「世界はあなたを見捨てない!」 鎖の女性を救え、中共領事館前で抗議=ロサンゼルス

2024/02/01
更新: 2024/02/01

首に鉄の鎖が巻かれ、自由を奪われ続けた「鎖の女性」が中国で発見されてから2年が経つ。いまやこの女性は「中国の女性の苦難」を象徴するシンボルとなった。

1月27日、米ロサンゼルスの中共領事館前で、数十人の華人が「鉄の鎖の女性を忘れない」をテーマとした抗議集会を行い、鉄の鎖の女性と同じように、中共の中国で虐待される女性や社会的弱者のために声を上げた。

「これは個別の事件ではない」

米国在住の著名な人権活動家・界立建氏は、今回の抗議活動の発起人でもある。

「鉄の鎖の女性の事件は、個別の事件ではない。それは中国の政治体制下における集団的な傷害事件だ。あるいは、人権災難事件とも言えるだろう。中国にいれば、明日は誰でも鉄の鎖の女性になるかもしれないのだ」

「私たちは、鉄の鎖の女のことを忘れていない。それと同時に、中国共産党政権という人権迫害の元凶も忘れない」と界氏は語る。

(界立建氏のSNSに投稿された抗議集会の様子。首に鎖を巻いた女性もいる)

武漢出身で現在はロサンゼルスに住む岳連慶氏は、こう語った。

「実際、中国には、鎖につながれた女性と同じように苦しんでいる女性は無数にいる。鎖につながれた女性は外部に知られたが、それは氷山の一角でしかない。中国では、女性の人身売買だけでなく、『一人っ子政策』の時も(強制堕胎などで)多くの女性が迫害されて命を落としている」

民主活動家の鄭濤氏は、「生命や自由、尊厳が守られること、これは人間としての基本的人権だ。しかし、中国共産党支配下の中国では、中国人には人権がない。私たちは皆、中国から来た人間だ。だから、そのことをよく知っている。中共から見れば、私たちはただの奴隷に過ぎない」と語った。

この日、領事館前に集まった華人たちは、中共体制による女性への迫害や人身売買業者による女性の拉致を再現する寸劇を演じた。彼らは「中国で迫害を受けている人たちのことを、知ってほしい」と社会に呼び掛けた。

「この世界は、私を捨てた」 

この「鉄の鎖の女性」事件とは、江蘇省徐州市の農村で2022年1月下旬、少女の頃に拉致され、この地まで人身売買されてきたと見られる中年女性が発見された事件である。

ボランティアの人権団体に発見された当時、女性は首に鎖が巻かれた状態で、氷点下に冷え込んだ、離れの小屋に監禁されていた。

女性は、8人(またはそれ以上)の子供を「生まされた」だけでなく、夫の了解または黙認のうえで、地元政府の複数の役人に凌辱されたと見られている。

(「鉄の鎖の女性」が発見された当時の様子を捉えた動画)

当時は「一人っ子政策」のもと、名目上は産児数が制限されていた。多産を役所に見逃してもらうためには高額の賄賂が不可欠であるが、そのような金をもつはずもない夫は、代価として自分の妻を役人へ「貸した」可能性が濃厚だからである。

そうした想像を絶する虐待のなかで、この女性は、精神に異常をきたしてしまった。

ボランティア団体が彼女を発見したときに撮られた動画のなかでこの女性は「这个世界不要俺了」と訴えていた。邦訳すると「この世界は私を捨てた」となる。

あまりにもひどい虐待のなかで、ついに精神を病んでしまった彼女の口から出たこの言葉に、多くの人は衝撃を受けるとともに、彼女を助けてあげられなかったことに心を痛めた。

当時、ネット上では「世界は、あなたを捨てていない」と書かれたカードを写真に撮り、SNSなどに投稿することがブームにもなった。

しかし、こうした人々の声援は、おそらく今も彼女には届いていない。

在米の彫刻家・陳維明氏が製作した「鉄の鎖の女性」の彫像。首に鎖が巻かれ、光を失った目で悲しそうに立つ女性の像の背後には、それを押しつぶすように巨大な「中国」の文字がある。(同氏のツイッターより)

昨年4月、江蘇省徐州市中級人民法院(地裁)は「鎖の女性」を不当に拘束し虐待した夫に懲役9年の刑、女性の誘拐に関わった5人にもそれぞれ懲役8年~13年の刑を言い渡した。そうすることで「この事件は、正式にピリオドが打たれた」とされた。

しかし、女性の本当の身元については今も論争が続いており、当局が主張する女性の身元を疑問視する声が民間では根強い。

救出された女性は、事件が明るみに出た後も、当局によって精神病院に軟禁されていると見られている。「順調に回復している」という趣旨の発表はあったが、当局が本人に真実を語らせることはしていない。彼女は今も、外界と隔絶されたままなのだ。

広がる連帯の輪「鎖の女性を探そう」

2024年1月29日、米ロサンゼルスの路上で「鉄の鎖の女性を探そう」と自らの首に鎖を巻きつけて、道行く人に鉄の鎖の女性の事件を紹介するパネルを見せる支援者の女性の姿があった。

この女性は、自身のSNSにこう書いた。「ある人は莫言(著名な中国人作家、2012年ノーベル文学賞受賞、中共党員)にこう尋ねました:人の死後には、本当に地獄があるのでしょうか?」「莫言はこう答えた:死ななくても、地獄を見ることはできる」

少女のころに拉致された女性は、生きたまま、この世の地獄を見せられた。

その地獄とは、中国共産党の中国にある生き地獄であり、その被害者こそ「鉄の鎖の女性」である。まだ救われていない同様の被害者は、今も中国に、無数にいると見てよい。

(自らの首に鎖を巻きつけて、道行く人に鉄の鎖の女性の事件を紹介するパネルを見せる支援者の女性)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。