北京地下鉄事故 続報 原因追及の声止まず 中国製「信号保安システム」の不具合か

2023/12/16
更新: 2023/12/16

中国北京の郊外で14日夜、地上部分を走る地下鉄の車両が追突、脱線する大規模な事故が発生した。負傷した乗客515人が病院に搬送されたが、このうち102人が骨折したと発表されている。死者は出ていないという。

市交通当局は15日、初期の調査結果として「現場は下り坂であったこともあり、雪の影響で滑ってブレーキが正常に作動しなかったことが原因である」との見方を示している。

当局の調査チームは地下鉄の制御システムなどについて詳しく調べているなか、ネット上には専門家とみられる人物による以下のような指摘が注目を集めている。

「追突事故を引き起こす可能性のある問題は、ただ1つ。それはCBTC(無線列車制御システム)の故障だ。事故があった昌平線のCBTCは中国製だった」

「雪」や「下り坂」に責任を転嫁する当局発表を鵜呑みにしない多くの中国人ユーザーは、SNSなどで事故原因について熱い議論を繰り広げている。なかでも「国産の制御システムは、やっぱりだめだ」という声が広がっている。

CBTCシステム」は、列車の安全・安定運行を制御するために無線通信技術を利用する信号保安システムの一つである。

現在、中国の地下鉄路線のほとんどは依然として外国製CBTCシステムに依存しているが、今回事故があった北京地下鉄の『昌平線』は数少ない例外の1つであり、中国製のCBTCが使われている。

中国製CBTCシステムに関しては、以前、官製メディアが「我が国の地下鉄CBTCシステムに対する外国企業の独占の終焉だ」などと大々的に宣伝していた。

官製メディアが大絶賛する国産のCBTCシステムを製造した中国企業「北京交控科技有限公司」は2009年12月に設立されたもので、10年余りしか経っていない企業である。

近年、中国の航空宇宙、航空機、鉄道などにおいて事故が多発している。事故が絶えない理由について、普遍的な世論の見解は以下の2点に集約される。1つは、外国の先端技術やチップなどの主要部品が手に入らないこと。もう1つは、財政的な緊張がもたらす設備メンテナンスへの怠りである。

事故の前、北京市の地下鉄運営企業は「会社は深刻な赤字だ」と明かしている。公表された同社のデータによると、昨年の運営コスト約123億元のうち、人件費が60億元であるのに対して、セキュリティ検査にかける費用は13億元だった。

この内訳発表をうけ、ネット上では「赤字だ」と泣き言をいう北京市地下鉄に対し、市民からは「全く同情できないね。お金は、全て市民の監視に使ってるのだろう」といった非難の声が広がっていた。

最近、ある北京市民は、SNSに投稿した自撮り動画のなかで、「北京市地下鉄が赤字なのは、当たり前だ!」と指摘している。

北京の地下鉄の出口1つに、7台もセキュリティチェック設備がある。市内の地下鉄駅の警備員の数は、控えめに見積もっても5.5万人はいるそうだ。

セキュリティチェックを優先するあまり、公共交通の基本である安全運行への注意がおろそかになっているとすれば、まさに本末転倒である。

今回の事故に寄せる市民の関心の高さは、そうした不信感に根差している。

 

北京のある地下鉄出口の様子。セキュリティチェックが異常に多い。(SNS投稿)

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李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。