ノルウェー放送協会(NRK)は5月7日、ノルウェー警察保安局(PST)が、同国の宇宙関連情報を収集したとして、中国籍の女性を逮捕したと報じた。女性は8日、オスロ地方裁判所で審理を受けた。
PSTは、ノルウェーで登記された企業が中国共産党(中共)の情報機関と関係していた可能性があるとみている。
警察はこの事件に関連し、ノルウェー北部ヌールラン県のアン島と、中部インラン県のオッタの2か所を捜索した。
警察側のブロム弁護士は、同社が中共の情報機関の隠れみのとなり、衛星データを取得しようとしていた疑いがあると説明した。こうしたデータが外国に流出すれば、ノルウェーの安全保障を損なう恐れがあるという。
ブロム氏によると、PSTは衛星受信機を押収し、使用に向けた計画を停止させた。
オスロ地方裁判所はNRKに対し、勾留をめぐる判断は書面手続きで行われ、当事者の出廷は不要だと説明した。
NRKによると、この事件ではほかにも複数の人物が起訴されているが、逮捕には至っていない。
中共外務省の報道官は8日、疑惑を否定した。
アン島宇宙センター スパイ活動の標的か
ノルウェー・アン島宇宙センターは、同国北部ヌールラン県のアン島に位置するロケット発射場兼宇宙港である。1962年以降、同センターからは各種観測ロケットやサブオービタルロケットなど、1200機以上が打ち上げられている。
アン島宇宙センターのケティル・オルセン執行副社長はNRKに対し、「具体的にどこまで言うべきかは分からないが、私たちが狙われる可能性があることは認識している。できる限りの備えを行い、警戒を保ち、周囲の状況を注意深く見守ってきた。基本的には、それが最も重要な対応だ」と語った。
オルセン氏はさらに、「ここは国防上重要な地域であり、1960年代からミサイル発射場が設置されてある。周辺で普段とは違う動きが起きることには、すでに慣れている。一方で近年は、ノルウェー軍の増強や新たな宇宙港の建設に伴い、アン島への社会的な関心も高まっている」と述べた。
「私たちは、この地域の通常の動きを把握し、変化があればすぐに警報を出す」とも補足した。
専門家「現地での情報収集はリスクが高い」
ノルウェーの安全保障専門家、ガウテ・ビョルクルンド・ヴァンゲン氏は、今回の事件は外国情報機関の典型的な手口に合致するとの見方を示した。同氏は、オッタに拠点を設けたことについて、関連する活動を隠す狙いがあったとみている。
同氏は「注目すべきなのは、企業を設立することで、情報活動を合法的な事業に見せかけようとしていたかどうかだ」と語った。
一方、アン島については、標的となる理由は明確だという。
「アン島には、外国情報機関の関心を引く技術や関連施設が実際に存在する。主にインフラやロケットなど、外国情報機関が関心を寄せる分野に関わるものだ」と同氏は述べた。
ヴァンゲン氏は、外国政府がノルウェー国内に人員を送り込むことは珍しいと強調した。
ハッキングなどによる産業スパイ活動は長年続いている。一方で、今回のように人員を現地に送り込む手法は、実行側にとってより大きなリスクを伴うという。ただし、同氏は今回の動きが、特定分野のデータ収集を目的とした広範な活動の一部だとの見方を示した。
今回の作戦で、ノルウェー自体が主な標的だったとは限らない。
「これは複数の国にまたがる、より大規模な作戦の一部である可能性がある。最終的に、ノルウェーが具体的な標的ではない可能性もある。彼らはこの場所の戦略的位置に目を付け、情報を得る拠点として有利だと判断したのかもしれない」とヴァンゲン氏は述べた。
中共を主要な安全保障上の脅威と位置付け
PSTは2025年の国家脅威評価報告書で、中共を主要なスパイ脅威の一つとして名指ししている。
同報告書は、「われわれの地理的位置、国際的な場での影響力、そしてアメリカとの緊密な同盟関係により、われわれは中国共産党政権の標的となっている」と指摘した。
報告書はさらに、中共の主な手段は依然として経済的手段だとしている。具体的には、重要インフラや軍事施設、その周辺にある不動産の取得などが含まれる可能性があるという。
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