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2020年米大統領選挙での中国共産党介入疑惑 調査中止の内幕が判明

2025/07/09
更新: 2025/07/09

2020年、FBIはクリストファー・レイ長官(当時)の公的証言と矛盾することを懸念し、アメリカ大統領選挙への中国の干渉疑惑についての調査を中止したことが、新たに公開された記録から明らかになった。
上院司法委員会のチャック・グラスリー委員長(共和党,アイオワ州選出)が7月1日に公開した内部メールによると、FBIは当初、中国による不正な郵便投票の可能性を指摘する情報報告書を発行したが、その報告書が注目を集めると、同じ日に撤回した。

メールでは、FBI本部は、報告書を撤回した理由として「情報の信頼性に疑問がある」と説明し、報告書を作成したオールバニ支局に対して、情報源にもう一度詳しく話を聞くよう指示した。

オールバニ支局からはその後、追加の情報提供があった。それにもかかわらず、その情報をもとにした報告書の再発行は実現しなかった。理由を尋ねられたFBI本部はメールで、「この報告書の内容はレイ長官の証言と矛盾しているため」と説明した。

また、FBIのマーシャル・イェーツ副長官は6月27日付でグラスリー上院議員に宛てた書簡の中で、この情報報告書(IIR)の撤回は異例の措置であり、情報報告の過程が適切に機能していないことや、政治的な圧力に影響されやすい体制であることを示していると指摘している。

さらに、イェーツ副長官は「今回の資料を見る限り、情報源は信頼できると判断されており、その情報源を理由もなく閉鎖したり、信頼性がないとして扱ったわけではない」と述べている。

撤回理由なし

2020年9月25日に発行された情報報告書は、匿名の情報源からのものであった。その内容は、同年8月下旬に中国当局が大量の偽造米国運転免許証を作り、密かにアメリカへ送り込んだというものだった。これにより、中国共産党に親近感を持つ多くの中国人留学生や移民が、バイデン候補に投票できるようになった可能性が指摘されていた。情報源によると、この話は中国当局者から得た情報を別の人物(サブソース)が伝えたものだった。

また、2020年7月下旬には、米国税関・国境警備局がシカゴ・オヘア国際空港で半年間に約2万枚の偽造運転免許証を押収したと発表している。これらの多くは中国から送られ、近隣州の大学生向けだった。

9月25日正午ごろ、FBIオールバニ支局の担当者は、今後の選挙関連の報告書を発行する場合は、本部に事前に知らせるようにと指示を受けたことを、関係者にメールで伝えた。そのメールの中で担当者は、「IIR(情報報告書)の手続きがうまくいっていれば、本部から数時間以内に連絡が来る。よくやった!」と、チームの迅速な対応を称賛し、報告書が手順通りに作成・発行されたことを強調した。

同じ日の午後、オールバニ支局は「現時点で報告書を撤回する理由はない」とのメールを送り、引き続き情報源への再確認を試みていることを伝えた。

2024年10月8日、ワシントンにあるFBI本部、J・エドガー・フーバービル。Kent Nishimura/Getty Images

しかし数分後、FBI犯罪捜査部門からメールが届き、対諜報・サイバー部門の副局長ニッキ・フロリス氏とトーニャ・ウゴレッツ氏が、「情報源への再聞き取りが終わるまで報告書を撤回するよう直接要請している」と伝えられた。

その3日後、オールバニ支局は関係者に対し、「今後は選挙関連の全ての一次報告が本部の承認を必要とする」という新たな監督ルールが設けられたと通知した。これは「予想通り」であり、先週まではこうした承認は不要だったと説明された。

同じ日、情報源はオールバニ支局のFBI担当者と面会し、疑惑を持ち出した中国在住者の名前や年齢などの詳細を提供した。両者はテレグラムで連絡を取っていたとされ、中国在住者については「慎重な人物」で「中国共産党員ではなく、むしろ1949年以前の中国政府の支持者のようだった」と説明された。

9月29日付のメールでは、「担当捜査官はこの情報源が有能で、報告内容も本物だと信じている」と記されている。さらに、情報源はサブソースの信頼性を1~10の尺度で「9~10」と非常に高く評価していた。

「問題ある」決定

本部は当初から疑惑に懐疑的だった。

情報報告書発行の前日、クリストファー・レイ長官は上院委員会で「過去に郵便投票を含め、大規模選挙で組織的な全国的有権者詐欺の事例は見ていない」と証言していた。

本部はオールバニ支局との電話で、「他の情報収集手段で疑惑の活動を確認できていない」「中国政府による選挙への偽情報工作の一環かもしれない」と9月25日付内部メールで述べた。

