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中国人女性 米国への麻薬密輸共謀罪で懲役15年の判決

2025/08/24
更新: 2025/08/25

今年2月に中国からアメリカへの薬物輸入に関与した共謀罪で有罪判決を受けていた中国籍のチェン・イイは、8月22日、ニューヨーク南部地区連邦地裁のポール・ガルデフ判事から懲役15年、その後3年間の保護観察付き刑を言い渡された。

数時間に及ぶ審理で、弁護側は模範的な行動や中国にいる癌を患う母親を理由に30か月を求めたが、検察側は反省の欠如や裁判中の偽証を理由に18年を求刑。量刑ガイドラインでは最長27年が可能だった。

検察側は、チェンが「フェンタニル前駆物質の広告を知らない」と陪審員を誤導しようとしたと主張。広告の写真が彼女のノートPCで見つかっており、購入者がアメリカ法を破る意図を持っていないと信じていたと述べたこと、アメリカフェンタニル危機に関するボイス・オブ・アメリカの記事を「理解できなかった」としたことを指摘した。

弁護側は、言語や文化の違いにより微妙な意味を理解できなかったと主張。

しかし判事は、チェンが質問の意味を十分理解しており、販売した化学物質が違法フェンタニル製造に使われることを「よく認識していた」と判断。虚偽の供述はあったが偽証には当たらないとした。

法廷でガルデフ判事は、チェンが中国からアメリカに3トンのフェンタニルを輸送する手配をしていたと述べ、一般的な抑止のために15年の刑が必要だと語った。

判事が2度発言の機会を与えたが、チェンはともに拒否。弁護側は控訴する意向を示した。

チェンは湖北省にある中国企業「アマーベル・バイオテック」のマーケティングマネージャーで、同社最高経営責任者(CEO)ワン・チンジョウとともに1月に起訴された。

両者は、違法フェンタニル共謀でアメリカが訴追した初の中国人の一部である。ワンの判決は9月8日。1月29日、陪審は4件の罪で有罪評決を下したが、フェンタニル共謀そのものへの関与は無罪とした。

有罪となったのは、化学物質1-boc-4-APの輸入共謀(米国内で違法フェンタニルの製造・流通に使われると被告が認識していた合理的理由があるとされた)、メチルアミンの輸入、資金洗浄である。

「100%ステルス配送」

中国の化学会社アマーベルは、フェンタニル製造に使われる化学物質を堂々と宣伝し、「100%ステルス配送」と称して、ドッグフードやナッツ、潤滑油と偽装した梱包で輸送・押収を回避できると売り込んでいた。アメリカへは毎月数トン、メキシコ・クリアカン(シナロア・カルテルの拠点)にも出荷していた。

2022年末、米麻薬取締局(DEA)の覆面捜査官がアマーベルに接触して注文を開始。ワンとチェンは200キロ以上の化学物質を中国からカリフォルニアへ発送した。これは50キロのフェンタニル、すなわち2500万回分の致死量を製造可能な量だった。

捜査中、捜査官が「出荷品でアメリカ人が死亡した、より良いレシピが必要」と告げると、ワンはチェンに「メキシコに顧客が多いので品質を保証できる」と述べ、配合についてはメキシコの顧客とつながるよう勧めた。

また、2023年6月に米司法省がシナロア・カルテル幹部と中国の前駆体供給業者を起訴した際、チェンは「中国の競合がアメリカに暴かれた、さらに警察の目を逃れる措置が必要だ」と話していた。

同年6月、ワンとチェンはフィジーでDEA関係者と会うため渡航し、その場で拘束された。

背景

違法フェンタニルによるアメリカ人の死は2010年頃から増加し、2020年頃に急増。19〜45歳の死因トップとなった。2023~24年にかけては36%減少したとされる。

米トランプ政権は違法フェンタニル流入阻止を国家的優先課題と位置づけ、中国やメキシコ、カナダに危機対応を迫ってきた。

ニューヨークを拠点とするエポックタイムズ記者。