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中国 ホテルで「強制放送」始まる

テレビをつけた瞬間「洗脳開始」 中共の官営放送が流れる日常

2025/10/09
更新: 2025/10/09

中国共産党政権が、国民への「思想統制」をいっそう強めている。

国家広播電視総局(放送管理当局)と公安部はこのほど、全国のホテルに対し「テレビを起動すると自動的に官営放送が流れる」設定を義務づけるよう通達を出した。表向きの理由は「宿泊客の利便性向上」だが、実際には低迷する官営メディアの視聴率を底上げし、政権の宣伝内容を国民に半強制的に刷り込む狙いがあるとみられている。

新たな指示によると、テレビをつけると自動的に中国中央電視台(CCTV)のニュースチャンネルが全画面で再生され、他の番組を見るにはリモコン操作が必要になる。当局は「広告なしで便利」と強調するが、ネット上では「まるでジョージ・オーウェルの『1984年』そのもの」「広告の方がまだマシ」と皮肉る声が相次いでいる。

この仕組みはすでに上海や広東省などの一部都市で2023年から試験的に導入され、家庭用テレビやスマート端末にも拡大しつつある。CCTVのニュースや政治番組は長年、政府の広報・検閲の中心的役割を担ってきたが、若年層を中心に視聴離れが進み、当局の危機感が高まっていた。

政権はこれまでにも、動画配信サイトやSNSでの「不適切言論」への検閲を強化し、民間ニュースアプリの多くを閉鎖・統合してきた。今回の「強制視聴」措置は、デジタル空間に続いて現実空間でも「情報の入口」を掌握する試みとみられる。

かつて英国の作家ジョージ・オーウェルが描いた「ビッグ・ブラザーに監視される社会」は、いまや現実の中国で具現化しつつある。テレビの電源を入れた瞬間に流れるのは、娯楽でもニュースでもなく、党が描く「唯一の現実」なのだ。

延安からAIまで続く「精神改造」

中共による思想改造の起点は1942年の「延安整風運動」にさかのぼる。毛沢東は党内幹部に自己批判を強要し、「正しい思想」を植えつけた。これが後の思想改造運動の原型となり、1950年代には全国の知識人が「再教育」に動員された。

文化大革命ではその手法が社会全体に拡大し、毛沢東語録の暗唱や集団批判が日常化。毛沢東思想・共産党思想(闘争の哲学など)を国民に植え付けるために、「破四旧(旧思想や旧文化、旧風俗、旧習慣を打破)」運動などにより共産主義とは対極にある中国の伝統文化や美徳が徹底的に弾圧された。

改革開放後も思想統制は途絶えていない。大学や官庁には「思想政治工作部」が設けられ、教職員や公務員に定期的な政治学習が義務づけられている。忠誠度は昇進や評価にも反映され、思想が「実績」と化している。

近年ではデジタル技術を活用した「現代版思想改造」が進む。習近平思想を学ぶアプリ「学習強国」では利用時間や学習成績が自動集計され、上司や学校に報告される仕組みだ。インターネットやSNSではAIによる言論監視が徹底され、法輪功に対する残酷な迫害や天安門事件、新疆問題といった政権に不都合な言論は即座に削除される。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!