南シナ海の行動規範を広げる中国共産党 外相の外遊は「時間稼ぎ」=報道

2022/07/30
更新: 2022/07/30

中国は、南シナ海における行動規範の採択を加速させると何十年も前に約束したにもかかわらず、現在も採択を阻止し続けている。

さらに、アナリストの見解によると、中国の継続的な引き延ばし作戦は、南シナ海での紛争リスクを低減するための規範が実施される前に、係争中の水路を掌握するための包括的戦略の一部だという。

2022年7月中旬、7月3日から14日にかけての東南アジア5か国訪問でマレーシアに2日間滞在した中国の王毅国務委員兼外相が、行動規範の策定交渉を急ぐことを改めて約束した。

「遅々として現状が進展せず、中国の増大する海軍力が南シナ海の係争中の領域で既製事実を生み出す中、王毅外相のコメントは時間稼ぎの試み以外何物でもない」と、オンラインニュース誌「ザ・ディプロマット」の東南アジア担当編集者、セバスチャン・ストランジオ氏は2022年7月の記事で述べている。王毅外相はさらに、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、タイを訪問した。

ASEANがこのような規範に取り組み始めたのは1990年代のことだ。以来、中国は1,200ヘクタール以上の土地を埋め立てている。これは他のすべての主権首長国が合わせて埋め立てた土地の約19倍に相当する。南シナ海の一部については、ブルネイ、マレーシア、フィリピン、ベトナムの4か国に加えて台湾が領有権を主張している。

中国共産党の習近平総書記は2015年10月に人工島を軍事化しないと約束したが、戦略国際問題研究所(CSIS)のアジア海洋透明化イニシアチブ衛星画像および分析によると、中国共産党は飛行場、港湾、レーダーなどの軍事施設を備えた前線基地を強化し、2022年もこうした建設を継続している。

2016年7月、ハーグの常設仲裁裁判所が国連海洋法条約(UNCLOS)に基づいてフィリピンに有利な判決を下し、中国が定める「九段線」に法的根拠がないとの裁定を下したものの、CSISによると、中国はこの地域の大部分、およびその地域の推定110億バレルの 未開発 石油と190兆立方フィートの天然ガスの権益を主張している。

インドネシアは南シナ海の領有権を主張していないものの、天然ガス田を含む排他的経済水域の一部が中国の「九段線」に含まれている。またインドネシアが北ナトゥナ海と呼ぶ海域には中国船が日常的に侵入しており、両国間の緊張を引き起こしている。

ASEANは2002年に南シナ海における当事者行動宣言への署名を中国に合意させたものの、中国が数千ヘクタールの土地の所有権を宣言し、岩礁を人工島に変えることを阻止することはできていない。

2013年、中国は人工島を建設し始めた頃、正式な行動規範の議論を遅らせ始めた。これに対し、フィリピンがハーグの常設仲裁裁判所に提起した。常設仲裁裁判所が2016年にフィリピンを支持する裁定を下した後、中国はASEANとの行動規範の枠組みを採用することに合意した。しかし、その後、中国は行動規範の最終的な文言の作成を遅らせている。

近年、行動規範の実施に関する圧力が強まる中、中国は引き延ばし作戦を一層強化している。

2021年3月、フィリピン・ワン・ニュースのウェブサイトでジャーナリストのマヌエル・モガト氏は、「交渉が遅延する間にも、中国は日々その立場を強化し、数百隻の漁船と民兵船を派遣して水域を掌握し、強大な海軍力と空軍力を構築し、占領領域をさらに要塞化している」と主張し、

「やがて中国が最終的に署名に同意する頃には、中国は戦略的水路を完全に掌握してCOC(行動規範)がもはや関連性を持たなくなっている可能性がある」と述べた。

最近の中国の活動は、そのような主張を繰り返し裏付けている。2022年6月、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内に100隻の中国船が侵入し、ジュリアンフィリペ礁として知られる領域に群がっているという報告が当局からあった。

2022年7月中旬、フィリピン西海連合のスポークスマン、ベンジャミン・ミゲル・アルヴェロ氏は、「領有権問題は、主権、資源へのアクセスという抽象的な問題だけではない」と述べた。南シナ海のフィリピン名にちなんで名付けられたこのグループは、国連海洋法条約に基づく裁定の6周年記念日に抗議運動を主導した。

「西フィリピン海の軍事化は、特に中国軍からのハラスメントの脅威により仕事に出て生計を担うことができなくなっている漁業者コミュニティを含む、何千人もの一般のフィリピン人に明確な影響を及ぼしている」とアルヴェロ氏は述べた。

さらに、フィリピンは「台頭する中国の拡張主義的野心」に立ち向かわなければならないとした上で、

「ドゥテルテ政権下での過去6年間とは異なり、信念を持った外交政策を推進することでフィリピン国民に奉仕することへのコミットメントを証明することを、新たに選出されたフェルディナンド・マルコス・ジュニア政権に求める」と述べた。

中国は、特にフィリピンとの交渉において、引き延ばし作戦の一環として共同石油探査プロジェクトをちらつかせている。例えば、2018年4月、当時のフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領と中国共産党の習近平国家主席は南シナ海での共同探査プロジェクトに合意し、フィリピン政府は6年間にわたる停止措置を解除した上で、フィリピン沖での掘削を開始することを許可した。しかし、2022年4月に中国政府は開示されていない理由により掘削を中止した。

フィリピン大学海洋問題・海洋法研究所のジェイ・バトンバカル所長この中止について、「中国は要するに、中国の条件に基づいてのみフィリピンを共同探査と開発に同意させようとしている」と述べた。

同時に中国は、独自に石油探査を実施する権利があるとを訴える他の諸国の試みを攻撃している。例えば、米国国務省によると、中国海洋石油総公司などの国営石油会社は、南シナ海の係争前哨基地の大規模な開拓、建設、軍事化に参加しているだけでなく、領有権を主張する東南アジア諸国が南シナ海の沖合資源にアクセスするのを妨害している。

Indo-Pacific Defence Forum