イーロン・マスク、バイデン政権の巨額赤字支出に警告

2024/05/07
更新: 2024/05/07

 

イーロン・マスク氏は、バイデン政権の巨額の財政赤字支出に警鐘を鳴らし、アメリカの国家債務の増加を遅らせる措置がとられない限り、米ドルは無価値になると警告した。

マスク氏はXに「国家債務を何とかしなければ、ドルの価値はゼロになる」と書き込んだ。

この発言は、H.R.マクマスター(退役軍人、ハドソン研究所)が、世界は第三次世界大戦の危機に瀕していると警告し、潜在的脅威に備えるために、国防費を倍増するよう呼びかけたという投稿に反応したものだ。

マスク氏は、人命の損失に歯止めをかけるため、ウクライナ紛争を交渉で終結させるよう繰り返し主張している。

例えば、2月にXでロン・ジョンソン上院議員と対談した際、マスク氏は、議員がアメリカのウクライナへの追加支援は、ただ血にまみれた膠着状態を延長しているだけで、戦争が終結する唯一の道は交渉を通じた解決だと指摘したことに対し、「その通りだ」と同意した。

ウクライナの戦争を終わらせることを主張する一方で、マスク氏はアメリカ政府の膨大な赤字支出に対しても繰り返し批判の声を上げている。

「過剰支出は止めるべきだ」

マスク氏はバイデン政権の巨額支出法案を繰り返し批判してきた。

例えば、マスク氏は2021年12月に、「常軌を逸した」連邦赤字に懸念を表明した。非営利の監視団体・責任ある連邦予算委員会によって10年間で赤字が1600億ドル(約24兆7185億円)増加すると見積もられた、費用が2兆ドル以上に上るバイデン大統領の「ビルド・バック・ベター」法案を「廃止するべき」と述べた。

最近では、マスク氏はアメリカの国債が膨れ上がることに対して、いずれはその代償を払わなければならなくなると警告している。(参考: 資本主義、金融システムそのものの限界点という識者もいる。仕組みを変えなければ、国債の膨張はとまらないのではないかというのである)

2月12日、彼はアメリカの34兆ドル(約5240兆円)の国債に対する利払いがすでに年間1兆ドル(約154兆円)程度であり、10年以内に年間3兆ドルに増加するという予測に反応した。「アメリカの国家債務の増加は持続不可能だ」とコメントした。3月、マスク氏は、34兆ドルの国債の利息を支払うためだけに、2024年2月の個人所得税全体のおよそ63%が必要であることを示す投稿に反応し、「過剰支出を止めなければ、アメリカは破綻する」と投稿した。

起業家のエド・クラッセンシュタイン氏は、マスク氏が5月4日に発した、手に負えない赤字支出を抑制する必要性についての警告に対し、長期的な解決策が短期的には経済に悪影響を及ぼす可能性があるため、どの政権も国債問題に真剣に取り組む意思がないと指摘した。

マスク氏は「何か手を打たないと。少なくとも借金の増加を遅らせるべきだ」と答えた。

参考: 

米国債の債務者は、米国政府財務省

国債の債権者:

  1. 米国内の年金: 約2.97兆ドル(約458兆8263億円)
  2. 米政府・州政府: 約2.17兆ドル)(約335兆1131億円)
  3. 米国内の金融機関: 約1.56兆ドル(約240兆8577億円)

米国連邦準備制度理事会 (FRB): 約1.34兆ドル(約150兆円)(但し、米年金セクターの保有額が5兆ドルという   データもある。さらに、国外保有残高もあり、日本と中国(本土)が最も多くの米国債を保有している。中国は約8689億ドル(約122兆円)の米国債を保有している。Copilotより

 

増税の可能性が高い

マスク氏と同じく、億万長者の投資家ウォーレン・バフェット氏も、赤字財政がもたらす「重大な影響」について警鐘を鳴らしている。しかし、バークシャー・ハサウェイの創業者は、いざとなれば、政府は支出を減らすよりも増税を選ぶだろうと予測した。

バフェット氏は、5月4日にネブラスカ州オマハで開かれたバークシャー・ハサウェイの年次株主総会で「税金が上がることは十分にあり得ると思う」と発言した。

「将来的に政府は、財政赤字を現在のように大きくすることを望まないと判断するかもしれない。その理由は、それが重大な影響を及ぼすからだ。そのため、支出を削減することを選ばず、私たちの所得からより大きな割合を徴収し、私たちがそれに応じて支払うことになるだろう」と述べた。

最近、議会予算局(CBO)が出した報告によると、アメリカの赤字支出は2023年に1.7兆ドル(約262兆円)に達し、国内総生産(GDP)の6.3%となった。同機関は、赤字支出が2054年までにGDPの8.5%に増加すると推定している。

参考(日本政府債務が国内総生産(GDP)に占める比率は263%という)

同時に、CBOは、1980年代にはGDPの約35%だったアメリカの国債対GDP比率が、2054年には166%に増加すると予測し、これがアメリカの財政および経済見通しに「重大なリスク」をもたらすと警告した。

ペンシルベニア大学のアナリストらは、債務の対GDP比が約200%に達すると、もはや引き返せない点に達し、将来いくら増税や歳出削減を行っても政府の債務不履行を防ぐことができなくなると推定している。

JPモルガン・チェースの最高経営責任者(CEO)ジェイミー・ダイモン氏は、アメリカのGDPに対して、いずれ「ホッケースティック(データが改ざんされていたのではないかという疑惑」のように急激に増加し、徐々に増えていた時期を経て持続不可能な状態になると予測している。

「専門家たちは単なる技術的なデフォルトの場合は、支払いが遅れる程度だが、今回のデフォルトはそれよりは深刻で、その影響はアメリカだけでなく世界経済にも広がる可能性がある」と述べた。

ペンシルベニア大学の研究者らは最も良いシナリオの場合では、分析者たちは、アメリカが債務増加の悪循環に対して、手に負えなくなる前に、是正策を施すためにはおよそ20年の猶予があると見積もっている。

国際通貨基金(IMF)もまた、バイデン政権の財政姿勢に警鐘を鳴らし、同政権の巨額の財政赤字支出と膨張する公的債務がインフレを引き起こし、場合によっては金融混乱を引き起こす恐れがあると警告している。

 

The Epoch Times上級記者。ジャーナリズム、マーケティング、コミュニケーション等の分野に精通している。