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米連邦地裁 トランプ政権のワシントンD.C.国家警備隊派遣を違憲判断 撤収命令も執行を3週間停止

2025/11/22
更新: 2025/11/22

2025年11月20日、連邦地裁のジア・コブ判事は、トランプ政権が首都ワシントンD.C.に派遣した国家警備隊の撤収を命じた。

トランプ大統領は、ワシントンD.C.で犯罪と暴力が横行しているとして、国家警備隊の派遣が必要だと主張していた。また、連邦の移民法執行を支援するためでもあると説明していた。

2025年8月11日、トランプ大統領は大統領覚書に署名し、そこでは「ワシントンD.C.の地方政府は市内の公的秩序と安全をコントロールできなくなっている」と述べていた。

覚書には「ワシントンD.C.の暴力犯罪率が世界で最も危険な場所よりも高いのは国家の恥である」と書かれていた。

アメリカでは通常、連邦政府が軍を国内の法執行に使うことはポッセ・コミタタス法(Posse Comitatus Act)で制限されている。ただし、緊急時であれば大統領は州の国家警備隊を連邦化して指揮できる場合がある。

しかし、ワシントンD.C.の国家警備隊は特別だ。ワシントンD.C.は州ではなく連邦直轄地なので、大統領が直接の司令官(commander-in-chief)である。

D.C.政府側の弁護士ミッチェル・ライヒ氏は、10月24日の公聴会で「トランプ政権の派遣は違法だ。連邦政府がワシントンD.C.で法執行活動を行うことを認める法律は存在しない」と主張した。

ライヒ氏は、議会がワシントンD.C.に対して排他的な管轄権を持ち、D.C.国家警備隊の使用について非常に詳細な規則を定めていると指摘した。その規則では、大統領は暴動などの場合にしか警備隊を使えず、しかも地元当局からの要請が必要だとされている。要請はなかったとライヒ氏は言う。

さらに彼は、連邦政府の立場は「大統領にワシントンD.C.で国家警備隊を並行警察部隊としてほぼ無制限に使う権限がある」というものだと批判した。

これに対し、司法省側のエリック・ハミルトン副司法長官補は同じ公聴会で「国家警備隊員は法執行活動を行っていない。保護任務を担っているだけだ」と反論した。

一時的に人を拘束する場合も「脅威を排除するための保護行為であって、法を執行するためではない」と説明した。

この判決は、ワシントンD.C.政府が9月4日に起こした連邦訴訟に対するもので、10月24日の口頭弁論を経て出された。

コブ判事は、トランプ大統領がD.C.国家警備隊を掌握した行為はアメリカ憲法に違反し、地元当局の法執行権限を不法に侵害していると結論づけた。

判事は、大統領が国家警備隊を動員できるのは「法律で定められた特定の権限に基づく場合のみ」で、好き勝手に理由を付けてはならないと指摘した。

連邦政府が主張する大統領の憲法第2条(Article II)の広範な権限解釈を退け、「そんな解釈を認めれば、議会がワシントンD.C.とその国家警備隊を統治する役割が消えてしまう」と述べた。

また「大統領には犯罪抑止のために国家警備隊を自由に使うような曖昧な権限はない。歴史的慣行もそれを裏付けている」と明言した。

ただし、判事は連邦政府が上訴できるように、新命令の執行を一時停止した。

ワシントンD.C.のブライアン・シュワルブ司法長官は判決を歓迎した。「軍を国内法執行に使うことを常態化すれば危険な前例になる。大統領が州や自治体の独立を無視して、どこにでもいつでも軍を派遣できるようになる」とコメントした。

一方、ホワイトハウスのアビゲイル・ジャクソン報道官は判決に異議を唱えた。「トランプ大統領は完全に合法的な権限内で、連邦資産の保護と法執行の支援のためにワシントンD.C.に国家警備隊を派遣している。この訴訟はワシントンD.C.住民を犠牲にして、大統領の成功している犯罪対策を妨害しようとするものに過ぎない」と述べた。

マシュー・ヴァダムは、受賞歴のある調査ジャーナリストです。