LGBT法案、議論打ち切りに自民議員ら反発 党内民主主義危ぶむ声も

2023/05/15
更新: 2023/05/15

LGBT関連法案をめぐる議論の進め方に党内外から批判が集まるなか、自民党の茂木敏充幹事長は15日の政府与党連絡会議で、速やかに手続きを進める構えを示した。16日の党総務会で了承を取り付ける方針だが、「結論ありき」の強引な押し切りに議員らは反発を強めている。

テレビ朝日が週末行なった世論調査では、サミット前にLGBT法案を成立させるべきとの回答は25%にとどまり、成立する必要はないとの回答は過半数の52%に達した。ジャーナリストの門田隆将氏は「女性と女児の命と人権を危険に晒す法案への“民意”はとっくに出ている」とツイートした。

危ぶまれる党内民主主義

12日に行われた自民党の合同会議では反対派が多数を占めたにもかかわらず、森屋部会長よって議論が打ち切られ、部会長らに一任された。これに対し和田政宗参院議員は、「反対と議論継続の意見が賛成を大きく上回るのに『一任』はあり得ない」と強調した。「『一任』ならば自民党のガバナンスは崩壊し、党や所属議員に投票した有権者の意見は無視する党運営で良いということになる」とし、「党内民主主義が無くなる。無茶苦茶だ」とツイートした。

青山繁晴参院議員は自身のブログで、当日は反対議員18、賛成議員11で、反対議員が過半数を制したと紹介。「ひな壇」の執行部が一任を「強行」したことに対し、青山氏はその場で「一任を認めません」と発言したという。

委員会の執行部が強引に反対の声を押し切ったことについて、高鳥氏は「『自民党では今後、反対の声が多くても部会を通る』という前列を作りました」と記した。

そして「差別、性同一性の説明、慎重な当事者団体のヒアリングもせず。保守であり積極財政派だった安倍先生が亡くなった途端、安倍先生のご遺志をないがしろにし平気で裏切る議員が残念でなりません」と落胆を示した。

自民党の茂木敏充幹事長は15日、LGBT関連法案の立法手続きを速やかに進める構えを示した。資料写真 (Photo by KAZUHIRO NOGI/AFP via Getty Images)

若林洋平参院議員も14日、自身のツイッターで「国民の声や当事者の思いを形にした修正案を全く無視した形の結末には納得出来ません」と苦言を呈した。

募る懸念

LGBT関連法案をめぐっては、自民党議員からは次々と懸念の声が上がっている。

小野田紀美参院議員はツイートを連投し、「包括的に差別対策やったよ風の法律をこんな風に通すのは、本当に困っている人は救えず、悪用しようとする人間を利するという全方位不誠実」だと指摘。ヘイトスピーチ解消法を根拠に「自治体で変な条例が作られていますからね。二の舞になりますよ」と警鐘を鳴らした。

外国の大使がLGBT法案で発言していることを念頭に「我が国のことは我が国の歴史文化価値観に沿って決めるべきであって、他国の人間が、特に自分の国ですら存在しない法律を人の国に押し付けて口出ししてくるのは内政干渉」であると強調した。

石川昭政衆院議員は自身のサイトで「女性スペース(トイレ・お風呂等)や学校現場・子供達への配慮が為されるのか、不透明さが残されたまま」だと指摘。条文中の「不当な差別はあってはならない」についても、「新たな分断や対立を生む可能性が高いと思われる」と懸念を示した。

赤池誠章参院議員も自身のブログを更新し、「今までの人権関係法になかった学校への努力義務が残っている」と問題点を指摘した。「発達段階に応じて、異性への理解を進めていかなければならない中で、性指向や性同一性を教えることは、混乱を招くだけ」と苦言を呈した。

そして、経済産業省の性的少数者のトイレ問題の裁判が最高裁で6月16日から始まるため、その結果見る必要もあるとした。

内心の自由への侵害か

高鳥氏は15日のブログで、合同会議では個人の「内心の自由」に踏み込むと考えられる発言があったと紹介した。

LGBTの人たちに対する嫌悪感を口にして罷免された総理秘書官について、「(総理秘書官のあのような発言は良くないと前置きのあと)、国の官僚が『思っていることも残念』だ」という発言があり、高鳥氏はこれについて、「『思ってもいけない』と言うのは『内心の自由に踏み込む』ものだ。実はここが活動家らの本当の狙いではないか」と懸念を示した。

拙速な議論には日本の大手紙も苦言を呈している。読売新聞は13日付の社説で「米国では、LGBTを子どもたちに教えるべきかどうかを巡って、対立が深まっているという。海外のLGBT対策を参考に、日本社会にふさわしい施策について議論を深めることが大切だ」とした。

故・安倍晋三元首相は生前、LGBT関連法案の制定を危惧していた。前出の石川議員は「生前、安倍元総理が懸念していたことがまさに現実のものになってしまい、残念でなりません」と綴った。

政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。
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