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トランプ政権 アラスカの石油掘削制限を撤廃

2025/11/14
更新: 2025/11/14

米国内務省は11月13日、アラスカ国家石油備蓄区(NPRA)に対してバイデン政権が2024年に課した開発制限を撤廃し、北極圏の広大な地域で石油・天然ガスの掘削を再開する最終規則を発表した。

内務省は声明で、この措置は約6万平方キロメートル(約2300万エーカー)に及ぶ同備蓄区のエネルギー潜在力を引き出す重要な一歩であり、国内の石油・天然ガス開発に対する規制緩和を推進するトランプ大統領の政策目標に沿うものであると説明した。また、外国産石油への依存を減らす狙いもあるとしている。

内務長官ダグ・バーガム氏は声明で次のように述べた。「2024年に制定された規則を撤廃することで、われわれはトランプ大統領の方針に従い、アラスカのエネルギー潜在力を解き放ち、ノーススロープ地域のコミュニティに新たな雇用を創出するとともに、米国のエネルギー安全保障を強化している。本決定は常識に基づく管理を回復させ、責任ある開発を推進しながら、アラスカと全米の双方に利益をもたらすものである」

アラスカ国家石油備蓄区は、1923年にウォレン・ハーディング大統領が海軍の緊急燃料供給地として指定したもので、約87億バレルの採掘可能な原油が存在すると推定されている。これを商業開発に開放すべきかどうかは、長年にわたり政治的論争の焦点となってきた。

バイデン政権は2024年、環境保護の観点からNPRA内の約4万3千平方キロメートル(約1060万エーカー)で石油・天然ガスのリースを禁止し、さらに約8100平方キロメートル(約200万エーカー)超の土地に追加制限を設けていた。この地域は渡り鳥やカリブー(北米トナカイ)の主要な生息地であり、アラスカ先住民が自給的狩猟のために依存している。また、絶滅危惧種のホッキョクグマもこの地域に生息している。

今回の制限撤廃をめぐっては、環境団体から懸念の声が上がっている。自然保護団体「ウィルダネス・ソサエティ(The Wilderness Society)」のアラスカ統括責任者マット・ジャクソン氏は、「撤回された規則は科学的知見と公衆の意見に基づいて制定されたものだ」と述べ、政府の決定を批判した。

「政府はこの保護策を取り壊し、手つかずの自然景観を大手石油企業の利益のために開放している。これは『土地とともに生きる自由』を持つアラスカの人々、そして将来世代の権利を侵害するものである」と訴えた。

地域コミュニティと先住民への影響

一方で、現地の一部コミュニティは規制緩和を歓迎している。

アラスカ先住民組織「ボイス・オブ・ジ・アークティック・イヌピアット(Voice of the Arctic Inupiat)」は、制限撤廃を支持する声明を発表し、掘削に関連するインフラ整備が地方税収の増加につながり、医療や教育など公共サービスの充実に寄与するとしている。

同団体はまた、2024年の規則が現地住民との十分な協議を経ずに制定されたとして、当時政府を提訴していた。

NPRA内にあるアトサク(Atqasuk)先住民村のメアリー・ボルドー村長は、「今回の内務省の決定はノーススロープ各コミュニティの強化につながり、アトサクの自治を前進させるものである」と述べた。

「アトサクは1万年以上にわたりこの地を守り続けてきた。私たちの土地、そして地域の声が将来の政策形成に影響力を持つことは、私たちの経済とイヌピアット文化の双方にとって極めて重要である」と語った。

内務省によれば、2024年の規則撤廃は規制負担の軽減につながるという。今後、土地管理局は2025年に制定される新たな規則に基づいて同備蓄区を運営する予定であり、これは1977年に策定された当初の管理枠組みに準じた内容となる見通しである。

今回の最終規則は、2025年11月17日付の「連邦官報(Federal Register)」に掲載される予定である。

陳霆