先月、中国南部各地で大洪水が発生し、人命と財産に深刻な被害が出た。公式発表によると、広東省や広西チワン族自治区、福建省、安徽省が百年に一度の大洪水に見舞われた。ダムからの突然の放水により、住民の移動が不可能になり、莫大な損失が出たという情報もある。では、中国のダムと近年中国で頻発している洪水はどのような関係があるのだろうか。

地形図は国家機密、市民は避難先が分からず

中国南部の著名な景勝地・桂林は2020年から現在に至るまで毎年洪水に見舞われている。ドイツ在住の国土計画専門家、水利エンジニアの王維洛氏は、新唐人テレビの番組『菁英論壇』で、中国のダムからの放水やダムに関連する多くの情報は国家機密に指定されていると述べた。

桂林の市民、いや中国の人々は地形図を持っていないのだろうか？　世界の国では、一般に国の地形図はインターネットで閲覧できる。中国では人は見ることができず、自分の隣の地形がどうなっているのか、自分の家が高いのか低いのか、洪水が来たとき、自分の家が浸水するのか否かが分からないのだ。

2〜10万分の1の地形図などの精細な地図は、中国共産党（中共）が国家機密に指定しており、軍の総参謀本部の管理下に置かれ、一般人はアクセスできないからだ。したがって、中共が国家秘密の扱いを定めた「国家秘密保護法」の最大の被害者は中国人である。

例えば、今回の桂林の洪水の真因は、桂林が都市全体の緑地率と保水率を高める「スポンジシティ」構想であるためだ。降水の70パーセントがその都市で吸収される。この構想は、習近平が提唱した。

ダムによる恐怖　「原爆10万発が中国人の頭にある」　

王維洛氏は『精英論壇』で、中国には10万基近いダムが建設されており、多くのダムは中国の1年間の水消費量をすべて賄うことができるが、なぜ中国の洪水の発生率は増加傾向にあるのか。世界にはダム建設などに関する新しい知識がたくさんあり、中国が今知っている知識とはまったく異なっている。アメリカのフーバー・ダム建設後、世界中でダム建設が急増した。当時は、ダムが地域の経済発展につながるというモデルが流行した。

しかし、転機となったのはエジプトのアスワン・ハイ・ダムだった。 アスワン・ハイ・ダムが生態系や社会に与えた悪影響はあまりにも大きく、米欧の学者たちは、ダム建設による利益は小さく、損失は大きいという事実を反省し始めた。米欧ではまず、多くのダム建設が中止され、建設業者が中国に集中した。

ロシアによるウクライナ侵攻後、ロシア軍がドニエプル川のカホフカ水力発電所のダムを爆破した。トランプ前大統領は先日の演説で、中共が任期中に台湾を侵害した場合、北京を爆撃すると発言した。具体的に、トランプ氏は北京のどの場所を爆撃するつもりなのか？

1969年、北京が初めて爆撃の脅威にさらされたとき、北京を爆撃しようとしたのは旧ソ連だった。中共とソ連の間でダマンスキー島事件があったからだ。林彪の秘書の回想によると、林彪は数日間、地図の前に立ってじっと眺め、見終わった後、北京の密雲ダム、官庁ダム、懐柔ダムを指さして、ソ連はこの3つのダムを爆破しようとしていると言ったという。つまり、ソ連が北京を攻撃しようと思えば、まず密雲ダム、官庁ダム、懐柔ダムを爆撃するということだろう。

林彪のこの予言は、1976年の唐山地震で裏付けられた。唐山地震の際、密雲ダムが決壊寸前となり、ダムが決壊すれば北京、天津、薊県の3か所が水没すると、当時の水利部の報告書にあった。

エポックタイムズのシニアディレクターの石山氏は、『菁英論壇』で、中国にある10万基のダムは、頭上にぶら下がっている10万発の原爆のようなものだと述べた。ダムの建設にはメリットとデメリットがあるが、政府にとってメリットは取り上げられ、デメリットは人民の負担に転嫁される。

死者23万人、文化大革命における世界最大のダム決壊事故

エポックタイムズ編集長の郭君氏は『精英論壇』で、イギリスの歴史家トインビーによれば、農業社会における権威主義体制の起源は水資源に関係しており、水をコントロールするためには中央集権的な権力構造が必要であり、逆に水をコントロールすることは農業、ひいては社会を統制することに繋がると述べた。かつて文化大革命の時代、巨利をあげたのは企業ではなく水利部門だった。

郭軍によると、1975年8月、河南省駐馬店で大小60基以上のダムが決壊し、20万人以上が死亡したという。中国当局が発表した死者数は2万6千人だったが、1987年8月、中共人民政治協商会議（政協）の第6回会議のメンバー8人が連名で発表した論文には、約23万人が死亡した記載されている。この事件は文化大革命の時に起きたもので、死者数は後の唐山地震による死者数に匹敵するが、中共幹部は死者数を隠蔽し、一切報道させなかった。