中国共産党の支援が疑われるサイバー集団は、11月8日の米中間選挙に影響を与えるため大量の偽情報を作成、拡散している。選挙制度に疑問を投げかけたり暴動を正当化したりするといった内容で、社会の撹乱を狙っている。サイバーセキュリティ企業マンディアントが26日付の報告書で指摘した。
マンディアントによれば、多数のSNSアカウントを所有するサイバー集団「ドラゴンブリッジ」は中国共産党の政治的利益に沿った活動をしている。偽りの情報を流布することで、米国とその同盟国の間や政治体制の中に対立を生み出す情報心理戦を仕掛けている。
民主主義プロセスを否定
ドラゴンブリッジのアカウントは9月、複数のSNSに動画を投稿した。米国政府の制度に疑問を投げかける内容で、選挙を「意味のない無能なシステム」とし、中間選挙の投票権を放棄するよう呼びかけた。
動画はまた、立法プロセスが米国人に目に見える影響を与えないと虚無感をもたらそうとしている。このほか、1月6日の米連邦議会議事堂襲撃事件の動画を用いて、民主主義制度の基礎は「政治的内紛、党派性、分極化、分裂」などと主張した。
元米軍将校のロバート・スポルディング氏は、「中国共産党は非常に強力な米国の軍隊に対処できないことを知っている。このため直接的な軍事対決を避け、米国の日常のすべてに対して『超限戦』を挑んでいる」と述べた。
超限戦とは平時・有事を問わず従来の陸・海・空領域に括られず攻勢を仕掛ける中国共産党の戦略。2003年に改定した中国軍の法規には「三戦(世論戦・心理戦・法律戦)」を戦争領域とし、敵軍の瓦解工作を展開すると記している。
マンディアントは2019年6月から中国共産党の情報工作の監視と報道を続けている。同社はドラゴンブリッジが香港の犯罪者引き渡し条例抗議デモの最中に結成されたとみており、民主化運動の信頼を落とす工作を行っていると指摘した。
ドラゴンブリッジの活動はロシア側の政治的利益に一致する場合もある。9月、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン『ノルドストリーム』1・2でガス漏れ事故が発生。これについて「米国が自国の経済利益のために欧州や北大西洋条約機構(NATO)加盟国をないがしろにしてパイプラインを破壊した」と主張するコンテンツを、同組織が作成・配布していたという。
盗用、改竄、なりすまし
このほか実際に大手メディアの報道記事を盗用・改竄する場合もある。マンディアントはブログで、香港の「星島日報」が掲載した中国語の記事を例に挙げた。
元の記事には、「中国政府が支援するハッカー集団APT41が、少なくとも6つの米国州政府のコンピュータ・ネットワークに侵入。司法省がAPT41のハッカー5人を起訴した」と書かれていた。
しかし記事は次のように改竄された。「米国政府が支援するハッカー集団APT41が少なくとも6カ国のコンピュータネットワークに侵入。各国がAPT41のハッカー5人を起訴した」
サイバーセキュリティ企業のインティルージョン・テゥルースは長い間、APT41の活動を追跡してきた。最近、インテゥルージョン・テゥルースのTwitterアカウントのなりすましをマンディアントが確認した。
中国共産党を背景にしたマンディアントの情報活動には、明確な意図と一定規模の継続性がみられることから、今後も優先的に監視すると結論づけた。
(翻訳・大室誠)
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