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米最高裁 トランプ政権の職員削減計画を一時容認 地裁の差し止め命令を解除

2025/07/09
更新: 2025/07/09

アメリカの最高裁は7月8日、連邦政府職員の大規模解雇を差し止めていた下級裁判所の命令を解除。これにより、一部省庁では数万人単位の職員削減が現実味を帯びてきた。労働組合側は「数十万人規模の職員」が職を失うとして強く反発している。

本件は、連邦職員の労働組合である「アメリカ連邦政府職員連盟(AFGE)」が、トランプ政権による政府再編命令は違法だとして提訴した裁判である。

連邦地裁は5月22日、訴訟が続く間、大規模な人員削減(リダクション・イン・フォース)の実施を一時停止するよう命じていたが、今回の最高裁判断によりこの命令が解除された。

問題となっているのは、今年2月11日に発令された「大統領令14210号」と、行政管理予算局(OMB)が発表した関連の覚書。これらは、トランプ政権下の政府効率化省(DOGE)が進める「労働力最適化構想」に基づくもので、各省庁に対し人員削減と新規採用の制限を命じている。

最高裁は今回、裁判官の署名がない形式で命令を出し、「政府側の主張(大統領令と覚書が合法であるという点)が認められる可能性が高い。また、差し止め命令を継続すべき他の要件も満たされていない」として、差し止めを解除した。

ただし最高裁は、「この大統領令や覚書に基づいて策定された具体的な再編計画や人員削減案の合法性については、現時点では判断しない」とも述べ、最終的な結論は下級審で判断されるべきだと強調した。

一方、ケタンジ・ブラウン・ジャクソン判事は反対意見を表明し、今回の最高裁判断を「非常に残念で、傲慢かつ不合理な判断だ」と厳しく批判。「大統領が連邦政府の構造そのものを根本的に作り変えようとしているという下級審の判断に、誤りがあるとは思えない」と述べた。

また、ソニア・ソトマヨル判事は、ジャクソン判事の懸念に一部共感を示しつつも、大統領令は「法律に沿った形で再編を計画するよう各省庁に求めている」ため、現段階では裁判所が合法性を判断すべき状況ではないとし、差し止め解除に賛成した。

連邦政府側を代表して申し立てを行ったジョン・ソーアー訟務長官は、「地裁の全国的な差し止め命令により、内閣11省庁を含む19の政府機関が、大統領令に基づく人員削減計画の準備を行うことすらできなくなっている」と指摘。「大統領が、連邦政府の人事に関する基本的な権限を行使するには、議会の明確な法律が必要だとする下級審の考え方は根拠がなく、憲法上の原則にも反している」と強く反論した。

一方で、AFGEは「トランプ政権による連邦政府の急速な再編には、下級審で十分な審査時間が必要だ」と訴えた。計画には、数多くの連邦機関・事業の廃止が含まれ、多くのプログラムの合法性も検討対象となっているという。

労組側の主張によれば、退役軍人省では約8万人の職が削減され、退役軍人の医療や給付サービスに深刻な影響が出るとされている。エネルギー省や一般調達庁(GSA)は、それぞれ職員の半数を削減する見込みで、保健福祉省(HHS)も1万人以上の削減を計画している。

さらに、財務省は内国歳入庁(IRS)の職員を約40%削減、小規模事業庁(SBA)は43%削減する見通しだという。

AFGEは、「仮に最終的に裁判所が大統領に越権行為があったと判断したとしても、すでに廃止された機関や削減された機能、サービスを元に戻す手立てはない」として、最高裁の今回の判断に強く懸念を示している。

 

マシュー・ヴァダムは、受賞歴のある調査ジャーナリストです。