スコット・ベッセント米財務長官は18日、ムーディーズによるアメリカの信用格下げについて懸念していないと述べ、トランプ大統領の関税政策および包括的な減税法案を擁護した。
同日放送のCNN「ステート・オブ・ザ・ユニオン」に出演したベッセント氏は、トランプ大統領が提案した法案(2017年に実施された減税措置を延長する内容)は、経済成長を大きく押し上げると語った。
ベッセント氏は「経済をより速く成長させることが、“債務の潜在的増加”よりも重要だ」と述べた。
「我々は支出の抑制に取り組んでおり、歳入面の成長を図っている。つまり、(国内総生産=GDP)を債務より速く成長させることで、債務対GDP比率を安定させようとしている」と語った。
一部の共和党議員は、この法案が債務拡大への対処として不十分であることに懸念を示している。現在、アメリカの国債残高は36.2兆ドルに達している。
責任ある連邦予算委員会(Committee for a Responsible Federal Budget)は、現行法案により利息を含めて3.3兆ドルの債務が新たに発生すると予測しており、「一時的措置が恒久化されれば、5.2兆ドルに達する」としている。
ムーディーズの格下げ
2025年5月16日、ムーディーズ・レーティングスはアメリカの長期信用格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」へと1段階引き下げた。理由としては、継続的な債務の増加、利払い費用の上昇、慢性的な財政赤字に対して政治的な対応が欠けていることを挙げている。
ムーディーズは声明で、「歴代の米政権および議会は、大規模な年間財政赤字と増加する利払いコストの傾向を逆転させる措置で合意することに失敗してきた」と述べた。 この格下げにより、主要3大格付け機関の中でアメリカの「パーフェクト・クレジットレーティング」は失われた。
ベッセント氏は5月18日、「私はムーディーズの格下げに大きな信頼を置いていない」と発言した。
「格付け機関の歴史を見れば、格下げが発表された時点で、市場はすでにそれを織り込んでいる。重要なのは、トランプ大統領が歴史的な中東訪問から帰国し、数兆ドル規模の資金がアメリカに流入しているという事実だ。投資家の信頼が見て取れる」と述べた。
関税は合意なき場合 元の水準に回帰へ
トランプ大統領は、アメリカの多くの貿易相手国に対し、関税を一時的に90日間停止する措置を講じた。この間に各国と長期的な貿易協定の交渉を進める意向だ。 「大統領は『誠意を持って交渉しない場合は、4月2日の関税水準に戻す』と通告している」とベッセント氏は語った。
アメリカは特に18か国の貿易相手との協定締結に注力しているという。
「より小規模な貿易関係については、金額で合意することも可能だ。また、地域ごとに包括的な合意を結ぶ方針で、『米中はこの関税率、アフリカのこの地域はこの関税率』といった形でまとめるだろう」と述べた。
なお、小売大手ウォルマートのダグ・マクミロンCEOは、最近の決算説明会で、関税の影響により価格引き上げの可能性があると述べた。 「今週発表された軽減後の関税水準であっても、その規模を考えると、小売業の狭い利益幅ではすべてを吸収することはできない」とマクミロン氏は述べた。
それでもベッセント氏は18日に楽観的な見方を示した。 「私は、交渉の最終的な結果として、小売業者も、アメリカの国民も、アメリカの労働者も、より良い状況になると確信している」と語った。
(本記事はトム・オズィメック氏が寄稿)
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