中国・長江に建設した世界最大級の水力発電ダム「三峡ダム」を巡り、内部関係者と名乗る人物が「ダムの決壊は時間の問題で、死者は爆発的に増え、被災者は少なくとも4億7千万人に及ぶ」と警告した。あわせて「ダム決壊」を想定した内部シミュレーション資料とする画像も海外に流出し、大きな波紋を呼んでいる。
三峡ダムは洪水調節や発電を担う中国の重要インフラだ。その一方で、ひとたび決壊すれば長江流域に壊滅的な被害が及ぶとの懸念は長年指摘されてきた。
資料を公開したのは、Xで活動する中国語圏の著名ブロガー「羅翔―破幕推牆」だ。同氏はこれまでも、中国国内で検閲され報じられない情報や、内部関係者から寄せられた告発を海外へ発信してきたことで知られる。今回も三峡グループの内部関係者と名乗る人物が、「より多くの人に真実を知ってほしい」として同氏に資料を託したという。
公開された資料には、ダム決壊から6時間、24時間、72時間、1週間後までの浸水範囲や洪水の流れ、交通網への影響、被災人口などを分析したシミュレーションを含んでいる。
資料によると、洪水は長江沿いを一気に下り、武漢、南京、上海など29都市に影響が及び、約1億3200万人が被災すると想定している。1週間後には浸水範囲が最大となり、高速道路約7428キロ、国道・省道約9865キロ、鉄道約2318キロが寸断されるほか、156の橋、18の空港、27の港湾が影響を受け、長江中下流域の交通網はほぼ全面的に機能停止すると分析していた。
さらに、内部関係者は、三峡ダムでは底部の複数箇所で漏水が発生し、幹部らは自らの家族を避難させながら、現場職員にはダムに残って業務を続けるよう指示したと明かしている。
また、水利事業には昨年約1兆2800億元(3千兆円超)の予算が投じられたものの、資金は途中で次々と着服され、現場に届くのは1~2割程度にすぎず、幹部による汚職も横行していると指摘。「これは自然災害ではなく、人災だ」と訴えている。

7月21日、中央紀律検査委員会は、三峡グループ広西支社長の呉啓仁氏が重大な規律・法律違反の疑いで調査を受けていると発表した。内部関係者は、広西・横州市の洪水被害の実態や三峡ダムの内部情報を外部へ流出させたことが、今回の調査につながったと説明している。
内部関係者によると、横州市で発生した洪水では、公式発表の「26人死亡・7人行方不明」を大きく上回る約1万7千人が死亡したという。警察が被災地への立ち入りを制限しているのは実態を隠すためで、放流を事前に知らせなかったのも、住民避難や支援にかかる費用を避けるためだったとしている。
そのうえで内部関係者は、「横州市で約1万7千人が死亡したのは始まりにすぎない。三峡ダムの決壊は時間の問題で、死者は爆発的に増え、被災者は少なくとも4億7千万人に及ぶ」と警告している。
羅翔氏によると、資料を提供した内部関係者とはその後連絡が取れなくなり、現在も安否は分かっていない。三峡ダムを巡っては、これまでも安全性を巡る議論が絶えなかった。
今回流出した資料の真偽は現時点で確認できないが、情報提供者が消息を絶ったことで、「何らかの理由で身柄を拘束され、自由を失ったのではないか」との見方や、「資料には一定の信憑性があるのではないか」と受け止める人は少なくない。


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