岸田首相、NATOサミット参加 期待高まる日本の役割

2023/07/11
更新: 2023/07/12

岸田文雄首相はリトアニアで開催される北大西洋条約機構首脳会合(NATOサミット)に出席する。岸田首相はNATOに対して、インド太平洋地域における安全保障問題の関与を求める見通しだ。政策専門家たちは、これが日本とNATO間の安全保障協力強化の新たな兆候であり、日本の安全保障政策が欧州のビジョンと一致しているとの見方を示している。

岸田氏は11日から14日までの4日間で、リトアニアとベルギーを訪れる予定。サミット出席に加え、EUのリーダーたちとの会議を開催し、共同声明を発表することも予定している。特に中国とロシアのアジアにおける活動に対する警戒感をNATOと分かち合うとみられる。

松野博一官房長官は記者会見で「ヨーロッパとインド太平洋の安全保障は密接に関連している」という認識を岸田首相がNATOとEUと共有し、両組織のインド太平洋問題への関与強化を再確認すると述べた。

NATOサミットへの出席は岸田首相にとって2回目だ。中国とロシアの軍事的脅威に直面する韓国やオーストラリア、ニュージーランドのリーダーたちも参加予定となっている。

台湾の政策専門家である緑洲教育基金会の謝文生代表はボイスオブアメリカの取材に対し、岸田氏が推進するインド太平洋戦略には「インド太平洋地域の強化」「EUとNATOとの連携」「グローバルサウス(南半球の新興国)の取り込み」の3つの柱があると指摘する。こうした戦略から、日本とNATOが協力関係を深め、中国に対抗する必要があるとの認識を示しているという。

具体的には「特にサイバーセキュリティや人工知能(AI)、衛星防衛など、日本が弱点としている領域で、技術的に高度なヨーロッパの援助を求め、中国からのサイバー攻撃や情報戦に対抗することを意味する」と続けた。

台湾国防安全研究院の政策アナリストである詹祥威氏は、日本の国際的な参加レベルが高まることは、日本の現在の安全保障指針と政策が西側民主主義陣営の期待と利益に合致していることを示していると述べた。

今回のEU会談では、海洋安全保障、サイバー攻撃対策、および半導体供給の不足への対応など、幅広い分野の安全保障協力をより強化するとみられている。

詹氏は特に、中国がガリウムやゲルマニウムの輸出を制限し、世界的な産業チェーンの再編が叫ばれる中、日本にとって技術力あるヨーロッパ諸国との緊密な二国間協力が重要になっていると述べた。

東京NATO事務所開設

NATOは2024年、東京に連絡事務所を開設し、韓国、オーストラリア、ニュージーランドとの協力の中心に位置付けると発表した。

東京事務所について、中国側の厳しい反発を引き起こすのみならず西側からは仏マクロン大統領が反対意見を表した。マクロン氏はNATOは憲章で定める「北大西洋地域」に注力すべきだとし、インド太平洋地域への拡張は支持しないと述べた。

いっぽう日本の防衛研究所研究の前室長で、日本安全保障戦略研究所の理事長である高井晉氏は、NATOが東京に事務所を設立することは、NATOの地理的範囲を拡大することを意味しないと語った。NATO憲章第10条によれば、NATOに加入する資格があるのは欧州の国々だけで、日本には加入資格がない。

「現在、全世界の民主国家はすべて自由で開かれたインド太平洋(FOIP)を共有しており、ヨーロッパとインド太平洋地域のセキュリティは分け難い。特に覇権を強化し、軍事的に不透明な中国に対抗するために、東京に事務所を設立することは、ヨーロッパ諸国が将来的に日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドとの国別パートナーシップ協力計画(IPCP)を推進する手助けとなるだろう」と述べた。

謝文生氏によれば、日本はIPCPのもと、東京事務所を設立させ、中国への抑止力増強に繋げることができるとした。いっぽう、事務所設立権はNATOにあるため、中国が日本に対して圧力をかけても効果はないとした。

このほか、反対を示したフランスには、中国による影響工作が効果が出ている可能性を指摘されている。マクロン氏は今春に訪中し、厚遇されている。そして、中国資本の顕著な仏領ニューカレドニアが独立運動を引き起こしているにも関わらず対処していない。

台湾海峡の平和維持

2022年12月、日本と英国、イタリアによる共同戦闘機開発が発表された。写真は英国リンカーン空軍基地(Photo by Joe Giddens – WPA Pool/Getty Images)

岸田氏は13日予定の日EU首脳会談サミットで、共同声明を発表する。欧州側が作成した草案によると主要な課題には対中国関係がある。また、台湾の武力による一方的な状況変化に反対するとの文言も記載されるという。

日本と英国の円滑化協定(RAA)が4月末に承認されたことを受け、新型戦闘機は日本と英国、イタリアの3か国共同で製造することとなった。最近は日本がイタリア海軍と協定を結び、イタリアのF35戦闘機の発着艦訓練を日本のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」で行うことで合意した。

「日本は軍事面で英国、フランス、ドイツ、イタリアといった欧州の主要国家との共同軍事演習を強化し続けており、特にイタリアとの関係は急速に深化している。既存の英国との関係を考慮に入れれば、すでに同盟国間の軍事協同プロジェクトに近い状態にある」と詹祥威氏は述べた。

日本は「台湾海峡の平和」をG7広島サミットを含め多数の国際会議の共同声明に盛り込むことに成功しており、今後も日欧間で安全保障の協力分野が増えるであろうと指摘した。

詹祥威氏は「半導体協力、海洋管理、デジタル管理、防衛などの点において、日本とEUは台湾海峡や南シナ海の状況に眼を向ける。(対中)リスク軽減のもと協力の範囲を広げることが可能だ」と語った。

大紀元日本 STAFF