郵便物の減少や物流コストの上昇を背景に、赤字が続く郵便事業に対し、日本郵便は10月1日から手紙の料金を現行の84円から110円に引き上げるなど、郵便料金を値上げする。これは消費税率の引き上げを除き、1994年以来初の値上げとなる。
理由は郵便物数の減少と人件費、物流コストの上昇による営業費用の上昇である。
総務省によると、今回の値上げによって来年度の郵便事業は黒字化するが、その次の年度からは再び赤字に転じる見通しである。
値上げの内容
・定形郵便物について、
- 25g以下の定形郵便物は、84円→110円(約30%引上げ)とする。
- 50g以下の定形郵便物は、94円→110円とする。
・はがきは、63円→85円とする。
・ 特定封筒郵便物について
- レターパックライト 370円→430円
- レターパックプラス 520円→600円
- スマートレター 180円→210円
・速達 の追加料金について
- 250gまで 260円→300円
- 250g超 1kgまで 350円→400円
- 1kg超 600円→690円
郵便物数減少に歯止めかからず 赤字拡大の傾向
インターネットやSNSの普及、各種請求書等のWeb化の進展、各企業の通信費や 販促費の削減の動き、個人間通信の減少等により、郵便物数は2001年度のピークから大きく減少しており、今後も右肩下がりの傾向が継続していく見込みだ。国内郵便は2001年の262億通から、2022年度までの21年間で45.0%減(年平均2.8%減)となる144億通まで減少した。また、人件費、燃料費などの上昇、協力会社への適正な価格転嫁その他の調達コストの増加など、営業費用の増加が見込まれる。
2022年度の郵便事業の収支は、211億円の赤字となった。郵便事業全体の営業損益が赤字を記録するのは、2007年の民営化以降初めてだ。総務省が発表した郵便事業の営業損益の見通しでは、今回の値上げを行わない場合、2028年度の赤字が3439億円まで拡大すると試算した。また、今回の値上げを実施した後、2025年は黒字に転換するものの、2026年度にまた400億円の赤字に転じる見通しだ。
日本郵便はこれまで区分作業の効率化、適正な要員配置の徹底などにより、人件費などの営業費用を削減してきたが、根本的な改善は実現できていない。
総務省は、日本郵便が今後料金の値上げを行う際に、柔軟に対応できるよう郵便料金制度の見直しに着手した。有識者による委員会は、今年7月から海外での値上げ事例や鉄道・電力など他の公共サービスの事例を参考に、適正な料金算定の方法について議論を進めている。最終的な答申は来年夏を目標にまとめる予定である。
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