中国人の米国密入国を取り締まる中共 海外旅行には厳しい規制

2024/02/20
更新: 2024/02/20

新型コロナウイルス(私たち大紀元グループは「中共ウイルス」と呼んでいる)の流行以降、中国国民が国内の厳しい状況に耐えかねて、中国本土から海外へ脱出する事に関する報道が増え続けている。

最近、中国では、海外旅行を厳しく制限する動きが活発になっていると言われている。大紀元にインタビューを受けた複数の人々が、中共(中国共産党)政府が国民の海外脱出を抑制するために出国審査を強化しており、中には税関で拘束される人もいると話した。

海外メディアが大々的に報じている中国人の米国密入国、いわゆる「走線」について、中国本土のメディアは一切報じていない。記者が中国版TikTok「抖音」で走線と検索してみたところ、否定的な内容の動画がほとんどだった。

その中には、当局がミャンマーの詐欺センターを摘発した次には「走線」の取り締まりが来るという動画もあった。またTikTokで「走線」と漢字で検索しても、関連動画はもう見つからかなった。

海外旅行者を密かに調査

中国人の密入国ルートは複数ある。多くの欧州諸国を自由に旅行できるシェンゲンビザ(シェンゲン協定加盟国内であれば訪問国ごとにビザを取得する必要がなく、自由に往来出来るというビザ)や日本のビザを使ってメキシコに入国したり、韓国のビザ免除を利用してパナマに入国したり、ビザ申請代行によってメキシコビザを直接取得し、最短ルートで米国に行くなどがある。

その他にも、まずタイに行き、そこからトルコ経由でエクアドルに向かう人々や、香港からトルコへ行く人もいる。

タイでビジネスをしている陸さんは大紀元に、中国(中共)が出国管理を強化しているともらした。団体旅行で出国すれば問題なく、余計な質問をされることもないが、個人旅行の場合、なぜタイに行くのかと長時間にわたって尋問される可能性が高いという。

「当局は、タイに行った後、そこからトルコ、南米、米国へ行くのではないかと心配している。成都市、洛陽市などから来た人全員が、個人旅行だったため、出国時に尋問されたと私に話した。最短で25分間尋問を受けた」

陸さんは、税関がこのように尋問するのは、上層部から何らかの指示があって、出国の目的を厳しくチェックするよう要求されているに違いないと分析した。

密航で米国に入国したばかりの張さんは大紀元に対し、昨年9月に出国した時は、制限を受けることはなかった。しかし12月にタイでバンコクからトルコ行きのチケットを購入した際に、空港の掲示板に多くの中国便がキャンセルされているのを目にした。

昨年米国に密入国した魏さんは、自分は偶然にも出国の際に特に何もなかったと語った。「自分は順調だった。税関の職員が私が国内でモーターバイク旅行をしていたことを知り、私のスマホをチェックし、写真アルバムを見た。旅の途中で撮ったたくさんの写真があったので、それを見て信じてくれ、すぐに通してくれた」

しかし、一緒に出国しようとした友人は、税関で止められてしまった。その友人が後で魏さんに話したところによると、税関でパスポートを提示した瞬間、彼はすぐに「小さな黒い部屋」に連れて行かれ、エクアドルについてどれほど知っているかを直接問われたそうだ。

「彼が港に着く前から、税関職員は彼がどこへ行くのかを知っていて、待ち伏せしていた。その情報はどうやって知ったのか。税関は、WeChatでのチャット履歴や、彼が最近頻繁に航空券を検索していたということから、友人が密入国をしようとしている事がわかった」と魏さんは述べた。

その後、魏さんは他の友人の話から、出国は一般に難しく、長時間の尋問を受けることが多かったと聞いた。15~30分、場合によっては1時間も「小さな黒い部屋」で尋問されることもあるという。

荷物検査を受け、持ち物一つ一つの用途を説明しなければならないこともあり、逃げるかもしれないと疑われると、出国を許可されないこともある。

魏さんの多くの知り合いは、現在国内の出入国は厳しくなっていると話している。

資産運用会社の元チーフ・コンプライアンス・オフィサーである梁少華氏は、「私が知っている限り、国外に出かける人は皆、出国の目的、期間とか、あれこれ質問される。 出国する人全員が聞かれたかどうかはわからないが、何人か聞かれた人に会った」と述べた。

