会計検査院は、新型コロナウイルスの感染拡大の防止、ウクライナ情勢の緊迫化を受けた人道支援、国際機関等への拠出金の管理状況に関する検査報告書を公表した。
この報告により、平成30年度から令和5年度までの6年間で総額5兆237億円に上る拠出金について、資金管理の不備や情報公開の不徹底といった複数の問題点が明らかになった。
杜撰(ずさん)な拠出後の資金管理
検査対象となった任意拠出金426件のうち44件で、所管省庁は国際機関から定期的な会計報告を受領しておらず、さらに、繰越額や余剰金の有無を確認していなかった案件も多数見つかった。
特に、123件の追加拠出に際しては、所管15府省庁等は、余剰資金が生じているか未把握であり、追加拠出に当たり、拠出額が必要な資金の規模を超えていない ことなどについての確認が十分でなかったおそれがあるとされ、国際機関側で資金が滞留するリスクがある状況が確認された。
新型コロナウイルスの影響で事業に遅れが生じた場合でも、資金需要の変化を的確に捉え、滞留を防ぐための働きかけが不十分であった事例も報告されている。
残余金の発生状況が未把握
事業終了後の残余金の処理に関する問題も明らかになった。事業終了予定時期が到来した171件のうち、3府省庁の3件では、残余金の発生状況自体を把握していなかった。
残余金の発生が確認された79件の中には、返納手続きに著しく時間がかかっているものがあり、返納が完了するまで、あるいは手続き中の期間が事業終了時から3年を超えている案件が複数存在した。
また、長期間にわたり事業が休止している案件についても、資金状況の把握がなされず、検査によって余剰金の滞留が判明したケースもあった。
情報公開の不徹底
最後に、国民への説明責任を果たすべき情報公開の不徹底が指摘されている。9府省庁による拠出金計58件、総額1636億円分が、国民に公表される「拠出金等報告書」に記載漏れとなっていた。
また報告書では2020年、拠出金が、公表されないまま、自国用ワクチン購入から途上国支援へと目的が変更された事例も指摘されている。
会計検査院は各府省庁に対し、拠出した資金の状況を適時適切に把握すること、残余金の速やかな処理に努めること、そして拠出金に関する情報を確実に公開するよう改善を求めている。
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