米国が提唱するインド太平洋経済枠組み(IPEF、アイペフ)は9日(日本時間10日)、正式な交渉入りに合意した。サプライチェーン強化などを通じて、重要物資をカードに他国を脅迫する中国への依存度を下げる狙いだ。いっぽう、中国は「実質上の中国包囲網」であるとして警戒を強めている。
「『経済協力』というペンキを塗ったが、その下地は中国包囲のための『政治的枠組み』だ」
中国共産党機関紙・人民日報傘下の環球時報は9日の社説でこう反発した。さらに、米国の真の目的は「アジア太平洋地域で中国と切り離した供給網、産業チェーンを構築するためだ」と批判した。
米国は近年、軍事面でインド太平洋地域への関与を強めているが、経済面では環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を離脱するなど影響力が低下している。米国不在のなか、中国は日本や東南アジア諸国連合(ASEAN)などを「地域的な包括的経済連携(RCEP)」に引き込み、地域での存在感を誇示している。
IPEFに参加する14カ国のうち、中国との経済依存度が高い11カ国はRCEPに加盟している。中国はかねてから、IPEFには関税引き下げや撤廃が含まれていないことを取り上げ、「参加国に何の利益があるのか」と揺さぶりにをかけてきた。
環球時報9日付の社説もIPEF参加国を切り崩そうとする思惑をみせている。米国市場へのアクセスを期待する参加国に対し、「米国は見返りを与えないだろう」と批判を繰り返した。
こうした批判を念頭に、西村康稔経済産業相は会合後の記者会見で「参加国にメリットを感じてもらえるような枠組みをつくる」ことを強調。「米国がインド太平洋地域への経済的な関与を再び明確にしたことは大きな意味がある」とIPEFの重要性を唱えた。
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