アメリカ下院はウクライナ、イスラエル、台湾への支援などを盛り込んだ総額950億ドル(約14兆6000億円)の緊急補正予算案の審議規則案を賛成多数で可決した。
マイク・ジョンソン下院議長が中国共産党首魁の習近平、ロシアのプーチン大統領、そしてイランを「悪の枢軸」と呼んだことに対し、在米中国共産党大使館の報道官はメディアの取材で不満を示した。在米大使館の劉鵬宇報道官は「ニューズウィーク」に、断固として反対し、アメリカの一部の人々の習近平に対する誤った発言に「強く抗議する」と述べ、「米国に対して厳正な抗議を行った」と明らかにした。
以前から米国シンクタンクの専門家は、中国共産党がアメリカにとって最大の敵であり、中国、ロシア、北朝鮮、イランによる新たな悪の枢軸が形成されていると指摘している。
ジョンソン氏は4月17日の記者会見で、以前から保留されていた総額950億ドル(約14兆円)の援助法案について言及し、20日の夜に、ウクライナ、イスラエル、インド太平洋地域への支援に関する投票を行うと述べた。
米国元国防長官室の戦略官であり、中央情報局(CIA)で務めていたマシュー・クローニグ氏は3月のセミナーで、トランプ政権の時からアメリカは中国共産党とロシアが最大の脅威であると認識していると述べた。
昨年の10月、米上院共和党トップを務めたミッチ・マコーネル氏も中国共産党、ロシア、イランを新たな悪の枢軸として位置づけた。
ジョンソン議長は、「私たちが受けた報告を踏まえ、習近平、プーチン氏、そしてイランはまさに悪の枢軸だと信じている。彼らはこの問題において一致団結していると思っている」と述べた。
また、プーチン氏がヨーロッパへの侵攻を続け、バルカン半島への関与を深める可能性があると見ており、「ポーランドやNATOの同盟国との対立に発展するかもしれない」と指摘した。
議長は、ロウ戦争にどう対応するかについて、個人的な見解を公に語っている。
「率直に言って、私はウクライナに弾薬を送る方が、アメリカの若者たちを戦地に送るよりも望ましいと思う。私の息子も今年秋に海軍兵学校で勉強を始めるが、これは私にとっても、多くのアメリカの家庭にとっても、現実の戦いです」と語った。
約14兆円の包括的援助計画
4月19日、下院が進めた950億ドル(約14兆円)規模のパッケージには、ウクライナ、イスラエル、そして台湾を含むインド太平洋地域への支援のほかに、TikTokを米国の会社に売却しなければ米国で禁止される条項も盛り込まれている。採決は316対94で可決され、民主党員165名、共和党員151名がこの包括的な計画を支持している。
議長の決定は、一部の保守派共和党員の怒りを買った。彼らは、現在前線で弾薬不足に直面しているウクライナへの新たな支援は、全てアメリカとメキシコの国境の安全性を高めることと連動すべきだと主張している。
現在、共和党の2名の議員がジョンソン議長の辞任を求めている。
ジョージア州選出の共和党下院議員マージョリー・グリーン氏は先月、ジョンソン議長を解任する決議案を提出し、ケンタッキー州の下院議員トマス・マッシー氏もこれを支持した。
トランプ前大統領は4月12日にマール・ア・ラーゴでの記者会見でジョンソン議長と共に登壇し、「議長を支持する」と公言した。
共和党が下院で僅差の多数派を占めている(218対213)状況を踏まえると、これらの法案の成否やジョンソン議長の地位は、民主党議員の支持に左右される可能性が高まっている。
バイデン大統領はウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿したコラムで、ウクライナとイスラエルをアメリカの支援が不可欠な同盟国として言及し、「両国は自らの主権を守る能力はあるものの、アメリカからの支援、特に軍事援助が必要である。今がその決定的な時期である」と強調した。
ジョンソン議長は記者団に対し、議会は援助資金に関して政治的な駆け引きをしてはならないと述べ、自身が個人的なリスクを負うことも辞さないと語り、「私たちは正しい行動を取るべきであり、その選択は歴史によって評価されるだろう」と述べた。
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