社会 世界の再エネ推進で笑う中共

エネルギー転換の裏に潜む課題 中国の鉱物支配とその影響 (上)

2024/10/09
更新: 2024/10/10

風力発電や太陽光発電、電気自動車(EV)が将来のエネルギー源として注目されている一方で、これらの生産に必要な鉱物の大部分が中国から供給されるため、競争国に依存するリスクが懸念されていると専門家は指摘している。

エネルギー分析会社ウッド・マッケンジーが8月に発表した報告書「銅供給の確保 中国なしではエネルギー転換は不可能」では、アメリカのエネルギー部門の脱炭素化と中国依存の削減という目標は「矛盾している」と述べている。

「電化に不可欠な銅なしでは世界の脱炭素化は達成できない」と報告書は指摘している。しかし、「過去5年間、中国はサプライチェーンへの投資で主導的地位を維持してきた」という。

再生可能エネルギーへの移行は、エネルギー密度の高い液体やガス燃料から、密度の低い鉱物ベースのエネルギーへの転換を意味している。

国際エネルギー機関(IEA)の2021年の報告書「クリーンエネルギー移行における重要鉱物の役割」では、「クリーンエネルギー技術によるエネルギーシステムは、従来の化石燃料を使用するシステムとは大きく異なる」としている。例えば「典型的なEVは、従来の自動車に比べて6倍の鉱物資源を必要とし、陸上風力発電所はガス火力発電所に比べて9倍の鉱物資源を必要とする」と説明している。

また地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」の目標を達成するためには、2040年までに鉱物資源の生産を4倍にする必要があり、バイデン・ハリス政権が目指す2050年までのネットゼロを達成するには、2040年には現在の6倍の鉱物資源が必要になると報告している。

リチウム、ニッケル、コバルト、マンガン、グラファイトは、EV用バッテリーや風力・太陽光発電の蓄電に不可欠な要素であり、風力タービンやEVモーター用の磁石には希土類元素(レアアース)が必須である。また、遠隔地の風力や太陽光施設を電力網に接続するためには、大量の銅とアルミニウムが必要となる。

しかし、これらの鉱物のサプライチェーンは中国を経由している。

ナショナル・センター・フォー・エナジー・アナリティクスのマーク・ミルズ所長は大紀元に「中国はエネルギー鉱物市場で、石油輸出国機構(OPEC)が石油市場で持つシェアの2倍を有している」と語った。

OPECの世界石油生産シェアは現在約37%だが、IEAによれば、中国と中国が鉱業を支配しているコンゴ民主共和国は、世界のコバルト生産の70%、希土類元素の60%を占めている。そして、再生可能エネルギーに必要な鉱物が採掘されると、中国の支配はさらに強まる。

IEAの報告によれば、中国は世界のニッケルの約35%、リチウムとコバルトの50~70%、希土類元素の約90%を精製しているという。

鉱物は中国経済の「重要な要素」

再生可能エネルギー産業は、中国経済とその成長の重要な要素となっている。再生可能エネルギーの調査・推進会社カーボン・ブリーフの1月の報告書によると、中国の再生可能エネルギーへの投資額は前年に比べて40%増加し、8900億ドルに達した。中国全体の投資成長のほぼすべてが「再生可能エネルギー分野によるもの」だ。

風力、太陽光、EVを中心とする「クリーンエネルギー」部門は、中国のGDPに1.6兆ドル(237兆7800億円)をもたらし、経済成長の最大の要因となっている。この部門がなければ、中国のGDP成長率は2%低くなっていただろうと報告されている。

エネルギー研究所(IER)の政策担当副社長であるダン・キッシュ氏は、大紀元に対し、「中国が世界中でグリーン政策を推進する理由は理解できる。中国には、我が国のような豊富な天然資源がない」と語った。

現在、世界最大の石油と天然ガスの生産国であるアメリカとは対照的に、中国はエネルギー安全保障のために代替手段を模索しなければならない。中国は、主にアフリカで鉱山の権利を取得し、国内の製錬や精製、製造施設に多額の投資を行い、そこで原材料を加工して、太陽光パネルや風力タービン、電池部品に組み立てるという戦略を追求してきた。

これにより、中国は国内の石油やガス資源の不足を戦略的な強みへと変えた。また、中国はこの新たな力を行使する準備が整っているようだ。

8月現在、中国はアンチモン、グラファイト、ガリウム、ゲルマニウム、希土類磁石技術の輸出規制を課している。アンチモンはバッテリー製造に使用され、世界供給の約半分を中国が占めている。希土類は風力タービンとEVの磁石に不可欠である。グラファイトはEVバッテリーに使用され、その精製の90%が中国で行われている。

「ある国が重要な原材料の50~90パーセントの市場支配力を持っている場合、その市場支配力を使って政治的、または財政的な権力を行使しなかった例が歴史上あっただろうか」と、ナショナル・センター・フォー・エナジー・アナリティクスのマーク・ミルズ氏は述べている。

2022年のインフレ抑制法と2021年の超党派インフラ法に基づき、再生可能エネルギーに約1兆ドルが割り当てられているにもかかわらず、これらの市場に対する中国の支配は強まる可能性が高い。

中国のこの市場支配力は今後も強まると予測されている。スイスのUBS銀行が2023年に発表した報告書によると、中国が管理するリチウム鉱山は、2022年の19万4千トンから2025年には70万5千トンに増加し、世界供給における中国のシェアは24~32%に拡大するとされている。また、イギリスコバルト商社ダートン・コモディティーズによると、中国のコバルト生産のシェアは現在の44~50%に増加する見込みである。

(続く)

経済記者、映画プロデューサー。ウォール街出身の銀行家としての経歴を持つ。2008年に、米国の住宅ローン金融システムの崩壊を描いたドキュメンタリー『We All Fall Down: The American Mortgage Crisis』の脚本・製作を担当。ESG業界を調査した最新作『影の政府(The Shadow State)』では、メインパーソナリティーを務めた。