第三次世界大戦は間接的に始まっている

2023/03/05
更新: 2024/06/13

ウクライナが示す世界の現実

ロシアがウクライナに侵攻して1年が経過した。侵攻初期はロシアが短期間で戦争に勝利すると思われたが、ウクライナ軍がロシア軍に反撃すると状況が一変する。ウクライナ北部のロシア軍は大損害を受けて撤退。ロシア軍はウクライナ東部と南部で攻勢を行うが戦線が膠着。2022年9月からウクライナ軍はハルキウ付近で反攻を行い奪還に成功した。

2023年2月になるとロシア軍はウクライナ東部で攻勢を行うが戦線を突破できない。それどころかロシア軍は損害を増やすだけに終わる。ロシア軍はウクライナ東部のバフムト付近で前進するが決定的な勝利を得られない。

欧米では自国が保有する戦車をウクライナに提供する動きが加速。さらに欧州各国が保有するレオパルト2戦車がウクライナに提供され、一部は既にウクライナに到着した。欧米の戦車がウクライナ軍の戦力になるのは夏からとされている。

国連ではロシア軍のウクライナからの撤退を求める決議が採択されたが、中国・イラン・南アフリカなどが棄権に回るなど世界が分断されたことを世界に示した。さらに中国がロシアに武器弾薬を提供する動きが危険視されるなど不穏な動きが続いている。

 

ロシアに対する間接的な戦争

国際社会では軍隊を用いて先に開戦すると今の平和を否定する行為と見なされる。この場合は今の平和を否定するので悪の国となる。これが国際社会の暗黙の了解。何故なら今の平和は強国に都合が良いルールだから、強国は今の平和を維持したい。さらに他の国を従わせたいから、先に開戦すると平和を否定する悪の国にされてしまう。

これは白人世界の暗黙の了解なのだが、今の世界は白人世界が優位だから定着している。これは好き嫌いの世界ではなく受け入れるしかない世界。だが、これでは国防が困難だから各国は抜け穴を利用して自国を守るのも基本。端的に言えば、直接軍隊を使って戦争をすれば悪の国にされるが、軍隊を使わない間接的な戦争であれば黙認される。

戦前のアメリカが日本に対して行った間接的な戦争が典型例。アメリカは日本を敵視しており、日本と対立中の蒋介石を軍事支援した。アメリカは蒋介石に軍事物資・義勇兵であるフライングタイガースを派遣した。義勇兵と称しても中身は正規兵だが、国際社会では義勇兵と称すれば黙認されるのも現実。このような軍事物資・義勇兵の派遣などは間接的な戦争に該当し、各国が国防のために使うのが現実。

現代であれば各国がウクライナに対して行う軍事支援がロシアに対する間接的な戦争の典型例。このためプーチン大統領は2月26日、“NATOはウクライナ向けの兵器供与を通じて紛争に参加している”と非難した。プーチン大統領の非難は当然だが、NATOはロシアに対して間接的な戦争をしているので参戦していない。回りくどく“ロシアに対して間接的な戦争をしている”と負け犬の遠吠えをしたのだ。

NATOは中国のロシアへの軍事支援を察知。さらにイランはドローンなどをロシアに供給している。これらはどうなるのか?
プーチン大統領の主張を借りれば“イランと中国はロシア向けの兵器供与を通じて紛争に参加している”ことになる。つまり第三次世界大戦は間接的に始まっているのだ。

 

予想される複数の戦域

ウクライナ戦域は第三次世界大戦の主戦場の一つ。他の戦域はイラン戦域と中国戦域の三戦域で、未来の世界では第三次世界大戦に区分されると推測する。今はイラン・中国は軍事支援することで間接的な戦争を実行。目的はロシアを自国の鉄砲玉にして主敵であるアメリカを弱体化させることだ。

