日中関係が緊張するなか、中国の複数メディアが「日本の空港は帰国する中国人で溢れ返っている」と一斉に報じた。まるで日本から大脱走が始まったかのような調子だ。
しかし、日本で実際に暮らす人々の声は、報道とまるで違う光景を伝えている。本当に空港で「パニック」は起きているのか。
中国国内の各紙は、11月24日に撮影されたとする空港の映像を引用し「人の波は旧正月の帰省ラッシュのようだ」「日本が危険で人々が一斉に帰国している」と強調した。
小紅書などの中国のSNSでは、日本に暮らす人々から反論が相次いだ。「そんな現象はない」「約100万人の在日華人は普通に生活している」といった声に加え「空港は観光客でいつも混むだけ」「減便で乗客が集中しているだけだ」「日本行きも同じように混んでいるのに、帰国便だけ大げさに取り上げて不安をあおっている」との指摘が寄せられた。
さらに、観光客が多い空港はもともと混雑しやすく、特に最近は航空各社が日本便を減便しているため、乗客が集中するのは自然な現象である。「行きの便も混んでいる。帰りだけ取り上げて恐怖をあおるのは不自然だ」との声も寄せられた。
一方、中国国内で強調された「日本路線は無料で払い戻し可能」という宣伝も、実際とは大きく異なっていた。国航や南航などが12月末までの無料返金をうたったものの、旅行者の多くは「1万4千元(約30万円)払ったのに、200元(約4千円)しか戻らない」など、実質的に高額の手数料を差し引かれたと訴えている。
「無料と聞いて申請したのに30%、後には60%差し引くと言われた」といった体験談もSNSに相次ぎ、苦情が殺到した。
旅行会社の一部は「日本のホテルが返金を拒否した」と説明したが、利用者がホテルへ直接メールしたところ全額返金に応じた例もある。「情報の不透明さ」を利用したトラブルが広がっている。
中国国内では、政府が日本を危険視する空気を意図的に作り出しているとの指摘が多い。しかし日本で生活する人々は、現場の空気を冷静に受け止めている。「誰も『戦争になる』なんて思っていない」という率直な声は、多くの投稿者に共通していた。
中国のプロパガンダと現実の乖離が、再び浮き彫りになったと言える。
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