FBIが情報源に再度聞き取りを行った後も、本部は「この情報を公表するとレイ長官の証言と食い違う」と強く懸念していた。実際、少なくとも2通のメールで「この内容はアメリカの情報機関全体やレイ長官の議会での発言と一致しない。大統領に報告書を提出するなら、最低限の裏付けが必要だ」といった意見がやり取りされていた。メールには、情報源についてさらに確認すべき質問リストも添えられていた。

そして、本部で「選挙への脅威について新たに報告する必要はない」と幹部が決定した。この決定は、オールバニ支局の情報源担当職員から支局内の関係者や現場チームに、30分以内に速やかに伝えられた。さらに、「この報告はレイ長官の証言とやはり矛盾する」と、9月30日付の支局内メールでも繰り返し共有されていた。

少なくとも1人のFBIオールバニ支局情報分析官はこの決定に異議を唱え、「日常的な業務や管理上の問題まで本部の審査が必要なのか」と疑問を呈した。「最も懸念するのは、報告がレイ長官の証言と矛盾するとの理由だ。これは、政治的理由で情報を出さないことを示唆しており、組織の非政治性の使命に反する。現場レベルでは、情報が長官の見解と一致するかどうかを判断するのは我々の仕事ではない」と記した。

分析官は、FBIは「虚偽や不当な害を及ぼすものを無責任に出すべきではない」が、FBIは情報機関の「ごく一部」に過ぎず、「報告の正当性を単独で判断する立場にない」と強調した。「サブソースが中国当局者から情報を得ていなかった可能性も十分あるが、得ていた可能性も同様にある」と述べ、FBIが改訂版報告書を作成し、本部に判断を委ねるべきだと提案した。「政治的影響の可能性を理由に情報を出さないのは危険だ」とメールに記された。

後日、FBIシカゴ支局の情報分析官が情報報告書を情報ノート(Information Note:特定の事件や調査に関する情報や分析結果、経過などをまとめて記録・共有するための内部文書)で引用する件でオールバニ支局に相談し、情報ノートの草案を共有した。オールバニ支局は「適切に情報を反映している」と応じ、「(情報報告書は)再発行手続き中であり、最終ノートが変更される可能性がある」と述べた。

「完成したらぜひ読ませてほしい!」とメールは締めくくられている。

翌10月8日、FBI外国影響タスクフォースの幹部はオールバニ支局に、依然として情報を「権威がない」と見なしており、再発行を承認していないと伝えた。

イェーツ副長官はグラスリー氏に対し、米国税関・国境警備局への情報提供要請を除き、タスクフォースが「政府間報告や論理的な捜査手がかりがあったにもかかわらず、積極的な調査を行った形跡はない」と述べた。撤回通知ではメモの破棄が命じられたが、関連する通信は保存されているようだという。イェーツ氏は、今後もグラスリー氏と連携していく意向を示した。

メールに関するさらなる対応について質問された際、FBIの幹部は「人事や懲戒処分に関してはコメントできない」と述べた。また、FBIの広報担当者は「FBIは常に過去の過ちを正し、国民の信頼回復に迅速に取り組んでいます。私たちは、祖国を守り憲法を遵守するという使命を誠実に果たすことで、国民の期待に応えていきます」と語った。さらに同担当者は、「2020年の大統領選挙に関連する調査を含む、FBIが行った捜査の経緯や内容を国民に明らかにすることを約束しており、現在もその取り組みを進めています」と説明した。

7月2日朝、トランプ前大統領はFBIメールに関する記事をコメントなしで再投稿した。

グラスリー上院議員は記録について「政治的判断の臭いがし、レイ長官が率いたFBIが深刻な問題を抱えた組織であることを証明している」と述べた。「前例のない世界的パンデミック下で行われた重要な選挙を前に、FBIは国家安全保障の使命を放棄した」と声明で語った。「どちらにしても、その情報が本当かどうか、しっかり調べなければならない。ただのごまかしや噂話なのかどうかも、きちんと見極める必要がある」とした。

グラスリー氏は2月からFBI長官を務めるパテル氏の協力姿勢に謝意を示し、「今こそFBIへの信頼を再構築すべき時だ」と語った。

Eva Fu
エポックタイムズのライター。ニューヨークを拠点に、米国政治、米中関係、信教の自由、人権問題について執筆を行う。