オピニオン ビル・ゲイツは森を間引き、樹木を埋めて炭素を吸収する計画に投資しているが、ある生態学者、これは「とてつもなく悪い考えだ」

気候変動活動家、樹木を間伐して埋めて地球を救っている(1)

2023/10/20
更新: 2023/10/21

山火事に対処するために木を切り倒すことは新しいことではないが、今でも激しく議論されている。

木の間引き、間伐は環境コミュニティ内でも賛否両論の手法だ。多くの科学者、研究者、保護活動家が反対しており、彼らは木の間引きは山火事を悪化させる可能性さえあると主張している。

しかし、米国の森林は、火災管理のために20年以上にわたって伐採されてきた。現在、気候活動家たちは間伐材の「炭素回収」論を持ち出している。

Microsoftの共同創業者であるビル・ゲイツ氏などの活動家たちは、炭素排出に対する懸念を解消するために木を切り倒し、地中に埋める活動を支持しており、資金援助もしてきた。

創業初期の起業家へ投資をしている多くのシード投資家はファンド「Breakthrough Energy Ventures」を通じて、カリフォルニアの火災に悩む森林から木を取り除き、ネバダに埋めて二酸化炭素(CO2)を隔離する提案を行うスタートアップ、Kodama Systems(コダマ・システムズ)を支えている。ゲイツ氏はそのうちの一人だ。

同社のウェブサイトには「森林の間伐処理を大幅に加速させなければならない」と書かれている。コダマ・システムズはこれを「テクノロジー主導のフルスタックの森林再生サービス」と称している。

ゲイツ氏は気候に関する懸念に対処するために、広大な米国の農地を買収するなど、その行動が注目されている。また、太陽地球工学などの野心的な実験を支持し、最近ではCO2を削減する有効な手段として樹木の植樹を批判する発言もしていた。

またゲイツ氏は、気候変動への懸念に対処する方法を見つけ出すことでもよく知られている。例えば、広大な農地を買い占め、太陽地球工学などのような荒唐無稽な実験を支援し、そして最近では、彼はCO2削減の実行可能な手段として植林を批判している。

2021年9月のニューヨーク・タイムズの気候サミットで、ゲイツ氏は記者に対して、より多くの木を植えることで気候への悪影響を逆転できるという考えは、「完全にばかげている」と軽蔑的な反応を示した。

一方で批評家たちは、樹木を伐採して埋めることの利点を主張する論理の穴をすぐに指摘している。

「これは驚くほど悪質で逆効果なアイデアだ」と生態学者、ジョン・ミューア・プロジェクトの共同設立者チャド・ハンソン氏はエポックタイムズに語った。

同氏は、既存の木や森林が「大気中の過剰な炭素」を削減するための「これまでのところ最善かつ最も効果的な手段」であると述べた。

さらに、研究では古木は、はるかに多くの大気中の炭素を捉えることが示唆されている。選択的な間伐は、古木に対するリスクをもたらす可能性がある。

生きている木は、大気中の炭素を大量に蓄えている。ある推定では、米国の森林と草原の CO2 貯留価値は年間 8 億 6600 万トンに達している。これは、5千万台のガソリンまたはディーゼル燃料車からの年間排出量に相当する。

一部の研究は、伐採した木の残骸を埋めることは、CO2回収として機能する可能性があるという理論を裏付けた。2019年の研究では、木質バイオマスを貯蔵することで年間数十億トンの炭素を除去できることが示された。

ハンソン氏は、「樹木は樹齢が上がるにつれて、より多くの炭素を隔離して蓄え続ける。これは樹齢がどれだけ高くても同じだ」と反論し「既存の樹木を伐採して埋めると、大気中の炭素を取り込んで削減する能力がなくなる」と述べた。

環境活動家が主張する間伐と廃材の保管の利点や二次的環境効果について、詳細な分析は今もってない。

「既存の樹木を伐採して埋めると、大気中の炭素を取り込んで削減する能力がなくなる」

 

チャド・ハンソン 生態学者、ジョン・ミューア・プロジェクトの共同設立者

データベース「Science Direct」に掲載された研究では「炭素回収による社会的および環境的影響の分野における持続可能性に関する研究は十分に行われておらず、この分野の研究はまだ未熟である」と述べている。

コダマ・システムズのウェブサイトでは、炭素会計フレームワークは開発中だとされていてそれ以上の詳細は提供していない。コダマ・システムズの代表もエポックタイムズのコメント要請に応じなかった。

2019年9月12日、ある男性がモンタナ州ディアロッジ近くで松の丸太の山を調べている(Chip Somodevilla/Getty Images)

成熟した森林とうっそうとした樹冠を、CO2隔離のために厳格にそのまま残すという主張は、一流の科学研究者からも支持されている。

フレッチャースクール国際環境政策センターの創設ディレクターであるウィリアム・ムーマウ教授は、大気中の炭素を貯蔵するための「proforestation(原生林を育むこと)」を支持する派の一員。

彼は植林の熱心な支持者だ。炭素貯蔵能力が優れているため、老齢林や中齢期の森林を放置することを提唱している。

ムーマウ氏は、2019年のYale Environment 360のインタビューで、このように語った。

「既存の自然な森林を成長させることは、私たちが持つあらゆる気候目標に不可欠だ」

ウィリアム・ムーマウ氏、フレッチャースクール国際環境政策センターの創設ディレクター

「できることの中で最も効果的なのは、既に植えられ、成長中の木々をそのまま成長させ、その生態学的な潜在能力を最大限に活用し、炭素を貯蔵し、環境サービスを提供する完全な森林を育てることだ。既存の天然の森林を成長させることは、私たちが持っているあらゆる気候目標に不可欠なのだ」

(続く)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
南アメリカを拠点とする記者です。主にラテンアメリカに関する問題をカバーしています。