中国の習近平主席は6日、北京の人民大会堂で、11月30日に死去した江沢民元主席の追悼大会を開催した。異なる派閥の2人は政敵に相当するが、習氏は全土規模の追悼ムードを演出した。その政治的意図的は何か。
死去の当日、中国共産党は「全党、全軍、全国各民族人民に告げる書」と題した文書を発表し、江氏を「崇高な威信を持つ卓越した指導者」と例えた。党機関紙などは連日、江氏を礼賛する記事を発表。政府機関や在外公館は半旗を掲げ、官民問わず中国のあらゆるウェブサイトのデザインは白黒に変更された。
江氏の遺体が1日に専用機で北京へ運ばれると、習氏ら党幹部が空港で出迎え、見送りの人員までもが動員された。6日の追悼大会に合わせ、全土で3分間の黙禱(もくとう)や汽笛や防空警報が鳴らされたほか、外国為替市場なども取引停止となった。さらにはゲーミングサービスや公共の場での娯楽活動も停止した。
注目は、習氏が追悼大会で過去の指導者に劣らぬ形で江氏を追悼したことだ。江氏の功績を讃えるとともに、緊密な党の団結を呼びかけた。
シンクタンク・ユーラシア研究センターのテレサ・ファーロン主任研究員は、「厳格な防疫措置と罰則に対する国民の強い不満に直面するなか、江氏を弔い団結を強調した」とツイートした。
台湾大学の陶儀芬政治学部助教授は、「江沢民の訃報はちょうど白紙運動が最高潮だった時と重なる」として、追悼大会によって民意をなだめ、運動の拡大を抑える狙いがあると、VOAの取材に語った。
習氏は弔辞で、1989年の天安門事件で「深刻な政治騒乱の際に対する正しい決定を擁護した」と述べ、江氏の武力鎮圧への関与にも触れた。さらには「悲しみを力に変え、江氏の遺志を受け継ぎ、実際の行動によって我々の哀悼の意を示せ」と呼び掛けた。
米国在住の時事評論家・秦鵬氏は、習氏の天安門事件の言及は「最近、中国各地で起きている白紙運動の抗議者に対する『断固鎮圧』のシグナルと受け取れる」と自身の評論番組で分析を示した。
秦氏は、習近平体制が「改革開放路線」の継承を含む江派の取り込みを図っているとみている。しかし、資本家の利益を重んじる江氏の「3つの代表」と、分配を重視する習氏の社会主義に基づく「共同富裕」は互いに矛盾する政策であるため、「うまくいかない」と指摘した。
秦氏によれば、追悼大会自体、見かけ倒しにすぎないという。「自らの利益しか頭にない中共幹部にとって、この表面的な『調和』ほど空虚なものはない」とし、挙党体制で飾る哀悼ムードも、党の結束には至らないと論じた。
「いずれにせよ、民主や法治、党の退陣を求める民意よりも、党が体制維持を優先していることが窺える」
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