年にわたる広域干ばつに匹敵するものはないと語る。

「今年は間違いなく湖の水位が劇的に落ちた。今はほぼ史上最低レベルにある」とコナーはエポックタイムズに明かした。

水力発電用貯水池には2つの重大な境界点がある。「デッドプール(死水域水準)」は、重力によって下流へ水を流せなくなる限界点を指す。「パワープール(最低発電水位)」は、ダムの水力タービンに水を送る取水口へ届くために必要な最低水位である。

ミード湖の現在の標高は平均海抜1,039フィート(約317メートル)で、貯水率は26パーセントにとどまる。満水位の1229フィートから大幅に低下しており、2025年と比べても18フィート低い。現在、デッドプールを144フィート、パワープールを89フィート上回る位置にある。

デッドプールに達すれば、フーバーダムを稼働させることはできなくなる。1931年に建設されたこの巨大ダムは、約800万人の電力需要を賄っている。

ミード湖に次ぐ全米第2の貯水池であるパウエル湖は、貯水率が22パーセントをわずかに下回っており、満水位の3700フィートより約183フィート低く、1年前よりも約29フィート低い。

同貯水池は、約500万世帯に電力を供給するグレンキャニオンダムに水を送っている。現在の干ばつ状況下で、貯水池はデッドプールを147フィート、パワープールを27フィート上回る水位にとどまっている。

2026年7月31日、アリゾナ州ページ近郊のグレンキャニオン国立レクリエーションエリアにあるパウエル湖に浮かぶワウィープ・マリーナ(Luyi Liu/The Epoch Times)

 

二重の苦境

コロラド川は、コロラド州の大陸分水嶺からメキシコのカリフォルニア湾まで1400マイル(約2250キロメートル)を流れる。

双方の湖にある貯水池やダムを管理する米国開拓局によると、その流域面積は25万平方マイルに及び、流域7州にとって極めて重要な資源となっている。

アリゾナ、カリフォルニア、コロラド、ネバダ、ニューメキシコ、ユタ、ワイオミングの各州は、水、水力発電、観光・レクリエーション、自然環境をこの川に依存している。

「農業利用がコロラド川の水の70パーセントを占めるが、3500万から4千万人の人々もまた、都市用水の全量または一部を同じ水に頼っている」と開拓局は述べる。

さらに1944年の条約に基づき、川の水の一部はメキシコへも流れている。

この本流と支流の水は、500万エーカー(約2万平方キロメートル)以上の農地の灌漑(かんがい)に使われ、30に上る先住民族の部族社会の生活を支えている。

下流に位置する「下流域諸州」には、1922年のコロラド川協定に基づき年間750万エーカー・フィートの水が配分されている。優先的水利権を持つカリフォルニア州が440万エーカー・フィート、アリゾナ州が280万、ネバダ州が30万をそれぞれ請求する。

2000年頃にコロラド川一帯で深刻な巨大干ばつが始まって以降、下流域諸州では貴重な水が急速に干上がり、消失していく事態が続いている。

米国海洋大気庁(NOAA)の調査によると、2020年から2022年にかけての干ばつの深刻度のうち、61パーセントは蒸発が原因であった。降水量の減少に起因する割合は残りの39パーセントに過ぎない。

気温上昇と蒸発によって土壌から水分が奪われるため、降水量が平年並みであっても干ばつは発生し得るとNOAAは指摘する。

わずかな気温上昇であっても、干ばつをより長期化させ、広範にし、深刻化させる。

上流域諸州の貯水池は比較的良好な状態を保っている。中央アリゾナ計画によると、ワイオミング州のフレーミング・ゴージは貯水率71パーセント、コロラド州西部のクリスタル・クリーク貯水池は89パーセント、同州のモロー・ポイント貯水池は97パーセントに達している。

2014年9月23日、ワイオミング州とユタ州の州境にあるフレイミング・ゴージ貯水池。コロラド川上流域に位置するこの貯水池は、現在貯水容量の71%に達している(Paul Hermans/CC BY-SA 3.0,)
2013年8月28日、コロラド州パイクスピークの麓、パイク国有林にあるクリスタルクリーク貯水池。上流域にあるこの貯水池は、現在貯水容量の89%に達している(Fredlyfish4/CC BY-SA 3.0,)
この写真は、コロラド州シマロンにあるモローポイント貯水池。コロラド川上流域に位置し、貯水容量の97%に達している(Nationalparks/CC BY-SA 2.5)

 

新たな運用指針

8月21日、内務省は2027〜2028年に向けた新たな運用指針を発表し、下流域諸州に対しコロラド川の水利用を年間125万エーカー・フィート削減するよう義務付けた。

