独バイエル ラウンドアップ訴訟で最大72.5億ドル和解案 日本では販売継続

2026/02/18
更新: 2026/02/18

ドイツの製薬企業バイエルは2月17日、除草剤「ラウンドアップ」の発がん性を巡る米国での集団訴訟について、最大72億5千万ドル(約1兆円超)を支払う和解案を提示した。ロイター通信が報道した。米国では巨額の賠償問題に発展している一方、日本では同製品の販売が継続されている。

バイエルは2018年、米農薬大手モンサントを約630億ドルで買収し、ラウンドアップ事業を取得した。ラウンドアップの有効成分「グリホサート」については、主に非ホジキンリンパ腫を引き起こしたとする訴訟が相次ぎ、同社は多数の原告と係争している。

原告側は、製品ラベルに発がん性の警告を表示しなかったことが違法であると主張している。これに対しバイエルは、長年の研究結果に基づき安全性は確認されていると反論してきた。

同社は2020年にも約109億ドルを支払う和解を実施したが、なお約6万5千人の原告との訴訟が残っているとされる。今回の追加和解案は、将来的な訴訟リスクを抑制し、経営上の不確実性を低減する狙いがある。

米国で訴訟が続く一方、日本ではグリホサートを含む製品の販売は継続されている。安全性評価を担う 内閣府食品安全委員会 は2016年、グリホサートについて発がん性や神経毒性、繁殖への影響などは認められなかったとする評価を公表した。

同委員会は、動物試験などのデータに基づき「一日摂取許容量(ADI)」を設定しており、現行の残留基準内であれば食品を通じた健康影響は生じないとしている。

国際的にも、欧州食品安全機関(EFSA)や 米国環境保護庁(EPA)、FAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)などが、ヒトに対する発がん性は認められない、または可能性は低いとの見解を示している。

米国では司法判断と規制当局の評価が必ずしも一致していない状況にある。

議論の発端となったのは、2015年に 国際がん研究機関(IARC)が、グリホサートを「ヒトに対しておそらく発がん性がある(グループ2A)」に分類したことである。

ただし、IARCの評価は物質そのものの有害性(ハザード)を示すものであり、実際の摂取量を前提とした健康リスク評価とは異なる。日本の厚生労働省や食品安全委員会は、信頼性の高い試験成績に基づきリスク評価を実施していると説明している。

一部の国で使用制限が行われているケースもあるが、その多くは公園管理など景観政策上の判断によるもので、安全性評価に基づく全面禁止とは性格が異なるとされる。

バイエルは、今回の和解案について製品の科学的欠陥を認めたものではなく、訴訟長期化に伴う経営リスクを回避するための措置であるとしている。

日本では農薬取締法に基づき、厚生労働省、農林水産省、環境省、内閣府が連携して登録・評価を行っており、現時点で「使用基準を守れば健康への悪影響はない」との判断が維持されている。

米国における巨額和解という司法上の決着と、各国規制当局による科学的安全評価との間には、依然として認識の隔たりが存在している。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます