資産管理会社ブラックロックが190億ドルでパナマ運河の重要港を買収する。トランプ政権の支持を受け、中国資本からアメリカ資本への転換が実現した。この取引により、国家安全保障とインフラ投資の観点で、注目が集まった。
パナマ運河は、世界の貿易に影響を与える重要な航路であるが、その重要港が今、静かに所有者を変えつつある。
この取引は190億ドルもの巨額に上り、その裏で操縦しているのは、世界最大の資産管理会社であるブラックロック(BlackRock)である。
この取引の背後には、一体何が隠されているのか。トランプ米大統領がなぜこれを強く支持するのか。ただの商業的買収なのか、それともアメリカの戦略的布陣の一部なのか。
3月4日、ブラックロックは、そのパートナーであるTiL財団とともに、190億ドルの現金で李嘉誠(リ・カシン)の傘下にあるCKハチソン・ホールディングス(長江和記)が所有するハチソン・ポートの80%の株式を買収した。
これはつまり、ブラックロックが現在、新たに世界23か国、43の港湾、199の泊地を支配していることを意味していると言う。
最も重要なのは、パナマ運河東西両端の港湾における株式の大部分が、ブラックロックの手中に収まったことである。
この航路は、もともと中国資本によって長年支配されていたが、今やアメリカ資本が強きに復帰したのである。
このニュースが報じられるや否や、トランプは大声で喝采した。議会演説では、「私たちの政府はパナマ運河を取り戻している」と述べた。
トランプ政権下で、ラテンアメリカ担当特使を務めたクラベル・カロネ氏も次のように警告していた。
「中国共産党企業は、パナマで影響力を拡大しており、それはアメリカの国家安全保障のみならず、西半球全体にも影響を及ぼしている」
この取引は間違いなくアメリカにとって、国家安全保障上の懸念を解消するものであった。
フィンク氏とトランプ氏との関係
この取引がこれほど迅速に進んだ理由には、もう一人重要な人物がいる。それはブラックロックCEOであるラリー・フィンク(Larry Fink)氏だ。
フィンク氏は、36年以上にわたりブラックロックを率いており、現在同社が管理する資産規模は11.6兆ドルを超えたと言う。トランプ自身も、ブラックロックのファンドに長期投資している。
2017年にはトランプ氏がホワイトハウスでフィンク氏を名指しで称賛し、「ラリーは、私に素晴らしい仕事をしてくれた。彼は私の多くの資金を管理し、そのリターンは素晴らしい」と述べたことがある。
さらにフィンク氏はトランプの商業顧問委員会にも参加しており、トランプ氏の経済圏における重要人物でもあった。
この取引によってフィンク氏は、資金と政治的リソースを活用し、トランプ政権に大きな贈り物を提供したと言える。
取引がブラックロックにもたらす影響
今回の取引はブラックロックにとっても二重の利益となる。
第一に、投資リターンが驚異的である。
ブラックロックは以前からCKハチソンの株主であり、李嘉誠家族と長期的な協力関係を築いていた。
取引発表後、CKハチソンの株価は、連続して約30%上昇し、これによりブラックロックの帳簿上利益も非常に大きくなった。
また、取引価格も非常にお得と言えそうだ。2006年にはハチソン・ポートの株20%が44億ドルで売却されたが、今回は80%が190億ドルという価格であり、大幅な値上げには至っていない。
第二に、インフラ版図拡大である。
今年1月には、ブラックロックが125億ドルで、グローバル基礎インフラ企業(GIP)を買収し、そのインフラ資産管理規模を1700億ドルまで拡大させたばかりであった。
今回の取引によって、さらに複数の戦略的港湾を掌握し、世界物流インフラへの影響力を高めることとなった。
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