中国のネット通販大手アリババの創業者で億万長者の馬雲(ジャック・マー)氏が最近、公の場に姿を見せる機会が増えている。起業家としてではなく、教育現場に力を注いでいるようだ。先日は東京大学で教鞭をとり、同社が主催し杭州で開かれた数学コンテストでも決勝を見守る様子があった。
中国共産党のテック企業に対する締め付け以降の数年間、馬雲氏は人目を避けてきた。体制の金融規制への批判を理由に拘束された可能性や、日本の温泉やスペインのプライベートクラブで過ごすなど海外の滞在時間が長いとも報じられた。
16日、東京大学の東京カレッジは公式に馬雲氏の講義が12日に開催されたと明らかにした。「イノベーションと起業家精神」と題した2時間あまりの講義は、「豊かな経験や先駆的・革新的な知見に基づいた」内容だったという。日本のほか中国やインドなどからの学生が公聴し、「様々な角度からの鋭い質問を相次いで投げかけ、馬客員教授との間で白熱したやり取りが繰り広げられた」と、大学は説明する。
大学によれば馬雲氏を5月1日から10月31日まで客員教授として迎えている。研究テーマは「持続可能な農業と食料生産」で、今回より後の講義は未定という。
東京での講義の前日、アリババのマイケル・エバンス総裁が馬雲氏の動向に言及した。仏パリで開かれたテック会合に出席した際、「ジャック(馬雲)は大丈夫だし、ハッピーだよ。現在は東京の大学で教え、中国でより多くの時間を過ごしている」と述べていた。
馬雲氏は2019年に会長職退任を表明するなかで、「教職に戻りたい」と話していたとされる。1995年に起業する以前は杭州の学校で英語教師を務めた。2020年10月、上海で開かれた金融フォーラムでの講演で中国の金融規制当局を批判し中国の銀行を「質屋感覚」とこき下ろした。その後3年近く、動向は不鮮明となった。
最新の例では、アリババ公式微博は17日の午後、杭州で「2023アリババ世界数学コンテスト」決勝戦が開催され、馬雲氏氏が大会会場に入り、参加者や出題者とオンラインで交流し、数学について語り合った。同大会は馬雲氏は2018年にスタートさせた数学促進プログラムだ。
3月には杭州の学校を訪れたとサウスチャイナモーニングポストが報じた。4月には香港大学が名誉教授任命を発表。馬雲氏は現在までに香港ほか台湾、フランス、イスラエルなどの複数の大学から名誉博士号を授与されている。
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