【プレミアム報道】知られざる中国共産党の海外拡張(3)

2023/10/03
更新: 2023/11/27

高まる西アフリカ軍事基地への関心

インド太平洋に基地を建設することは明白な利点があるが、中国共産党(中共)が西アフリカに軍事基地を建設する可能性も大いにある。

中国は西アフリカの9か国の港湾プロジェクトに69億ドル(約8300億円)を投じている。9か国はアンゴラ、カメルーン、コートジボワール、赤道ギニア、ガーナ、ギニアビサウ、モーリタニア、ナイジェリア、シエラレオネだ。

エイドデータのパートナーシップ・コミュニケーション担当ディレクター、アレクサンダー・ウーリー氏によれば、中国から西アフリカ諸国への資金や資源の流れが、中共の海外拡大の順調さを示している可能性があるという。

ウーリー氏は8月15日、米保守系政策研究機関「ヘリテージ財団」の講演で、「中国はこの地域(西アフリカ)のどこかに基地を持つだろう。しかし、どの国なのかは、明らかにしていない」と語った。

けれども、ヒントはある。エイドデータの報告書によれば、赤道ギニアとカメルーンが候補に挙がっている。中国はすでに赤道ギニアのバタ港に6億5900万ドル(約890億円)以上、カメルーンのクリビ港に13億ドル(約1900億円)以上を投じている。

両拠点とも中共にギニア湾での比類ない地位を提供し、アフリカで急拡大する市場全体における外国投資の主要国としての地位を固め、中共に大西洋への足がかりを与えることになる。

「西アフリカや中央アフリカに中国の海軍基地を建設するということは、米国や北大西洋条約機構(NATO)加盟国を簡単に攻撃できる距離に中国共産党海軍を置くことを意味する」と報告書は指摘した。

バタで勤務を終えて寮に戻る中国とブルキナファソの労働者たち。AFP PHOTO / ABDELHAK SENNA (Photo credit should read ABDELHAK SENNA/AFP via Getty Images)

そのため、米軍トップは昨年、アフリカでの軍事的プレゼンスを拡大するために中国政権が最も力を入れている場所は、赤道ギニアのバタ港だと述べた。

また、カメルーンのクリビ港は現在、中国最大の軍艦を収容するのに十分な深海と大きな桟橋を持っている。

「バタ港もクリビ港も、中共が基地を建設し、地域の指導者と長期的な関係を築くには魅力的な条件を備えている」と前出のケスラー氏は言う。

「しかし、中共の第一目標は、影響力を拡大することに加えて、影響力の領域を維持することだ。海軍基地については、まず内部から構築し、外部に拡大する可能性が高い」

米中競争はグローバルな性格を帯びる

中共がどこに基地を建設するにしても、ギャラガー氏と中国特別委員会の抵抗なくして計画することはできないだろう。

エイドデータの報告書は、米国が中共の投資を嗅ぎつけると、現地政府を誘導し中共の野望を阻止するために、あらゆる手段を講じる可能性があると指摘した。

こうした取り組みは、米国の裏庭(中南米)を含め世界中で行われている。6月には、中共がフロリダ州沖100マイルにスパイ基地を建設することでキューバと合意したと報じられた。

2019年4月11日、キューバの首都ハバナの中国人居住区 (Photo credit should read YAMIL LAGE/AFP via Getty Images)

そのため、本格的な軍事衝突が勃発するまでは、中共はできる限り目立たないよう行動しなければならない。

「軍事的に防衛可能な港がないことは、中国の頭痛の種となっている」と報告書は指摘する。「紛争状況において、それらの港湾は対戦相手にとって優先的に攻撃の標的となるだろう」

中共は困難に直面している。中共には米国のような正式な同盟国がない。軍事力の保護を確保するための独自の基地を建設することができるまでは、世界のどこであろうと、(中共にとって)軍事的プレゼンスが歓迎されることなど期待することはできないのだ。

「中国は、NATOや比較的新しいAUKUS(米英豪の安全保障枠組み)のような防衛同盟に属していないため、艦船を停泊させたりできる関係の国がない。つまり、米艦隊がナポリに基地を持っているような関係がないということだ」とウーリー氏は言う。

「中共がさらに遠くへ艦船を配備したいのであっても、海軍基地を持つ同盟国とはそのような関係がない。他の近代的な海軍が持っているような多くの補給艦も保有していないのだから、中国が海軍基地を持つ場所を探しているのは明らかだ」

米指導部は現在、中国の次の基地がどこになるかを推測する必要があると同時に、その基地建設を阻止する方法を見出す必要性にも迫られている。

そのため、米国の指導者は、中国の戦略的思考や利用可能な選択肢の変化に素早く適応する必要がある、とケスラー氏は言う。

「米国とその同盟国は、追いつくだけでなく、中共による長期的な成功や拡張のパターンを効果的に最小化、あるいは防止するためのアプローチ、考え方、戦略、戦術を適応させる必要がある」

(完)

エポックタイムズ特派員。専門は安全保障と軍事。ノリッジ大学で軍事史の修士号を取得。