これにはアリゾナ州の76万エーカー・フィート、カリフォルニア州の44万、ネバダ州の5万が含まれる。また各州は、今後2年間でさらに70万エーカー・フィートを自主的に節水・貯留しなければならない。

今回の指針では、上流域のコロラド、ニューメキシコ、ユタ、ワイオミングの各州に対して義務的な制限は課されていない。

本指針は、コロラド川を管理し、グレンキャニオンおよびフーバー両ダムの重要インフラを保護するための10年間の枠組みを定めている。

また、長期化する干ばつに対応するための柔軟な手段と自主的な保全策を提供するものであると内務省は説明した。

内務省はさらに、トランプ政権が2025年1月以降、コロラド川流域の水供給、貯留、配水、処理、効率化事業に30億ドル以上を投資してきたと付け加えた。

アリゾナ州のケイティ・ホッブス知事は計画を歓迎した。

2026年7月27日、アリゾナ州ペイジ近郊のグレンキャニオンダム展望台から見たコロラド川(Luyi Liu/The Epoch Times)
2026年7月27日、アリゾナ州ペイジ近郊のグレンキャニオンダム展望台から見たコロラド川のグレンキャニオンダム(Luyi Liu/The Epoch Times)

「連邦政府による取水量の強制削減は、アリゾナ経済のみならず米国の安全保障にも壊滅的な打撃を与えかねないものだった。だが、この計画によって我が州はそれを回避することができた」とホッブス知事は声明で述べた。

しかし知事は、下流域と上流域の州の間にある不平等な扱いを批判した。

「連邦政府の決定は、ミード湖を犠牲にして上流域の貯水池を保護するものであり、下流域に権利がある水量を満たしていない。その一方で、将来における連邦の一方的な削減という脅威は依然として残っている」と知事は語る。

コロラド州のジャレッド・ポリス知事は、上流域諸州はこの指針を心強く思っていると述べた。知事によると、本指針は「今後の実行可能な計画の基盤とすべき、現実の水供給量をより適切に反映したもの」だという。

「流域の水供給の実態を無視したり、ごまかしたりすることはできない」とポリス知事は声明で語った。「流域の上流・下流いずれの州も、深刻な干ばつの痛みに直面している」

「これは全州と連邦政府が現実的に対処すべき課題であり、だからこそ7州による合意がコロラド川流域のすべての水利用者にとって最善の結果をもたらすのだ」

2026年7月28日、アリゾナ州ココニノ郡のマーブルキャニオンにかかる歴史的なナバホ橋から見たコロラド川(Luyi Liu/The Epoch Times)

 

観光レクリエーションの再構築

人口7440人を抱えるアリゾナ州ページのパウエル湖では、後退する湖岸線が飲料水の供給確保にとどまらず幅広い生活・経済活動に支障をきたしている。

市の広報官アダム・ゲラーによると、最大の懸念はボートの昇降インフラだという。

水位の低下は自治体の財政収入にも打撃を与えている。

2025年6月以降、市の売上税収入は11パーセント以上減少し、ホテル税収入は22パーセント超も落ち込んだとゲラーは語る。

民泊の稼働率は10パーセント低下し、7月のホテル稼働率はおよそ6パーセント下がった。

「5月と6月にも同様の落ち込みが見られた」とゲラーはエポックタイムズに述べた。

この落ち込みは主にボート遊びや複数日の滞在客の減少に起因しているとゲラーは見ている。

2026年8月27日、アリゾナ州ペイジ近郊のパウエル湖にあるアンテロープ・ポイント・マリーナで、レンタル担当者(左)がスキードゥーのレンタル手続きを手伝っている(Luyi Liu/The Epoch Times)
2026年8月27日、アリゾナ州ペイジ近郊のパウエル湖でモーターボートを楽しむ人々。パウエル湖では、歴史的な低水位にもかかわらず、ボート遊びは依然として人気のアクティビティである(Luyi Liu/The Epoch Times)
2026年7月28日、アリゾナ州ペイジ近郊のアンテロープ・キャニオン地区のパウエル湖でカヤックを楽しむ人々(Luyi Liu/The Epoch Times)
2026年7月28日、アリゾナ州ペイジ近郊のパウエル湖にあるアンテロープ・ポイント・マリーナにボートが停泊している(Luyi Liu/The Epoch Times)

 

市内で最大の観光名所であるホースシューベンドと近くのアンテロープキャニオンは、湖の水位の影響を受けにくく、引き続き観光客を集めている。

しかし、国際観光需要の鈍化や燃料費高騰などの要因により、いずれも若干の減少を記録している。

国立公園局が湖のスロープを管理しており、アンテロープ・ポイントやブルフロッグ・マリーナなどの拠点において、水位低下に対応すべくスロープを延長する事業資金を確保している。

