「テロリストの名を口にしない」犯行の連鎖に懸念 メディアの姿勢に厳しい声

2023/04/17
更新: 2023/04/17

15日午前11半頃、岸田首相は和歌山県内の漁港で応援演説を行う直前、男により爆発物を投げ込まれたが、幸いなことに首相にけがはなかった。一部報道は容疑者の男の生い立ちや動機に焦点を当てている。こうしたメディアの姿勢に複数の政治家が憤りを示し、安倍晋三元首相暗殺事件を例をあげ、テロリストの主張に耳を傾けてはならないと強調した。

テロリストに耳を傾けるな

「またテロリストのバックグラウンドなどをさも同情的に書く媒体がある事に、本当に何の反省もないんだ」。こう憤りを示すのは小野田紀美防衛政務官(自民・岡山)だ。「テロや犯罪を犯してあげる声に耳を傾ける事は、犯罪を犯せば意見を広く伝えられるというあってはならない前例になる」とし、テロによって社会を変えたという成功例を作ってはならないとツイートした。

国民民主党の玉木雄一郎代表(衆院・香川)は「かかる暴挙は民主主義の根幹を揺るがす行為であり絶対に許されない」と犯人の男を強く糾弾した。安倍元首相の暗殺事件を引き合いに出し、「山上容疑者を肯定するような言説もあるが完全に間違っている。テロにいかなる理由も正当性も与えてはならない。小さな隙間からテロははびこり民主主義を壊していくからだ」と声を上げた。

細野豪志衆院議員(自民・香川)は「今度こそ、24歳の男がどんな境遇にあろうが、テロ行為にどんな理由があろうが同情の余地がないことをマスコミは報じるべき」だとツイートで指摘。若者の「漠然とした不安」や「失望」がテロの背景にあるとの言説に対し、「それらはどんな時代もどの国にもある。民主主義国においてテロを時代や政治のせいにするのは有害無益」と一蹴した。

テロの連鎖、メディアにも責任

細野氏は、歴史を紐解けば「テロリズムは連鎖してきた」と指摘する。

「1921年、安田善次郎の暗殺に同情が広がり直後に原敬が暗殺された。五一五の後のニニ六も然り。その後、わが国はどうなったか。歴史はテロリズムを擁護することの恐ろしさを証明している。わが国は岐路に立たせれている」。

細野氏はまた、「安倍晋三元総理殺害テロに端を発し法案を通したことが本当に正しかったのかも検証が必要」であるとし、小野田氏もテロ事件に成功例を作ることは「次のテロを生む悪行」であると警鐘を鳴らした。

テロの連鎖について、メディア報道の責任を追及する意見もある。

弁護士の北村晴男氏は15日、「テロリストを英雄視する左翼活動家、テロリストに『報酬』と『達成感』を与える報道を繰り返したテレビの責任は重大」とツイートした。

細野氏は「安倍晋三元総理へのテロの後、テロリストをモデルとする映画を報じた新聞社もあった。元テロリストが製作した映画を告知したことに驚愕した」とツイートし、マスコミに自己検証を求めた。

言ってはいけないテロリストの名前

「男はこのテロ行為を通じて色々なことを手に入れようとした。そのひとつが、悪名だ。だからこそ、私は今後一切、この男の名前を口にしない」。BBCによると、ニュージーランドのアーダーン首相(当時)は2019年3月19日、約100人が死傷した銃撃事件後にこう誓った。

小野田氏は「どんなバックグラウンドがあろうと、凶行に及んだあの殺人犯も今回の犯人も1ミリも許されるものではない。アーダーン首相の言葉は正当の極みだと思います」と賛同を示した。

凶悪な犯罪者の名前等の記録を抹消する措置は古代ローマにも存在し、「ダムナティオ・メモリアエ」と呼ばれていた。ユダヤ人やキリスト教徒を迫害し、恐怖政治を敷いたドミティアヌス帝などがこのような措置の対象となった。

その上で小野田氏は「政治がー世の中がーだから凶行を犯すことも仕方がない、などと言う者は、どんな立場に置かれても犯罪を犯さずに前を見て懸命に生きている善良な国民を愚弄するのか」と記し、「凶行を容認するような者の事を、私はテロに加担する者だと判断する」と綴った。

政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。