同氏によると、以前中国本土では、誰もがパスポートを申請できたが、今はそうではないようだ。

梁少華氏は「最近のことではなく、この2年間はこのような状態だ。私の知り合いが(政府は)パスポートを更新してくれないと明かした。更新しないと明言したわけではなく、ただ、今はパスポートを使わないとか、理由を作って更新してくれない」と語る。

出国規制が強化されているに違いない。人々を出国させない。中国共産党の常套手段だ。出国禁止と明言しないが、このような種類は発表しない。実際に海外に渡航した場合、様々な妨害を受ける。北朝鮮のように、国民を海外には行かせない」

福建省、米国密入国を狙う者を取締り

最近、ソーシャルメディアでは、福建省連江県が「密入国」行動を重点的に取り締まる準備をしている写真が出回っている。

その写真には「連江県米国へ密入国する行為の是正措置及び不正関連要人管理業務配置会議」と書かれている。

福建省の呉さんは大紀元に、連江県での取り締まりは実際に行われており、「逮捕される上に罰金を払わされる。密入国を斡旋する組織のメンバーは財産を失うほどの罰金を科される」と話した。

呉さんによると、連江県は海外に家族を持つ人が多い地域で、長年にわたり密航が多発している。3年間のゼロコロナ政策の後、多くの人が密航ルートで海外に逃げた。

連江県の李さんは、最近は特に厳しい措置が取られていると語った。これは、(中国)共産党が面子を損なうことを恐れ、上層部からの強い圧力があるためだろう。現在、逮捕された(密航)者には刑罰が科されるようになっている。

「全ての人が厳しく監視され、海外旅行のフリープランが難しくなっている。外が危険とか、特に周辺国では詐欺や臓器売買などが起きている事を理由に出国を阻んでいる。教師たちは今、パスポートを提出するよう命じられていると聞いている」

李さんは、特に連江県は注目されている地域で、一つの村からは数千人が海外に逃げてしまったと話す。李さんの村からも何百人もの人が出て行った。

李さんは「他の地域は状況がそれほど厳しくないが、今は出国が以前ほど容易ではない」と話した。

出国規制にかかわらず 密航者右肩上がり

現在の中国人の考えは、「卷(過度で悪質な競争に適応する)」「韭(搾取されるもの)」「躺(寝そべり、抵抗を放棄する)」「潤(海外に逃げる)」の四つのキーワードで語られている。

特に、中国大陸でのビジネス、家庭、社会的なつながりが深い中産階級にとって、将来の見通しが全く立たず、現状に耐えられない状況でない限り、簡単に中国を離れることはしないだろう。

米国税関と国境警備局によると、2023年財政年度(2022年10月1日~2023年9月30日)にメキシコ北部から米国に不法入国した中国人の数は2万4千人以上に急増した。

しかし2023年10月から12月までの3か月間、10月が4261人、11月が4797人、12月が5980人と各月に不法入国した中国人の数はますます増加し続け、4万2千人に達した。 

米国CBSの報道によると、多くの中国人移民は、抑圧的な政治情勢と低迷し続ける中国経済から逃れるために密航を選んだという。 ある女性は、経済的な理由だけでなく、「自由」のためだと語った。

陸さんは大紀元に対し、中国共産党は移民の増加を望んでいないことは確かだが、多くの制約があるため、すぐに国を閉鎖することはできないと語った。 例えば、出国する人を一人ずつ尋問し、様々な妨害を作り出すことは、非常にコストがかかり、困難だ。

習近平が中共のトップに就任して以来、中共は出国を制限する法律の範囲を拡大し、法的根拠が不足しているにもかかわらず、中国国民および外国人の出国を制限してきた。

人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」(Safeguard Defenders)は昨年5月に、中国(中共)がますます多くの人々の出国を阻止していると報告している。2018年以降、中共政権は5つの新しい法律または改正法を通過させ、出国制限を実施する能力を拡大した。現在、出国を制限する法律は合計で15に達している。

同報告によると、2016~20年の間に、中共最高法院の法律データベースで出国禁止の判例が8倍に増加したとされている。

当局がいわゆる「国家安全保障」統制を強化し続けるなか、2021年以降、国有企業や公務員に対する制限が拡大され、国外渡航の禁止、海外渡航頻度や滞在期間の制限、煩雑な承認プロセスなどが行われている。

「海外渡航の制限は、中共が人々の生活のあらゆる側面に対する統制を強化するために用いる多くの手段のひとつとなっている」と報告書は指摘した。

宋唐
易如