終戦から80年。東京・九段下の靖国神社には、例年と同じ思いを胸に来た議員もいれば、例年とはまた異なる思いを抱えた議員たちも姿を見せた。境内に差し込む夏の光、参拝の列に並ぶ背広姿、手を合わせる一瞬の沈黙。その背後には、戦没者への追悼と歴史認識、外交上の波紋が交錯する。国会議員それぞれの胸中には、党派や立場を超えた戦没者への尊崇と哀悼の念があった。
靖国神社参拝を巡っては、例年、中国や韓国などの近隣諸国から、靖国神社にA級戦犯が合祀されていること、そして日本の近代史における軍国主義との結び付きを背景に強い批判を受けてきた。
中国や韓国は、戦時中の被害や歴史認識問題から、日本の政府要人による参拝を「過去の侵略を正当化する行為」と受け止め、毎年、終戦の日のたびに外交的な摩擦が生じている。他のアジア諸国では同様の強い反発はあまり見られない。
自民党・保守団結の会の高鳥修一会長は会員12名とともに参拝した。高鳥氏は参拝への思いを記者に問われると「毎年参拝をさせて頂いておりますが、陸に海に空に散った先人たちに向き合って慰霊の誠を捧げるために参拝をいたしました」と述べた。首相の参拝が実現していない状況について記者から問われると「それは大変残念なことだと思います。戦没者は国との約束で靖國で会おうということを誓って戦死されたのですから、ぜひ環境整備を一日も早くしていただいて実現が出来ればいいなと思います」と語った。
A級戦犯が祀られている場所にこの日に参拝することについて、様々な海外メディアからの批判がある点についてどう思うかと記者から問われると「それはそれぞれの考えです。そういう声があるからといって、我々が先祖に向き合わないということはあり得ないと思います」と述べた。
総理もこの日に参拝すべきだと思うかと問われると、「この日に限らず私は年に何回も参拝しています」と述べ、参拝は至極当然のことであることを強調した。
自民党の稲田朋美衆議院議員は記者団に対し「歴史認識についてはいろいろな考え方がありますけれども、戦後レジームからの脱却の中核は東京裁判史観の克服ですので、私はそういう意味から客観的にそれは何かということをこれからも追及していきたいと思っています」と述べた。また「一国の総理として石破首相には参拝してもらいたい」と語った。
参政党の神谷宗幣代表は大勢の報道陣に囲まれた。4月にも靖国神社に参拝していたことと、今回の参拝の意味合いについて記者から問われた神谷氏は、「(1952年)4月28日は本来日本が独立をした日です。まだそれが十分に果たせていないということに対して日本の主権を更に自立させるために頑張りたいという思いで参拝してきました。本日は戦後80年の節目なので参拝しましたが、毎年8月15日に参拝するということではありません。しかし4月28日には毎年参拝を続けたいと思っています」と述べた。
ますます緊張が高まる安全保障環境の中、国の形や歴史認識を巡る議論は尽きない。しかしいつの日も、大切な家族を失いたくない、戦争を繰り返したくないという国民の願いは変わらない。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。