イランと中国としては “理想としてはロシアとアメリカは核戦争で共倒れして欲しい”というところだろう。だからロシアを軍事支援して少しでも戦争を長期化させたい。そしてアメリカ軍をウクライナに引き込んでロシア軍と戦闘して欲しいのだ。何故ならロシア軍と戦闘すれば、それだけイランと中国と戦争する戦力が低下する。

イランと中国も戦争の臭いを感じ戦争に備えているのだ。だから少しでもアメリカ軍をウクライナに移動させる間接的な戦争を仕掛けた。イラン戦域では、サウジアラビア・イスラエルが主役となり熾烈な戦いを行うことになる。中国は日本を戦場にしてアメリカ軍と熾烈な戦いを行うだろう。

中国がアメリカと雌雄を決する戦争を選んだら台湾侵攻などしない。台湾侵攻をすればアメリカは台湾を軍事支援する間接的な戦争を行う。これでは中国に不利だから、日本をジャンプ台にアメリカと雌雄を決する戦争をすることになる。

中国人が日本の屋那覇島を購入したことで中国は、沖縄上陸作戦の橋頭堡を獲得。日本各地で中国系企業が在日米軍の近くの土地を購入。これで中国は開戦劈頭の奇襲攻撃を行う拠点を獲得している。中国は日本をジャンプ台に在日米軍を攻撃できるなら雌雄を決する戦争を覚悟するだろう。だから台湾侵攻ではなく日本を戦場にした戦域なのだ。

 

現実を見ろ

国連は第二次世界大戦の戦勝国のための組織。国連を使った現状維持が目的だったが戦勝国同士で対立。これで国連は東西対立の場に変わり間接的な宣戦布告の場に変わった。決議とは聞こえはいいが宣戦布告にも変わるのが現実。

実際にアメリカは国連総会の決議を間接的な宣戦布告に変えて湾岸戦争・イラク戦争を始めた。決議1441号に従い査察を継続すべきだと言いながら、決議688号を無視している。これがアメリカ主導になったら開戦の流れになるが、国連がきな臭くなったから第三次世界大戦の予兆だ。

日本は憲法9条をもとに平和を求めるが、日本が戦争を捨てても世界は戦争を捨てない。戦争は外国から日本に侵入する。日本が戦争を放棄しても世界は戦争を放棄していない。憲法9条が有効なら世界は既に採用して戦争を放棄している。

戦争を放棄しても紀元前のミロス島の悲劇が憲法9条は無意味だと証明している。当時のミロス島は軍隊を持たず、仮に戦争になったらアテネかスパルタに救援を求める計画だった。だが頼りにしていたアテネとスパルタが戦争を開始。するとアテネはミロス島がスパルタに使われることを拒みミロス島に侵攻。ミロス島の屈強な男は殺され、女子供は奴隷として売られた。これが戦争放棄の現実だ。

 

日本はどうする?

国連は敵味方の陣営分けが進んでおり、中国は米中戦争に向けて進んでいる。実際に中国では新予備役動員法がまもなく施行される。中国のことだから何でもありだと思うべきだ。最悪の推測をすれば、中国系企業が日本の土地を買ったのであれば、自国民保護を名目に人民解放軍を派遣するかもしれない。

中国人が多いなら多数派工作ができる。だから自国民保護を名目に人民解放軍を派遣することを否定できない。実際にロシアのプーチン大統領がウクライナ東部のロシア系住民を保護することを名目にウクライナに侵攻した。

では中国が自国民保護を名目に日本に人民解放軍を派遣したら岸田政権はどうする?
おそらく外交で解決すると言いながら自衛隊に反撃命令を出さないだろう。それどころか自衛隊に対して外交の妨害になるから自重するように命令するだろう。おそらく自衛隊が出動できるのは多くの国民が死傷してからだ。

(Viwepoint https://vpoint.jp/ より転載)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
戦争学研究家、1971年3月19日生まれ。愛媛県出身。九州東海大学大学院卒(情報工学専攻修士)。軍事評論家である元陸将補の松村劭(つとむ)氏に師事。これ以後、日本では珍しい戦争学の研究家となる。