プレミアム報道 トランプ氏の予備選での記録的勝利を受け、世界の指導者らに不安広がる

【プレミアム報道】トランプ大統領復活を世界秩序への脅威と見なす、ダボス会議のエリートたち(下)

2024/01/26
更新: 2024/01/26

トランプ前大統領のダボス会議での演説

トランプ前大統領は任期中、2018年と20年の2度、ダボス会議に出席した。2020年の基調講演では、保護主義的な貿易政策と世界最大の石油・ガス産出国としての米国の地位を誇示した。

また、トランプ氏は、気候変動に対する懐疑論を公然と表明し、「アラーミスト(大げさに警戒する人)」や「急進的な社会主義者」を非難した。

「繰り返し現れる破滅の予言者や、彼らが残す終末の予言を、私たちは拒絶しなければならない。彼らのような愚かな占い師は、昔からいる」

トランプ氏はさらに、60年代には人口過剰危機、70年代には大量飢餓、90年代には石油の終焉などの誤った予測が立てられた歴史上の事例を強調し、それらが執拗に権力を追い求める「アラーミスト」の仕業であるとした。

「アラーミストの要求はいつも同じ。私たちの生活のあらゆる面を支配し、変革し、管理する絶対的な力だ。私たちは、急進的な社会主義者に経済を破壊させ、国を荒廃させ、自由を根絶させるようなことは決してしない」

彼のスピーチは様々な反響を呼んだが、特に一部のエリートを、とりわけ、世界経済フォーラムの創設者兼エグゼクティブ・チェアマンのクラウス・シュワブ氏を激怒させた。

炎上する世界経済フォーラム

シュワブ氏はスイスの経済学者で、1971年にステークホルダー資本主義を推進する目的で世界経済フォーラム(WEF)を設立した。ステークホルダー資本主義は、企業が株主のみならず、すべてのステークホルダー(利害関係者)の利益に奉仕することを提唱している。

WEFは長年にわたり発展を遂げ、世界的に認知された対話の場となった。気候危機、貧困、富の不平等、食糧安全保障、パンデミックなど、WEFが差し迫った世界的課題と見なす問題に焦点を当て、官民が一堂に会する。

しかし近年では、WEFが批判にさらされることが増えており、彼らの議論が一般市民の苦難を解決しうるのか、といった疑問が投げかけられている。

出席者がプライベート・ジェットを使用しておきながら、気候危機を重要なトピックとしているのは偽善だとして、ダボス会議は非難を浴びている。さらに、人権記録に疑問のある人物を招待していることから、信頼性に懸念が持たれている。

政治アナリストで米共和党のストラテジストのフォード・オコネル氏は、ダボス会議に参加する世界のエリートらは、米国の労働者が経験する苦難など気にも留めていないと指摘する。

2024年1月17日、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会でのスピーチを終え、メディアに囲まれるアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領(Fabrice Coffrini/AFP via Getty Images)

「ほとんどのグローバル・エリートが米国の繁栄や労働者の苦難に無関心なのは明らかだ」と、オコネル氏はエポックタイムズ に語った。

「彼らの見解は、毎月の給料を使いきるような生活をしている平凡な米国人にはほとんど関係がない。来たる2024年の大統領選挙において、米国の有権者に与える影響はほとんどないだろう」

民間機を利用してダボス会議に出席したアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は、基調講演で同会議の「社会主義」アジェンダを公然と批判した。

「本日は、西側世界が危機に瀕していることを伝えたいと思う。西側の価値観を守らなければならないはずの人々が、社会主義、ひいては貧困へと不可避的につながる世界像に取り込まれているのだ」

ワシントンの保守系シンクタンク、ヘリテージ財団のケビン・ロバーツ会長も、18日にダボスで行われたパネルディスカッションでWEFのアジェンダを批判し、将来の共和党政権に対し、WEFの提案をすべて拒否するよう求めた。

「悪く思わないで欲しいのだが、私がダボス会議に出席したのは、この会場にいる多くの人たちや見ている人たちに、あなた方が問題の一部であると説明するためだ」とロバーツ氏は語った。

ロバーツ氏はトランプ前大統領を擁護し、世界のエリートたちが不法移民、気候危機、治安などの問題について、一般市民に誤った情報を流していると主張した。

アイオワ州での圧勝を受けて

米共和党の大統領候補指名争いの初戦である15日のアイオワ州党員集会でのトランプ氏の圧勝は、予想外のものではなかったが、それでも国内外で大きな注目を集めた。

2024年1月15日、アイオワ州デモインで行われたアイオワ州共和党大統領選挙の観戦パーティーで祝杯をあげるドナルド・トランプ前大統領の支持者たち(Jim Watson/AFP via Getty Images)

「トランプ氏はアイオワ州党員集会で歴史的かつ決定的な勝利を収め、共和党候補者の最大勝率の記録を塗り替えた。投票開始からわずか31分後に決着したことは、トランプ氏の勝利の力強さを際立たせた」とオコネル氏は述べた。

しかし、アル・ゴア元副大統領は、この結果の重要性を強調しすぎないよう注意を促した。2000年に惜しくも大統領選で落選したゴア氏は、ダボス会議でブルームバーグの取材に応じ、選挙ではサプライズが起こりうることを強調した。

「例はたくさんある。前回の2016年、テッド・クルーズ氏がアイオワ州党員集会で勝利したが、それは全く問題ではなかった。共和党のアイオワ州党員集会で勝利した後に姿を消した人たちの姿を、私たちは見てきた」

「今年は大きなサプライズの年になるかもしれない。そうであってほしい 。彼が指名を勝ち取り、再選するのを見たくないからだ」

Emel Akan
エポックタイムズのホワイトハウス上級特派員、バイデン政権担当記者。トランプ政権時は経済政策を担当。以前はJPモルガンの金融部門に勤務。ジョージタウン大学で経営学の修士号を取得している。