トランプ米大統領は、米主要メディアが報じたベネズエラへの軍事攻撃計画を全面否定。「フェイクニュース」と一蹴し、米軍の現状と今後の方針に言及した。
10月31日、米主要メディア2社が匿名筋の話として、「トランプ政権がベネズエラに対して軍事行動を決定した」と報じた。これに対し、トランプ大統領と国務長官はいずれも報道を否定し、「フェイクニュース」と断じた。
米紙『マイアミ・ヘラルド』は複数の情報筋の話として、政府がベネズエラ国内の軍事施設を攻撃する計画を進めており、行動は数日、あるいは数時間以内にも開始される可能性があると報じた。米国は同時に、同国の麻薬密売組織に対する次の段階の作戦を準備しているという。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』によれば、米政府関係者は、攻撃対象は麻薬密輸に関係する軍施設を含む複数の地点だと語った。トランプ大統領が命令すれば、それはベネズエラの指導者ニコラス・マドゥロ氏に対し「退陣すべきだ」という明確なメッセージになる、としている。
10月31日、大統領専用機「エアフォース・ワン」機内で記者が報道の真偽を尋ねたところ、トランプ大統領は一言「ノー」と答えた。
ただし、将来的な攻撃の可能性を完全に排除したのか、それともまだ最終決定を下していないという意味なのかは不明だ。
最近の数週間、トランプ大統領はベネズエラ国内の麻薬関連拠点に対する攻撃実施を公に示唆していた。「次の段階は地上攻撃だ」と大統領は先週、記者団に語っている。
国務長官マルコ・ルビオ氏も10月31日夜、自身のSNS「X」で『マイアミ・ヘラルド』の記事に直接反応し、「あなた方が信じた“情報筋”は嘘をついた。報道はフェイクニュースだ」と書き込んだ。
共和党の重鎮リンジー・グラム上院議員は先週、トランプ大統領が「アジア歴訪後に議会へベネズエラとコロンビアに関する軍事行動を報告する」と語ったと明かしている。
ベネズエラ政権と麻薬密売組織の関係
ベネズエラのマドゥロ政権幹部が主導する麻薬密売組織「太陽のカルテル」(Cartel del Sol)は、軍人出身者によって構成されており、米当局によると、年間約500トンのコカインを欧米へ密輸しているという。
米疾病対策センター(CDC)の統計によると、2024年だけでもコカインが原因で死亡した米国人は2万2千人に上った。
米軍は8月、ベネズエラ北方のカリブ海南部に大規模な兵力を集結させ、駆逐艦3隻や約4500人の揚陸部隊からなる合同機動部隊を編成した。9月にはさらに、プエルトリコ・セイバ空軍基地にF-35B戦闘機10機を増派し、無人機MQ-9「リーパー」を展開。麻薬輸送ルートの監視を強化している。
10月24日には、国防長官から「戦争長官」に改称されたピート・ヘグセス氏の命令で、空母「ジェラルド・R・フォード」打撃群がカリブ海に進入。巡洋艦「ノルマンディー」や駆逐艦4隻を率いて展開中だ。
米軍関係筋によると、この空母打撃群には約4千人の兵力と90機の作戦機が含まれ、「太陽のカルテル」など主要麻薬組織幹部の殲滅を目的とした「最終段階」作戦の中核を担う。
米国による今後の軍事行動の可能性
現時点で行動は主に海上作戦に集中しており、これまでに麻薬密輸船を多数撃沈し、61人の密輸組織メンバーを殺害したという。今後は陸上目標の攻撃へと重点を移す見通しだ。
一期目のトランプ政権でベネズエラ特使を務めたエリオット・エイブラムス氏は「トランプ大統領はイランのソレイマニ司令官暗殺のように“標的限定型”の作戦を好む。一方で、長期的な紛争への関与は望んでいない」と語っている。
ホワイトハウスのアナ・ケリー報道官は『ウォール・ストリート・ジャーナル』への声明で「トランプ大統領は、麻薬と犯罪者を米国に送り込むことをやめろという明確なメッセージをマドゥロに伝えている。必要であれば米国の力を用いる覚悟がある」と述べた。
フロリダ州選出のリック・スコット上院議員(共和党)はCBS番組『60ミニッツ』で、「もし私がマドゥロなら、今すぐロシアか中国へ逃げるだろう」とコメントした。
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