連邦判事セオドア・チュアン氏は3月18日、イーロン・マスク氏と政府効率化省(DOGE)が米国際開発庁(USAID)を解体しようとした行為は、アメリカ憲法に違反する可能性が高いとの判決を下した。
USAID本部の閉鎖、大規模な人員削減、契約解除は、憲法で定められた三権分立の原則に違反する恐れがあると指摘。議会はUSAIDの重要な措置について明確な要件を定めているが、マスク氏らはこれに従わなかったと述べた。
政府の主張:「大統領の外交権限の範囲内」
政府側は、USAIDの解体は憲法第2条が定める大統領の外交権限の範囲内であると主張した。
しかし、チュアン判事は「今回の措置は、外交政策の実施や外国政府との交渉ではなく、連邦機関の構造や利用できる資源に関する問題である」と述べ、政府の主張を退けた。
マスク氏とDOGEに対する裁判所の指示
チュアン判事はマスク氏とDOGEに対し、USAIDの職員や契約業者がUSAIDのシステムに再びアクセスできるよう復旧すること、さらに、職員の休職処分、解雇、契約解除に関する新たな措置を取らないよう命じた。
この決定に対し、連邦政府は控訴することができる。ホワイトハウスは現時点でコメントを発表していない。
トランプ政権下で進められたUSAIDの縮小
トランプ政権はここ数週間で、USAIDの職員のほとんどを解雇・休職させ、契約の83%を打ち切り、USAIDの本部を閉鎖した。現在その建物は税関・国境警備局の職員が使用している。
トランプ氏は、再びホワイトハウスに戻ると、DOGEを大統領府内に設立する大統領令を発令し、各省庁に対しDOGEと連携して業務の効率化を進めるよう指示した。
トランプ氏はDOGEのトップはイーロン・マスク氏だと述べたが、政府関係者はDOGEの長官はエイミー・グリーソン氏であり、マスク氏は大統領顧問の立場であると説明している。
「マスク氏は正式な承認を受けずに決定を下した」 憲法違反の疑い
チュアン判事は、マスク氏が上院の承認なしに政府機関の運営に大きく関与していると指摘。これは憲法の任命規定に違反する可能性があると述べた。
「マスク氏は単なる顧問に過ぎないと主張されているが、証拠はこれに反する。彼はUSAID本部の閉鎖やウェブサイトの停止を決定しており、その権限はなかったと考えられる」と判決文で述べた。
また、マスク氏のSNS投稿にも言及。
2月2日、マスク氏はXで「週末を使ってUSAIDを木材粉砕機にかけた」と投稿しており、これがUSAID解体の決定に関与していた証拠の一つとされた。
判事は、原告側が最終的に勝訴した場合、政府当局はワシントンにあるUSAID本部の建物を同庁のために再び使用できるよう準備する必要があると述べた。 ただし、USAIDの現職管理官または同庁を代表する適切な権限を持つ別の政府高官が、本部閉鎖の決定を正式に裁判所へ承認する手続きを取れば、この義務は一時的に停止される。
この命令は、マスク氏が上院の承認を受けずに過剰な権限を行使していると主張するUSAIDの職員や契約業者が提起した訴訟に基づくものだ。
USAID解体による影響
裁判資料によると、USAIDの解体は原告に深刻な影響を及ぼしている。
- 高リスク地域に駐在する職員の通信手段が遮断され、安全が脅かされている。
- 休職した職員の給与や未払いの手当が処理されず、今後も支払われない可能性がある。
原告側弁護士ミミ・マルツィアーニ氏は、大紀元への声明で
「私たちは原告と憲法を守るために行動することを誇りに思う。憲法は権力の乱用を防ぐためにあり、政府は一部の人のためではなく、すべての人のために存在すべきである」と述べた。
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