2月12日に開催した民主党上院議員による円卓会議と、13日に開催した下院外交委員会の公聴会で、共和党と民主党はアメリカ国際開発庁(USAID)をめぐり、大きく異なる意見を交わした。
USAIDの存続に暗雲が立ち込めたのは、1月20日、トランプ大統領が外国開発援助の支出を90日間停止する命令を出したことがきっかけだ。この措置は、援助プログラムが効率的に機能し、アメリカの外交政策に一致しているかを見直すためとされている。
その後、トランプ氏は同庁のワシントン事務所を閉鎖し、ほぼ全ての職員に対し、2月7日午後11時59分をもって行政休暇に入るよう命じた。一方、1月28日にはルビオ国務長官が命令を出し、人命救助のための人道支援は継続できるようにした。
連邦判事は強制休職に対する仮差止命令は2月14日まで有効としていたが、2月13日にさらに1週間延長することを決定した。
1. 両党とも戦略的ツールとしての対外援助を支持
民主党議員は、トランプ政権のUSAIDへの措置が、対外援助の全面的な廃止への布石ではないかと懸念している。
サラ・ジェイコブス下院議員は外交委員会の公聴会で「これは監視の問題ではない。改革の問題でもない。対外援助そのものを完全に排除しようとしている」と語った。
民主党議員らは、人道支援と国際開発が国家安全保障を確保するための重要な手段だと強調した。
共和党もこの点では同意を示しつつ、対外援助はアメリカの外交政策目標に明確に一致する必要があると強調した。
「そもそもUSAIDはなぜ創設されたのか? 1961年、それは冷戦下でソ連に対抗するためだった。中国やその他の外国の敵対勢力によって高まる脅威に対抗するという正当な目的は、今なお重要であり存在していると信じている」と、マコール下院議員は2月13日に発言した。
2.共和党はUSAIDが外交政策を損なっていると主張
共和党は、USAIDが本来の目的から逸脱し、現在はアメリカの利益を損なっていると批判している。2月13日の公聴会で、ブライアン・マスト議員は、「USAIDや国務省が資金を投じてきたプログラムは弁護の余地がなく、アメリカの国際的地位を傷つけている」と述べた。
マスト氏や他の共和党議員は、LGBT問題やジェンダー・イデオロギー、中絶に関連するプログラムを挙げ、特にアフリカ諸国ではこれらは受け入れられず、反感を招いていると指摘した。
一方で、下院外交委員会の民主党筆頭委員グレゴリー・ミークス氏は、「これらの批判はUSAIDが果たしている重要な役割を覆い隠そうとするためのものだ」と反論した。
また、共和党議員は、アメリカの利益を促進するための資金提供プログラムが、結果的に敵対勢力を利するケースがあると指摘している。スコット・ペリー議員は、2024年にUSAIDがアフガニスタンに支出した約5億3500万ドルは、タリバンに利益をもたらしたと非難した。タリバンは恐喝や資金の横流し、窃盗などを通じて援助から利益を得ているとされる。

「あなた方はテロを資金援助している。それはUSAIDを通じて行われている」とペリー氏は述べた。
3.民主党、援助停止によるさらなる危害を懸念
民主党議員らは、下院と上院の双方で、たとえ一時的であっても対外援助を停止することは、アメリカの国家安全保障を損なうと警告している。2月12日の円卓会議で、ジーン・シャヒーン上院議員は、USAIDに対する措置について、「これらの行為は対外援助を損ない、アメリカの敵対勢力への贈り物だ」と批判した。
ミークス議員も、「アメリカの最大の強みのひとつから撤退すれば、勝つのは中国とロシアだ。そして我々の敵対者たちが勝利する」と語った。

両会合では、議員や招待された証人がこのテーマをさらに掘り下げた。アメリカが差し控えた援助を提供することで、特に中国が途上国と関係を深める可能性を指摘した。他にも、アメリカの国際援助が撤退すれば、違法移民や人身売買の増加、エボラのような致命的な病気の蔓延といった二次的な影響が発生し、最終的にアメリカ本土に脅威を及ぼす可能性があるとした。
シドニー・カムラガー=ダブ下院議員は2月13日に「対外援助の仕組み全体を一方的に解体することで、世界的な危機から守られるべき全てのアメリカ人を危険にさらしている」と述べた。
さらに、プラミラ・ジャヤパール下院議員は、一時的な援助停止でさえ、不必要な苦しみをもたらすと警告した。
同氏は「免除を受けたプログラムでさえ資金が凍結されたままだ。医薬品の配送は停止され、命を救うはずの食料が港で腐敗している」と現状を批判した。
4. トランプ政権のUSAIDに関する措置の合法性を巡る対立
民主党議員全員は、トランプ大統領によるUSAIDへの措置を違法だと非難している。シャヒーン氏は、「これは違法な予算凍結のように見える」と述べ、大統領が議会で承認した資金を差し控えることを問題視した。
2月12日、クリス・クーンズ上院議員は、「この突然で完全な対外援助の停止は、非効率的で無駄が多く、有害で、違法だ」と指摘した。
USAIDは1961年、大統領令によって設立し、1998年に議会の決定により独立した連邦機関となった。民主党議員たちは、USAIDを廃止するなら議会が行動を起こす必要があると述べている。
トランプ氏はUSAIDの事務所を閉鎖し、資金の停止と人員の大幅削減を命じたものの、機関そのものを完全に廃止する措置はまだ取っていない。しかし、トランプ氏はUSAIDを廃止すべきだという自身の意見を繰り返している。
一方、ルビオ国務長官や他の共和党議員は、USAIDの一部機能を国務省に移管する形での再編を検討している。
5. 民主党、改革には協力の意向
共和党は、民主党がUSAIDを守ることに重点を置き、無駄な支出の削減に取り組む意志がないと批判している。しかし、民主党議員たちは、議会を通じた改革には協力する姿勢を示している。
12日の円卓会議で、シャヒーン上院議員は「税金が正しい場所で確実に使われることに全力で賛成している。私はこれまで同僚と党派を超えて協力してきたし、ここにいる全員が同じ気持ちだと思っている」と述べた。
13日、シーラ・シェルフィラス=マコーミック下院議員は、問題を未然に防ぐために、議会にもっと機会を与えるべきだったと主張した。
「議会に機会が与えられていれば、DOGE(政府効率化省)ではなく、党派を超えて問題の影響を特定し、回避できたと確信している」と述べた。
アミ・ベラ下院議員は、「21歳のテック業界の若者が、どのプログラムを続けるべきか、やめるべきかを決めてほしくない。委員長、我々議会が協力してその仕事してほしい。それが私たちの役割だ」と述べ、議会の主導による改革を求めた。
一方、マーク・グリーン下院議員は、連邦政府の支出削減を目指すDOGEの取り組みを支持し、「我々が、資金をどのように使っているかを徹底的に調査することに反対する理由は見つからず理解できない」と述べた。
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