韓国は現在、外国の情報機関が韓国で活動するのを防ぐ韓国版「外国代理人登録法」の整備を進めている。
昨年末、韓国の首都ソウルの松坡(ソンパ)区にある中華料理店「東方明珠飯店」が、中国当局が海外に設置する「警察署」になっているとの疑惑が浮上した。そして韓国にいた華人の反体制派活動家が中国へ違法に送還される事件が発生した。その半年後にも、済州島のホテルで同様の事件が発生した。
韓国の現行の法律では、中国当局が韓国で違法な警察活動を行ったとしても処罰の根拠にはならず、関連法の整備が不十分とされている。
6月15日、韓国の与党「国民の力」所属の崔在亨(チェ・ジェヒョン)議員は韓国版「外国代理人登録法」案を提出した。崔氏は、「東方明珠のようなことが二度とあってはならない。外国の情報機関による『影響力工作』を暴露し、国家の安全を保障する必要がある」と述べた。同法案は崔氏を含めた13人の議員が共同で作成・提出を行った。
崔在亨氏は、「外国代理人登録および管理法を整備することで、違法な盗聴行為および重要人物に対する買収行為などの活動を抑制し、メディアや世論を操作する悪質な行為も断ち切ることができる。不特定多数の外国情報機関による工作活動を適切に対処することは世界的な流れだ」と指摘する。
外国代理人とは、国家の利益のために第三国で積極的に活動する団体や個人のことを指し、多くの国では外国代理人をスパイ活動を行う諜報員とみなしている。
崔議員の事務所によると、韓国を取り巻く大国が「韓国内で自国の立場を主張・擁護する勢力を養成し、自国に友好的な世論を形成する『影響力工作』に力を入れている」という。「影響力工作」とは、外国の政治、経済、社会、文化などに入り込み、自国に有利な状態を作り出すための活動を指す。
同事務所はまた、「東方明珠飯店」の一件を例にとって説明を加え、
「今年5月、情報機関が一時的に結論を出した。漢江の蚕室にある中国料理店「東方明珠」は実際には中国(共産)政府の秘密警察局の役割を果たしている。ソウル市内に秘密組織を設立し、領事業務を代理し、中国人を送還し、中国(共産)のプロパガンダ活動を実行しているなど、いわゆる「影響力活動」を行う前哨基地となっている」と結論づけた。
同事務所によれば、中国駐韓大使の邢海明氏は、「中国外交部および中国共産党の情報機関『統一戦線工作部門』から『影響力活動』の指示を受け、積極的に任務を行っていた」疑惑があるという。
同事務所は「外国代理人登録法」制定の必要性について説明する際、「外国情報機関の『影響力工作』はさまざまな形式をとって浸透しており、韓国の政策決定を捻じ曲げ、自由・民主主義の体制を揺るがす可能性がある。米国、豪州、シンガポールにはすでに外国代理人登録法があり、カナダと英国も現在整備を進めているところだ」と話した。
同法案では、外国代理人として登録された個人または団体は、必ず法務部(日本の法務省に相当)に本人および外国当事者の氏名、財務記録などの書類を提出しなければならないと定めている。
また必要に応じて、法務部長官は関係機関に対し、提出された書類に虚偽がないかを調べるよう命じることもできる。仮に登録義務の不履行、書類の漏れや虚偽があった場合、当該人に対しては処罰が下される。
法案が定める処罰規定によれば、仮に登録のプロセスや活動禁止の命令に違反して外国代理人として活動した場合、5年以下の懲役または5千万ウォン(約450万円)以下の罰金が科される。仮に会計帳簿あるいは活動記録などを作成しない、もしくは法務部長官の要求に従わない場合、3年以下の懲役または3千万ウォン(約270万円)以下の罰金が科される。
中国海外警察署の拠点か、「和統会」の文字
昨年12月、スペインを拠点とする国際人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」は、中国当局が「韓国を含めた少なくとも世界53か国、102か所に海外警察署の拠点を設置している」と指摘する報告書を発表した。
今年の6月15日、首都ソウルの「東方明珠飯店」に続き、韓国の国家情報院や警察等の関係機関は現在、済州島のホテルに対して調査を進めている。
同ホテルは、在外華人で反体制派の者に対して監視を行い、韓国在住の中国人を違法に中国本土へ送還するといった非公式の領事業務を行っているとの疑惑が浮上している。
韓国公安当局の関係者の話によると、現在、入管法違反などの違法行為の有無を調べているところだという。
韓国メディアの報道によれば、告発を受けた同ホテルは2011年6月に2人の中国人によって買い取られ、去年8月、所有者の名義がXX有限公司に変更されていた。同公司は去年の7月に設立されたもので、登録された理事の国籍は中国だった。
同ホテルの看板の下には、「韓国社団法人 済州華僑華人中国和平統一促進会」の文字が掲げられている。韓国の公安当局は現在、同施設が事実上、中国当局の管理下にあるのではないかとみて調査を進めている。
「済州華僑華人中国和平統一促進会」は2013年11月29日に正式に設立され、同会の綱領には「中国大使館の指導に従う」といった文言が含まれていた。設立記念式典には中国駐済州総領事も出席していた。
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