【独占取材】中共、ソロモン諸島への浸透加速 議員「国内で混乱と分断広がる」

2023/11/03
更新: 2023/11/04

南太平洋ソロモン諸島の主要人物が「ソロモン諸島への中国共産党(中共)の浸透がますます加速している」と警告した。

ソロモン諸島の国会議員で外交委員会委員長のピーター・ケニロレア・ジュニア氏は最近、エポックタイムズの独占インタビューでこのように語った。

彼は「2019年、親中傾向の強いマナシ・ソガバレ首相が再び政権を握った後、中国の浸透がさらに加速した」とし、「現在、ソロモン諸島は親中と反中世論に分かれ、社会的混乱と分裂が深まっている」と明らかにした。

また、「これは単に政府レベルの問題にとどまらない。ソロモン諸島の国民にまで実際の影響を及ぼしている」とし、「ソロモン諸島ではこのような現象を『Switch(転換)』と呼んでいる」と付け加えた。

彼が言う「転換」とは、ソガバレ首相が主導した親中外交への転換を意味する。ソガバレ首相は2019年の政権発足後、台湾と断交し、中国と緊密な外交関係を結んだ。

昨年は中国と安全保障協定を締結し、有事の際に中国がソロモン諸島に軍隊を派遣できるようにした。これは米中間の南太平洋競争を引き起こすきっかけになった。

ソロモン諸島に対する中国共産党の影響力

ケニロレア議員は、インタビューに先立ち、米下院「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中共特委)のマイク・ギャラガー委員長(共和党・ウィスコンシン州)と会談した。

ケニロレア議員は「ギャラガー委員長と『中国共産党の浸透』に関する深い話をし、米国がソロモン諸島に積極的に介入することで、親中感情の広がりを阻止してほしいという希望を彼に伝えた」と明かした。

そして、「ソガバレ政権が中国との関係をさらに強化している状況で、私は米国に希望を抱いている」と伝えた。

しかし、ソロモン諸島に対する中国の影響力は手に負えないほど大きくなっている。ソガバレ政権は先日、中国と戦略的パートナーシップを構築したと発表した。

さらに昨年、中国の通信機器メーカーのファーウェイとソロモン諸島内に161か所の通信基地局を設置する契約を締結した。設置費用約6600万ドル(約36億7千万円)は中国輸出入銀行が融資することになった。

これに対し、ケニロレア議員は「ソロモン諸島が中国が設置した『債務トラップ』に陥ったようなものだ」と指摘した。

また「私は一貫したメッセージをしっかりと伝えてきた」とし、「ソガバレ政権はそうするべきではなかった」と話した。

ソガバレ政権の親中路線に警鐘を鳴らしたのはケニロレア議員が初めてではない。 しかし、過去にソガバレ政権に批判的な声を上げた人物はほとんど政治的報復の犠牲になった。

2023年2月までソロモン諸島マライタ州首相を務めたダニエル・スイダニ氏は、ソガバレ政権の強力な親中政策に反対した代表的な野党の人物だった。

ところが当時、マライタ州議会は何らかの理由でスイダニ州首相に対する不信任投票を行い、州議員は満場一致で彼の解任を可決した。

これに関して、スイダニ元州首相はエポックタイムズに「私の追放を推進した政府関係者が中国共産党から賄賂を受け取ったことが確認された」と暴露した。

また、中国政権と密接な関係を持つとされるソロモン諸島のジャーナリスト、アルフレッド・ササコは、「スイダニ元首相が反乱を助長し、アメリカ人と会いソガバレ首相の暗殺を企てた」という内容の記事を掲載した。

この記事の唯一の根拠は匿名の情報筋の証言だけだったが、スイダニ元州首相に対する政治的報復を正当化するために使われた。

ケニロレア議員は「私にも同様のことが起こっている。中国から支援を受けているソロモン諸島の利害関係者が私の評判を傷つけ、連任を阻止するために動いている」と告発した。

米国への牽制

ジョー・バイデン政権は、中国の影響力拡大を牽制するための「インド太平洋戦略」を公開し、太平洋諸島諸国との連帯と協力を強調した。

しかし、中国共産党の支援を受けるソロモン諸島のソガバレ政権はこれを拒否しているようだ。さらに、ソガバレ政権は国際舞台で「インド太平洋」という概念の価値を損なおうとしている。

ケニロレア議員は「ソガバレ首相は『インド太平洋』という言葉そのものを嫌っている。公共文書でもできるだけその言葉を使わないようにしている」と説明した。

また、「ソガバレ首相をはじめとするソロモン諸島の政治家は、『インド太平洋』の概念に込められた真の意味を理解する必要がある」と述べた。

*内容を一部修正しました。

エポックタイムズ特派員。専門は安全保障と軍事。ノリッジ大学で軍事史の修士号を取得。