「春晩(春節連歓晩会)」とは、旧暦大晦日の夜から放送する中国中央電視台(CCTV)の年越しの歌番組である。今年は2月9日の夜から旧暦元旦(2月10日)の年明けまで、5時間以上にわたって放送された。
日本メディアは、これを「中国版のNHK紅白歌合戦」などと呼んでいる。しかし、実際には日本の紅白とは大違いで、その内容や演出はひたすら中国共産党を賛美し、宣伝する政治的意図に満ちているのだ。
「正常な人間は、あんなもの見ない」
「今年の春晩の平均視聴率は30%を超えた」と、中共の官製メディアはいう。しかし、これを鵜呑みにする中国の庶民は、ほとんどいない。
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)がツイッター(現X)で実施した調査の結果、7割近い回答者が「春晩など見ていない」と答えている。
「春晩を見た」と答えた回答者のなかでも、「あれは好きじゃない」という人は25%を占める。「好き」と答えた人は、6%以下だった。
(米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)がツイッター(現X)で実施した調査結果)
「春晩を見ない理由」について、調査の結果は、なかなか辛辣で明確であった。
「正常な人間だったら、あんな洗脳番組など見るもんか」「あれは党員しか見ない」「あれは共産党の偉い人向けのものだ。庶民が見るものではない」「死ぬほど退屈だから見ない」などとなっている。
放送時間は5時間以上に及んだ今年の春晩も、相変わらずその内容のほとんどが中国共産党による洗脳プロパガンダばかりだった。
「党の命令に従います」が表すものは何か?
ただ今年の「春晩」は、過去になかった軍事的なパフォーマンスのシーンもあり、物議を醸している。
なんと、北京に駐屯する装甲部隊「第66477部隊」から完全武装の大集団が会場に来た。兵士たちは銃を手にしてステージに上がり、一糸乱れぬ動きを見せたばかりか、ものすごい形相で「党の命令に従います!(聴党指揮)」と叫んだ。
このステージパフォーマンスのために、身長のそろった見映えの良い兵士を選抜し、さぞや軍隊式の猛訓練を重ねたであろうことが想像される。
それにしても、この新年の祝賀にふさわしくない異様な光景は、各方面を驚愕させることになった。
この「軍事パフォーマンス」のシーンをめぐり、ツイッター上では、称賛どころか嘲笑の嵐が巻き起こった。
「軍隊まで春晩の舞台に上らせたとは、共産党は何を恐れているのか」
「中共の上層部は、パニック状態に陥っているのか」
また、日本在住のある中国人識者は、軍隊の兵士を「春晩」のステージに上げて、一糸乱れぬ動きを披露し「党の命令に従います!(聴党指揮)」と叫ばせたことについて、「それだけ今の中共軍内部の指揮系統が乱れており、党の命令に従わない可能性が高くなっていることを如実に表している。その引き締めを狙ったパフォーマンスだろう」と述べた。
不快になるのは「全てがウソだから」
RFAの調査に関連して、Angelaさん(26歳、女性)は今年の「春晩」について以下のように評している。
「近年の春晩は退屈で、ぎこちなく、創意もない。ジョークが面白くないばかりか、プロパガンダも濃厚だ。若者に対して、子供を産むよう暗に促しているのが耐えられない。新年早々、お説教されたくないわ」
また、中国人ジャーナリストの王剣氏も、RFAに対して「中国がゆく強国の道や、経済的成果を誇示するような春晩の洗脳宣伝は、人々を不快感をもたらしている。その理由は、それが全て嘘だからだ」と評している。
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