7月1日、アメリカ最高裁判所は前大統領ドナルド・トランプ氏に免責の勝利をもたらし、トランプ氏が在任中に行った行動について刑事訴追を大幅に免れることとなった。
9人の裁判官は6対3の票決で、大統領がその核心的な職務範囲内で行う行動については絶対的な免責を有し、他のすべての公式行動についても推定的に免責を享受するとの判断を下した。
この裁定により、特別検察官ジャック・スミス氏が進める2020年大統領選挙を覆そうとしたトランプ氏に対する訴訟の進展は遅れることが確定した。最高裁は意見書で、前大統領トランプ氏が権力を行使した一部の方法は職務遂行の一環とみなされると述べた。
異議を唱えたリベラル派の判事たちは、この決定が「(トランプ氏の)大統領周辺に『法の支配が及ばない』地帯を実質的に作り上げた」と非難した。
広範な大統領免責を認めた判決
6票の多数派によるこの決定は、トランプ氏がホワイトハウス在任中に行った行動に対して広範な保護を提供するものである。この裁定により、トランプ氏の行動は三つのカテゴリーに分けられることとなった。核心的な憲法上の権限、公式行動、非公式行動(私的行動)。
核心的な憲法上の権限について、最高裁は明確に前大統領に免責を認めた。首席判事ジョン・ロバーツ氏は多数意見を書き、「少なくとも大統領が核心的な憲法上の権限を行使する場合、この免責は絶対的でなければならない」と述べた。
他のすべての公式行動については、「少なくとも推定的に」免責を享受するとした。ロバーツ氏は「しかし、本件訴訟の現段階では、この免責が絶対的であるべきか、または推定的な免責が十分であるかどうかを決定する必要はない」と書いた。
非公式行動については、判事たちの間で起訴の可能性に関する異論はなく、非公式行動には大統領免責がないことを確認した。
「2020年選挙を覆す」訴訟への影響
最高裁のこの決定はトランプ氏の訴訟に重大な影響を与えるものである。トランプ氏は大統領免責を享受し、これはジャック・スミス特別検察官がトランプ氏に対して提起した多くの指摘を大きく弱めることとなる。
ロバーツ首席判事は、トランプ氏が2020年の選挙に敗れた後も権力を維持しようとした一部の努力は、職務遂行の副産物と見なされると書いた。
2020年11月の選挙後、トランプ氏の盟友たちは選挙結果の認定を一時停止し、司法省の検察官に選挙不正の主張を調査させることを求めた。今回の最高裁の裁定は、トランプ氏がこれについて司法省と接触した行為は免責されると認めた。
意見書には「トランプ氏が司法省の職員と話し合った行為に関して訴追されることは絶対にない」と書かれ、大統領の行政府は「どの犯罪を捜査し起訴するかを決定する『絶対的な自由裁量権』を持つ」とした。
さらに、トランプ氏がマイク・ペンス前副大統領に対して行った圧力行動も「公式行動に関わるものである」とし、トランプ氏はこれについても免責を享受するとした。
また、最高裁は「裁判所は大統領の動機を調査してはならない」とも述べた。この概念は最高裁のリベラル派判事によって反対されたが、完全に否定した。
反対意見
左派のソニア・ソトマイヨール判事は少数派意見書で、多数派の一連の批判を含め、この決定がもたらす可能性のある結果について警告した。
ソトマイヨール判事は、最高裁が官僚の行動に免責を与える範囲が広すぎると論じ、これは大統領権限の乱用に対する青信号(ゴーサイン)だと批判した。
彼女は反対意見書で「多くの多数派の論理に基づけば、大統領は今やどんな形であれその公式権力を行使する際、刑事訴追から免れることになる。SEALチーム6(米海軍特殊部隊)に政治的対立者を暗殺するよう命じるのか? 免責。軍事クーデターを組織して権力を維持するのか? 免責。賄賂を受け取って恩赦を与える? 免責。免責、免責、免責」
「自らの利益、政治的生存、経済的利益を国益の上に置きたいと願うどんな大統領にとっても、この新たな公式行動の免責は今や『装填(そうてん)された銃』のようなものである」
「大統領と彼が仕える国民との関係は、取り返しのつかない変化を遂げた。公式権力を行使するたびに、大統領は今や法律の上に立つ王様である」と述べた。
11月選挙前の裁判はほぼ不可能
7月1日の最高裁判決は、スミス特別検察官が進めるトランプ氏への多くの訴訟内容を定めたが、最高裁は問題を地方法院に戻して分析を指示した。この過程は、11月の選挙までにどんな潜在的な裁判も遅らせることになるだろう。
トランプ氏が直面している4つの刑事告発のうち3つは大統領免責問題に関わる。最高裁は、連邦選挙不正事件を監督するタニア・チュトカン地方判事に、起訴状に記載されている多くの行動を詳細に検討し、それぞれの行動が公務に当たるかどうか(すなわち免責を享受するかどうか)を判断するよう指示した。
これにより、11月の選挙前にチュトカン地方判事の裁判所で重要な公聴会が開かれる可能性があるが、トランプ氏に対する実際の裁判は先延ばしになるだろう。
スミス特別検察官がトランプ氏を起訴した起訴状には、私的行動と公式行動の区別がない。トランプ氏のジョン・サウアー弁護士は、今年4月の最高裁の弁論で、スミス氏の起訴状に記載された一部の行動は私的な事務のように見え、起訴される可能性があると認めた。
しかし、最高裁はまた、スミス検察官がトランプ氏の公式行動の証拠を使って起訴することはできないと述べ、これは検察にとってさらなる打撃となる。
2020年のアリゾナ州選挙結果を覆そうとしたトランプ氏に対する訴訟に関して、エイミー・コニー・バレット判事は別の独自意見で、2020年にアリゾナ州で敗北した後に州議員に圧力をかけた行為に対してトランプ氏を起訴することは問題ないと考えていると述べた。
彼女は「大統領は州立法機関やそのリーダーに対して権限を持たないため、アリゾナ州下院議長と関わる際に犯した罪で彼を起訴することが、行政権の違憲侵害になるとは考えにくい」と書いた。
しかし、この問題を検討することも訴訟の停滞と遅延をもたらすだろう。
これにより、この3つの訴訟は11月5日の選挙日までに裁判段階に入ることはまずないだろうし、結審することはなおさらである。
現在、トランプ氏が唯一裁判を受けているのは、ニューヨーク州の「口止め料」事件である。今年5月、トランプ氏は陪審により34件の重罪に問われた。裁判所によるトランプ氏の判決は7月11日に行われる予定である。
もしトランプ氏がその三つの事件の判決前に選挙に勝利し、さらには大統領として宣誓就任することができれば、トランプ氏は新たな司法長官に裁判所に起訴取り下げの動議を提出するよう命じることができるとの見解がある。
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