中国共産党(中共)政権は1月24日、中央軍事委員会(CMC)の張又侠副主席と統合参謀部部長の劉振立が調査を受けていることを発表した。この動きに続き、中共軍の機関紙は異例とも言えるほど激しいトーンの社説を掲載した。
社説の言葉の厳しさと、特に張又侠が持っていた高い政治的地位を鑑み、分析家や軍内部関係者は、この事案を単なる腐敗摘発とは見ていない。むしろ、内部の抵抗が強まる中で軍の絶対的統制を確立しようとする習近平の試みが「重大な分岐点」を迎えたことを示していると捉えている。
軍内部に渦巻くパンデミックへの怒り
安全上の理由から匿名を条件に大紀元(エポックタイムズ)の取材に応じた中共軍内部関係者によると、習と張の対立は突発的なものではなく、長年の不満が蓄積した結果だという。その不満の多くは、中国の過酷なゼロコロナ政策の時代に端を発している。
現役・退役を問わず上級将校たちは、パンデミック禍における習の指導力に深い不満を抱いていた。軍が全国に動員される一方で、習自身は最前線に姿を現すことを避けたからだ。将校たちは私的に、習を「極端なリスク回避主義」と批判し、自身の異例の3期目続投を狙いながら個人の安全を最優先していると非難していた。
パンデミック中に習が軍病院を訪問したとして大々的に報じられた唯一のケースも、実際の病棟ではなく広いホールでの出来事だった。彼は遠隔地の医療従事者とビデオリンクで会話しただけであり、このことが軍内部で広範な冷笑を招いたと内部関係者は語る。
「不満を持っていたのは現役将校だけではない。退役軍人や軍の家族までもが、『これでは国が滅茶苦茶だ』と密かに嘆いていた」と内部関係者は明かした。
台湾問題の重要性
パンデミックが指導部への対立を増大させたのは確かだが、権力闘争の核心にあるのは台湾問題だと内部関係者は指摘する。
この関係者によれば、張と中共軍司令官の過半数は、台湾への軍事侵攻に反対していた。実際の戦争になれば、壊滅的な人的被害と装備の損失を招くと警告していたからだ。
「陸・海・空など各軍種を築き上げるためのあらゆる努力が、たった一つの作戦で灰燼に帰す可能性がある」。関係者は多くの将校の意見をそう要約した。軍事演習は平時に強さを示すことができるが、実戦のリスクは全く別次元である。
習が武力による「統一」を推し進めるのは、軍事戦略というよりも政治的生存のためであると広く見られている。習は、退任すれば自身の家族が汚職調査や政治的報復にさらされることを恐れており、継続統治を正当化するために台湾統一という「歴史的偉業」を成し遂げることに固執しているという。

政治的武器としての「反腐敗」
内部関係者は、中共軍内部で階級の売買を含めた汚職が蔓延していることは認めている。
しかし、現在の反腐敗運動は「政敵を狙い撃ちするための政治ツール」に変貌していると主張する。習の不興を買った司令官が標的にされる一方で、最終的な責任を負うべき最高指導部の構造的な問題は無視されている。
また、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた「張又侠が米側に核関連の機密情報を漏洩した」という疑惑について、この内部関係者は「軍が完全に習近平の支配下にあるという幻想を植え付けるための純粋な捏造だ」として否定した。
(※大紀元は、これら双方の主張を独立して検証することはできていない。)
沈黙を守る軍部
他の中国ウォッチャーは、張の失脚後に起きた「起きていないこと」こそが最も注目に値すると指摘する。
元北京の弁護士でカナダを拠点とする「民主中国陣線」の頼建平主席は1月29日、中共軍や地方部隊の反応が異例なほど静かであると語った。通常、高官が粛清された後に見られる忠誠の誓いや批判の波が全く起きていないという。
頼氏は、張又侠事件による政治的衝撃は毛沢東時代の粛清に匹敵する規模だと述べる。張又侠は軍内で実質ナンバー2の地位にあり、長年、習近平の信頼できる同盟者と見なされてきたからだ。
「張又侠ほどの重要人物が失脚した以上、これが単なる汚職事件であるはずがない。これは特権階級による激しい権力争い、あるいは体制トップの勢力図を根本から塗り替える動きの一環と見るべきだ」と頼氏は分析する。
公然と支持を表明する動きがない事実は、体制内部に深い動揺が広がっている証拠だ。調査の正当性を疑う者もいれば、情勢がひっくり返ることを恐れる者もいる。大半の者は、激化する権力闘争の火の粉を浴びぬよう、ただ息を潜めているに過ぎない。
頼氏は、この集団的な沈黙は習にとって不都合な現実を突きつけていると主張する。すなわち、彼の行動が党内部から圧倒的かつ無条件の忠誠を引き出せていないということだ。それどころか、このエピソードは権力中枢における結束力の低下と、政治的な信頼関係が根底から崩れ始めていることを露呈させている。
2027年の台湾タイムライン
ワシントンD.C.のシンクタンク、ジェームズタウン財団による1月26日の分析も、台湾問題が権力闘争の核心であるという見方を支持している。報告書によれば、習は2027年までに台湾侵攻の能力を備えるよう中共軍に要求したが、張と劉はこれを「非現実的」と見なしていた。彼らの内部計画では、より長いタイムライン(おそらく2035年まで)が想定されていた。
報告書によると、張による統合運用訓練のアプローチは、習が求める加速されたスケジュールを満たせなかった。2027年に向けた最終訓練サイクルが今月始まったことで、意見の相違は計画上の争いからあからさまな不服従へとエスカレートし、習の権威に直接挑む形となった。
張と劉の解任は、習が専門的な軍事的判断よりも政治的忠誠を優先していることを反映している。これは内部の不安定さを高める可能性があるが、2027年の期限を達成しようとする習の決意を揺るがすものではない。
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