カナダ外相、法輪功学習者の陳情に書面回答

2024/07/19
更新: 2024/07/19

カナダ外相は、連邦議会議員ピエール・ポール=ユス氏が先日、国会で読み上げた陳情書に対し、書面で回答した。陳情はカナダの法輪功(ファールンゴン)学習者がカナダ政府に、法輪功学習者・叢蘭英さんの救出を求める署名を呼びかけたことに端を発している。

カナダ国籍の叢新苗(ツォン・シンミャオ)さんの母親で、80歳に近い叢蘭英(ツォン・ランイン)さんは、2022年に中国共産党に不当逮捕され、法輪功を修煉しているとの理由で懲役4年を言い渡された。

法輪功は、中国の伝統的な精神修煉法である。5つの穏やかでゆっくりとした功法と、真、善、忍という原則を中心とした道徳的な教えを組み合わせたものだ。その心身の健康への高い効果により、中国では人づてに広がった。中国国家体育局によれば、1998年には7000万人あまりが法輪功を学んでいた。

しかし、これは無神論・独裁で統治する中国共産党政権には脅威に映った。当時の中国共産党党首・江沢民は権力がゆさぶられることを恐れ、1999年7月20日に弾圧を指示。拘束や死に至るほどの拷問のほか、結婚や就労、学業の制限、官製メディアによる誹謗中傷プロパガンダなど、全土規模であらゆる手段が取られている。叢蘭英さんもその被害者の1人だ。

外相からの書面回答では次のように書かれている。「カナダはこれまで、法輪功学習者を含む少数民族や宗教団体に対する脅迫や弾圧について、公に懸念を表明してきました。今後も適切な時期に継続して同様に行います」

書簡では、人権問題はカナダ政府にとって対中関係における優先事項だと強調し、カナダ政府は常に中国に表現、集会、結社、信仰の自由を尊重し、保護し、促進するよう求めていると述べた。

今年1月23日、ジュネーブで行われた国連人権理事会の中国に関する第4回普遍的定期審査(UPR)において、カナダが中国に対して法輪功学習者を含むあらゆる形の強制失踪を終わらせるよう求めた。

書簡によると、2022年12月14日、「違法な人体臓器摘出と売買を取り締まる法案」S-223はカナダ庶民院で全会一致で可決された。同法案は、中国のウイグル族と法輪功学習者に関連するものとされている。

書簡では「カナダ政府は特に市民社会組織、国外居住者、信仰に基づく団体と定期的に連絡を取り合い、宗教または信仰の自由を含む人権擁護のための行動を通報するよう伝えています」と強調されている。
 

書簡全文の邦訳

署名 ロブ・オリファント(外務大臣議会書記官)

人権の推進と保護はカナダの外交政策に不可欠であり、中国との関与においても政府の優先事項です。カナダは常に中国に対し、表現、集会、結社の自由、およびすべての人に対する宗教や信仰の自由を尊重し、保護し、促進するよう求めています。

叢蘭英(ツォン・ランイン)さんのケースに関心を寄せていただきありがとうございます。カナダはこれまで、法輪功学習者を含む少数民族や宗教団体に対する脅迫や弾圧について、公に懸念を表明してきました。今後も適切な時期に継続して同様に行います。2024年1月23日、ジュネーブで行われた国連人権理事会の中国に関する第4回普遍的定期審査(UPR)において、カナダは法輪功学習者を含むあらゆる形の強制失踪を終わらせるよう中国に要求しました。

2022年12月14日、ウイグル人や中国の法輪功学習者に関連する法案とされる、違法な人体臓器摘出と売買を取り締まるS-223法案が、庶民院で満場一致(賛成324票、反対0票)で可決されました。その翌日、S-223法案は王室に承認されました。S-223法案は、カナダ国民や永住者が、臓器提供に関して十分な同意を得ていない人から摘出された臓器を受け取るために海外に渡航する行為を犯罪とするものです。カナダは、強制臓器摘出、臓器移植ツアー、臓器売買に対する法律を採択したアメリカ、イギリス、イタリア、イスラエル、ベルギー、ノルウェー、スペイン、韓国、台湾などの他の政府に加わります。

カナダ政府は、あらゆる形態の人身取引、特に臓器摘出を目的とするものに対抗することに引き続き尽力しています。また、臓器売買の防止、抑圧、罰則を目的とした国連の人身取引防止プロトコルの実施を促進し、進展させるために、中国を含む他国と積極的に協力しています。臓器の違法取引との闘いは複雑であり、国際的な協力が必要です。カナダは、2010年に中国を含む加盟国が採択した世界保健機関(WHO)の「人間の臓器および組織の移植に関する指導原則」の改訂版の作成にも積極的に参加しました。

さらに、カナダは信仰や宗教の自由を追求する国際パートナーと密接に協力し続けています。2015年、カナダはアメリカと共同議長を務める「信教の自由に関する国際コンタクトグループ」を設立しました。これは、宗教や信仰の自由を保護し、促進することに決意した30か国以上が集まる重要なプラットフォームです。このプラットフォームは、世界中の宗教少数派に関連する問題について協調的な取り組みを進めるための場となっています。

カナダの人権への取り組みには、高レベルの訪問、公式声明、二国間および多国間フォーラムにおける具体的な問題や懸念される事例に関する意見表明、外交ミッションの介入とアドボカシー(一人ひとりが問題について知り、その原因について声をあげ、 解決のためにできることを訴えていくこと)活動、そして市民社会への啓発活動が含まれます。カナダ政府は、市民社会の組織、ディアスポラ、信仰や宗教のコミュニティ、および国際社会全体と定期的に対話し、人権、特に信仰や宗教の自由の擁護に対するアプローチを明確にしています。これには、中国の人権状況に焦点を当てるカナダの市民社会組織との定期的な会合も含まれます。

カナダ政府のインド太平洋戦略も、中国に対するカナダのアプローチを直接示しています。中国の台頭は、この地域のすべての国家、カナダを含む戦略的視点を変えています。インド太平洋戦略の第3の柱は、インド太平洋地域における人材、開発、および人権の擁護への投資を明確にしています。カナダは、国際的な人権規範の尊重を含む国益に関して決して責任を回避しません。

清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。