トランプ米大統領は8月7日、経済諮問委員会のスティーブン・ミラン委員長を連邦準備制度理事会(FRB)理事に任命すると発表した。この任命は、今月初めにアドリアナ・クグラー理事が辞任したことに伴うものだ。
ミラン氏は2026年1月31日まで理事を務め、恒久的な後任が選ばれるまで職務を担う。「ミラン氏はハーバード大学で経済学博士号を取得し、私の1期目で優れた活躍をした。2期目の最初から支えてくれ、彼の経済学の専門知識は比類ない。素晴らしい仕事をしてくれるだろう。おめでとう、スティーブン!」と祝福した。
ミラン氏はトランプ1期目政権に財務省上級顧問を務め、FRBの現指導部を公然と批判してきた。トランプ氏と同様、インフレ率がFRBの目標2%に近づいているにもかかわらず、金利が高すぎると主張。特に、2024年9月の大幅な利下げのタイミングと動機に疑問を呈した。
「FOMC(連邦公開市場委員会)の決定は、1)私の生涯で最悪の政策伝達、2)2021年以来最大の政策ミス」とミラン氏は当時述べ、「政治的動機が大きく関与している」と記した。利下げは当時の民主党候補カマラ・ハリス氏を利する意図があったと一部で指摘された。
トランプ氏は長年、パウエルFRB議長が「政治的な動きをしている」と非難し、経済成長や政府の利払い負担軽減のため利下げを求めてきた。一方、パウエル氏はトランプ2期目政権の関税政策のインフレ影響を評価する必要があると強調。8月7日のブルームバーグのインタビューで、ミラン氏は2026年5月に任期終了のパウエル議長の後任について問われ、クリストファー・ウォラー理事を高く評価。「ウォラー氏は独立した見解を持ち、関税によるインフレ脅威は過大評価だと正しく判断している」と述べた。
ミラン氏はトランプ氏の関税政策へのインフレ懸念が誇張されていると主張。2018~19年の関税や最近のデータでは「マクロ経済的に有意なインフレの証拠はない」とし、規制緩和や時間外労働の非課税化などの政策が「極めてデフレ的」と説明。
経済学者は、トランプ関税が世界貿易を変え、記録的な税収をもたらすと認めるが、消費者価格への長期的な影響は議論の的だ。ベッセント財務長官は、10%の新たな関税で消費者価格が一時的に約2%上昇すると推定。ただし、1期目政権の中国製品への20%関税では、価格上昇は1%未満だったと指摘。広範な報復関税は、以前の対象限定の関税より影響が大きい可能性がある。6月の消費者物価指数では、車両価格は下落、電化製品は横ばい、衣料や家電は上昇した。
ミラン氏の任命は、2023年にバイデン政権下でFRB理事に就任したクグラー氏の早期辞任に伴うもの。クグラー氏は8月1日の辞表で、「FRB理事として奉職できたことは生涯の名誉」とし、物価安定と労働市場の強さを支えたと述べたが、辞任理由は明かさなかった。クグラー氏はFOMCの常任投票メンバーだった。ミラン氏は9月にFOMCに加わり、市場では25ベーシスポイントの利下げが予想されている。
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