米裁判所がイベルメクチン投与拒否の訴訟を継続 米病院のCOVID-19患者の治療中止後の死亡で

2024/06/07
更新: 2024/06/07

ニューヨーク市の病院システムが、瀕死の女性にイベルメクチンを投与し続けることを拒否したのは連邦法の適用範囲内であるとの病院システムの主張を、裁判所は却下した。

ニューヨーク市のマウントサイナイ・サウス・ナッソー病院(以後、マウントサイナイ病院)は、新型コロナの患者デボラ・バックオさんに対し、裁判所の命令により2度にわたってイベルメクチンを投与せざるを得なかった。バックオさんの病状はイベルメクチンの服用を開始した後に改善した。

しかし、病院はイベルメクチンの処方が終了する前に2回目の治療を中止し、その後バックオさんは亡くなった。

原告はこの病院側の対応をめぐって提訴した。

病院は、COVID-19パンデミックのような健康緊急時に、医療従事者が薬やワクチンを投与する際に適用される「米国公共準備および緊急事態準備法(PREP法)」の下で免責されるべきであり、訴訟は却下されるべきだと主張した。

PREP法は公衆衛生の緊急事態において、ワクチンや医薬品などの医療対策を推進することを目的として立法され、この法により、特定の緊急事態の際に医療従事者や製造者は、その対応措置に対する法的責任から免責されることがある。

しかし裁判所の判決は病院の主張を否定するもので、病院が行った行動がPREP法の保護範囲に該当しないとした。

病院側の弁護士は提出した書類の中でこのように指摘している。

「この訴えは、PREP法で定義されたコロナ対策薬の使用に対する正面からの攻撃であることを否定できない。訴えは、コロナ治療に用いる認可された対策の提供と施行に関連する損失についての請求を行っており、これはPREP法の適用範囲内の行為に該当する。そのため、この法律により、訴えは却下されるべきだ」

この法律は、コロナ関連のさまざまな訴訟で有効に活用されている。例えば、最近、親の同意を得ずに子供にコロナワクチンを接種した職員は、この法律を引用して訴訟の却下を勝ち取った。

しかし、マウントサイナイ病院が提出した却下申立ては、ニューヨーク州最高裁判所のランディ・スー・マーバー判事によって退けられた。

マーバー判事は5月17日の判決で、マウントサイナイ病院とその職員、そしてイベルメクチンは、法律における「保護対象者」および「保護対策」に該当することを認めた。

ただし、訴訟の中心的な問題がコロナの治療薬としてのイベルメクチンの使用に関連していないと指摘した。

判事は訴状を引用して述べた。「実際に、サウスナッソーの主張とは全く異なり、訴状には『(担当医から)処方されたにも関わらず、サウスナッソーは過失または不法に、、[故人]に対してイベルメクチンの投与を繰り返し拒否した』と詳しく記されている。

つまり、イベルメクチンが医師からは処方され、また、医療記録に明確な証拠があり、イベルメクチン治療を開始すると[故人]の状態が著しく改善したにもかかわらず行われた」

マーバー判事は、これはPREP法による免責が「適用されない」と付け加えた。

この判決により、訴訟は進行することになった。次回の聴聞会は6月3日に予定されている。

亡くなったバックオさんの夫、スコット・マンテルさんの代理人弁護士、スティーブン・ウォーショウスキー氏は大紀元へのメールで、「マンテルさんと私は、判事が病院側の申し立てを却下し、デビー(デボラ・バックオさん)のために正義を勝ち取るチャンスを与えてくれたことを非常に喜んでいます」と語った。

マウントサイナイ病院はコメント要請に応じていない。

米国規制当局は、新型コロナウイルス感染症の治療にイベルメクチンを使用することは推奨していない。一方、複数の医師は、他の目的で使用が認められているこの薬を処方された患者が速やかに回復したと報告している。

一部の研究ではイベルメクチンの有益性が確認されているが、他の研究では効果が確認されていない。

背景

スコット・マンテルさんは2023年にマウントサイナイ病院を訴えた。この訴訟は、「不法行為、過失または義務違反が原因で故人の死を引き起こした場合に、故人の代表者が訴訟を提起できる」とする法律に基づいている。

訴状によると、バックオさんは新型コロナ感染症の疑いでマウントサイナイ病院に入院したが、酸素補給を含む同病院の標準的な治療プロトコルでは症状は改善せず、最終的に人工呼吸器を装着した。

マンテルさんは代替治療法を調べ、イベルメクチンで治療した患者が回復したという記事を読み、Front Line Covid-19 Critical Care Allianceのコロナ治療プロトコルにイベルメクチンが含まれていることを知った。

マンテルさんはマウントサイナイ病院の医師たちに自分が学んだことを説明した。医師の一人であるロバート・クラーク氏は、「弾が尽きた」と言い、イベルメクチンがバックオ夫人を助けられるかもしれないと述べた。

クラーク医師は2021年4月7日に5日分の処方箋を書いた。しかし、マウントサイナイの薬剤部は処方を保留にし、病院のスチュワードシップ委員会は処方を取り消した。

マンテルさんはこの問題を裁判所に訴えた後、病院はバックオ夫人へのイベルメクチンの投与を直ちに開始するよう命じられた。

訴状によると、イベルメクチンで治療した後、バックオ夫人の症状は改善した。しかし、最初の処方が終わると彼女の回復は頭打ちになった。マンテルさんはクラーク医師のもとに戻り、クラーク医師はイベルメクチンがバックオ夫人の回復に役立ち、今後も改善を続けられると認めたという。マンテルさんに35日分のイベルメクチンが処方された。

しかし、病院側はその処方箋を再度取り消し、家族は法的な措置を講じることになった。裁判所は病院に、処方箋に従うよう命じた。

二度目のイベルメクチン投与により、バックオ夫人の状態は更に改善したが、病院側は処方を変更し、5日後に投与を中止した。クラーク医師はマンテルさんに、これ以上イベルメクチンの処方を行うことができない状況だと伝えた。

遺族によると、イベルメクチンの投与を止めた後、バックオさんの健康状態が急速に悪化し、2021年5月16日に亡くなった。

訴状によると、マウントサイナイ病院は「イベルメクチンが感染症の主治医によって処方されていたにもかかわらず、またイベルメクチン治療開始後、バックオさんの状態が著しく改善したことが医療記録に明確に記録されていたにもかかわらず、病院の標準的な治療プロトコルに反応しない重度のCOVID-19症状に苦しんでいたバックオさんへのイベルメクチン投与を繰り返し拒否し、医療過誤を犯した、あるいはその他不正かつ過失を犯した」

遺族は裁判所と陪審の判断により、適切な損害賠償を求めている。

遺族は募金活動の現場でこのように述べた。「この闘いは、デボラ(亡くなったバックオさん)や私たち遺族だけに関わることではなく、将来病院の治療が必要になる全てのアメリカ人のためのものだ。デボラに起きたような出来事は二度と起こってはいけない。そして、彼女の悲しい死に責任のある人たちは、その責任を果たすべきだ」

メリーランド州に拠点を置く大紀元のシニアリポーター。主に米国と世界のニュースを担当。