「市としては、観光を促進し、訪れた人々の体験価値を高める取り組みを進めている」とゲラーは話す。

ダウンタウンの美化、新しい遊歩道の整備、長期滞在を促すデジタルパスポートの導入、さらにはグランドキャニオンや南西部の国立公園・国定記念物を巡る周遊ルート「グランドサークル」の拠点都市としての宣伝などが計画に含まれている。

市はまた、2つの新たな高級リゾート向けの土地売却を承認した。小売店や飲食店の開発も計画されているという。

2026年7月27日、アリゾナ州ペイジ近郊のグレンキャニオン国立レクリエーションエリアにあるホースシューベンドからの夕日(Luyi Liu/The Epoch Times)

 

流れに乗って

ゲラーは、湖へのアクセス制限が今後も続き、地元企業に影響を及ぼす「現実的な可能性」を見据えて市が計画を策定していると述べた。

内務省の新たな運用指針は、湖の防衛水準として3510フィートを掲げ、その数値を守るよう放流を管理するとしている。

「連邦政府の現行予測でも、次の年度には水位が3510フィートを下回ると見込まれており、近い将来の状況を決して楽観視はしていない。だが、長期的に死守すべき最低ラインが定まったこと自体は、確かな前進だ」とゲラーは語る。

ページの経済と生活の質を守るには「誠実で現実的な計画」が不可欠であるとゲラーは付け加えた。

「それは、現在の湖へのアクセス状況を人々にありのまま伝え、湖の水位に関わらず観光客を長く留まらせるような体験を引き続き構築し、この状況の好転時期を握る連邦機関と連携を維持することを意味する」

ページの酒類・スポーツ用品店「スティックス」のマネージャーを務めるミケイラ・ドーは、パウエル湖の水位低下はまだ大きな懸念事項ではないと語った。セーリングや釣りを楽しむための水は依然として十分に存在する。

「それでも、今はどんどん水が減る一方だ」と彼女はエポックタイムズに語った。「今年の夏は混雑しておらず、予想よりも少し低調だった」

アリゾナ州ペイジにあるスティックス・リカー・アンド・スポーツ用品店の店長、ミケイラ・ドー氏(2026年8月27日撮影)(Allan Stein/The Epoch Times)

「ビジネスに関して言えば、かなり順調にいっている。安定を維持している」

水位の低下によって、新たに露出したエリアをハイキングするなど、新しいレジャーの機会も生まれたと彼女は話す。

8月のある朝、アンテロープ・マリーナはボートや水上バイクのレンタル、湖上ツアー、レストランなどで観光客をもてなしていた。

「湖はまだそこにある。湖でできることはたくさんある」とドーは言う。彼女は、水位低下よりもガソリンや軽油の価格高騰のほうが悪影響を及ぼしていると考えている。

「だから最善の策は、魅力を発信して、湖は健在だと皆に伝えることだ」

「誰もが秋のシーズンは記録的な低水準になると考えているようだが、私は前向きに捉えている」

パウエル湖パドルボード&カヤックのボート運転手、レイシー・ニコルズは、この人造湖が誕生した1963年以来、最低の水位にあるように見えると語った。

2026年8月27日、アリゾナ州ペイジにあるレイク・パウエル・パドルボード&カヤックのボート操縦士、レイシー・ニコルズ(Allan Stein/The Epoch Times)

「水がここまで引いたおかげで、カヤックを抱えて長い坂を上り下りする必要がなくなった」とニコルズはエポックタイムズに語った。

「水面から突き出る岩や崖がかなり増えたので、注意を怠らないようにしている」

長期化する干ばつと水位の低下にもかかわらず、湖での生活はこれまでとさほど変わらず続いていると彼女は話す。

「以前とほぼ同じアクティビティを楽しむことができる」とニコルズは言う。「個人的には、水が戻ってきてほしい。そうすれば客も余計な心配をしなくて済む」

ミード湖のコナーもまた、前向きな姿勢を保っている。「ネックなのは岸回りのアクセスだけ」と彼女は語る。「一度ミード湖に出てしまえば、今でも変わらず美しい。豊かな水があり、レジャーを楽しむ広大な空間が広がっている」

コナーは、2026年後半に一段と強まると予想されるエルニーニョ現象が、より多くの雨と待ち望まれる救済をもたらしてくれることを期待している。

「私たちは最善を願っている」と彼女は結んだ。

2026年8月27日、ネバダ州ボルダー近郊のミード湖にあるコールビル・ベイ・マリーナ。数十年にわたる干ばつにより、湖の水位はここ数十年で最低レベルにまで低下している(Allan Stein/The Epoch Times)
エポックタイムズ記者。アリゾナを拠点に米国時事を担当。