「トランプ氏と接触できる」…中国系NY市民、投資詐欺で起訴 被害額は2700万ドル

2022/07/22
更新: 2022/07/22

米司法省は18日、「トランプ元大統領や著名な政治家と接触できる」などと約束して、外国人投資家などから2700万ドルをだまし取った疑いで、ニューヨーク在住の中国出身の帰化米国人2人を起訴したと発表した。

公開された起訴状によると、李雪鋭(シェリー・リー)と王連波(マイク・ワン、字は音訳)の2人は2013年5月からほぼ10年間にわたり、テーマパークや教育機関など架空の計画に投資を呼びかけたり、不正な政治献金詐欺を行ったりした。被害に遭った投資家は150人以上、被害額は2700万ドルに及ぶ。

両被告は共謀者とともに、ニューヨーク州サリバン郡で架空の教育機関「トンプソン教育センター計画」を立ち上げ投資を呼びかけた。外国人投資家に対して、EB-5投資ビザ(注釈:50万ドル以上の投資をすれば米国永住権が取得可能)を通じてグリーンカードが取得できるなどと虚偽の約束をしていた。さらには、この教育機関が「確実にIPO(新規株式公募)される」と説明し資金を集めた。

李氏らは不正に集めた資金のうち、少なくとも200万ドルを流用・洗浄し、さらに250万ドルを明確な事業目的のないさまざまな個人経費に費やしたという。 個人的な費用とは、衣類、アクセサリー、宝石類、住宅、休暇旅行、高級ダイニング、米国著名人への政治献金など。  

両被告は、電信詐欺の共謀、マネーロンダリングの共謀、および連邦選挙資金法の管理を妨害することによって米国を欺く共謀で起訴された。

米連邦検事のブレオン・ピース氏は、犯罪の重大性と「有罪を示す圧倒的な証拠」から「重大な逃亡リスク」を指摘し、2人を保釈なしで拘束するよう要請した。2人は、米国と引き渡し条約を結んでいない中国と、王氏の場合はアラブ首長国連邦と「重要かつ長年のつながり」を持っていたという。

「前大統領への接触する権利」を販売

「李と王の両被告は、受け取った資金を政治献金に充て、政治イベントに参加し、当選した議員たちと写真を撮った」と検察は主張している。そのような写真を、偽りの教育センターにさらなる投資を呼び込むための宣伝として利用した。

訴状によると、2017年6月28日の資金調達イベントに、両被告と12人の外国人ゲストが出席し、トランプ氏と写真を撮った。中国人11人とシンガポール人1人の外国人ゲストは、それぞれ9万3000ドルの入場料を請求された。司法省によると、2人はその資金を使って、このイベントを主催した共和党全国委員会に対して60万ドルの選挙資金を違法に寄付した。

裁判所の文書によると、トランプ前大統領夫妻と並んで李氏が微笑んでいる写真は、後にTECのマーケティング・パンフレットに掲載された。 2018年、王氏は中国人らに対して「22万ドルを支払えば、大統領と連邦議会議員に会うことができる」と話している。  

さらに、王氏は2019年8月に開いた資金調達イベントで、ある中国人とトランプ氏の写真をグループチャットに送り「自分たちは二人の出会いを取り計らった」と書き添えた。その後、 チャットの1人が2週間後、トンプソン教育センター計画に20万ドル以上を投資した。

「中国版ディズニーランド

裁判所の文書によると、2011年頃に2人は「米国のチャイナ・シティー(CCOA)」という名前の中国文化テーマパークの建設計画を発表した。遊園地、マンション、ビジネスセンター、医療施設、大学、住宅を揃え、年間150万人の訪問客を誘致し、3000人の雇用を創出できる「中国版ディズニーランド」であると李は説明していた。  

「この提案は地元当局者や住民から懐疑的な見方をされ破棄されてしまった。その後に、李はビジョンを推進し始めた」と訴状には書かれている。  

また、2人は、ニューヨーク州トンプソン市から着工の承認が得られなかったにもかかわらず計画は順調に進んでいると、投資家に偽りの情報を発信し続けた。

2019年に更新報告を要求されたとき、李は教育センターの建設を示唆する写真とビデオを送信した。これらは、李がニューヨーク近郊のフォールスバーグで建設中の一戸建て住宅の映像にすぎなかった。検察によると、2022年3月の時点で、各敷地には何の建造物も完成していないという。

グリーンカードの約束


起訴状によると、EB-5の投資家の誰一人として、一時的または永久的なグリーンカードを受け取っていなかった。 EB-5投資ビザを統括する米国市民移民局(USCIS)は、2017年3月からトンプソン教育センターの投資家に対して、「USCISは事業計画が信頼できるものではないと判断したため、グリーンカードの要請を拒否する可能性がある」という通知を発行していた。

検察によると、トンプソン教育センター計画は、タウンハウス型住宅132戸、2ベッドルーム型マンション200戸、3ベッドルーム型マンション50戸が入居する大学教室2棟、大学生活動センター2棟、スポーツセンター1棟、コミュニティセンター1棟、学生寮6棟を建設することを約束していた。  

USCISは、「高密度プロジェクトに利用できるインフラがない農村郡」であるサリバン郡で、このような計画の実現可能性について疑問を提起した。 USCISは「この規模の計画にはそれなりのインフラが必要である。サリバン郡にはそれに対応できず、ビジネス計画と雇用創出の見積もりの両方に信頼性が認められない」と述べている。

トンプソン教育センター計画の投資に参加した少なくとも26人の投資家がこのような通知を受け取り、そのうち16人が最終的にグリーンカードの申請を拒否した。  それにもかかわらず、両被告は引き続き資金を募り、投資家に対して「投資はグリーンカードを保証するものである。そのうちの数人は9カ月以内にグリーンカードを手にする見込みがある」と言い続けた。  

2016年7月、王氏は自分たちの計画について懸念を表明し、1つのメッセージを書いていた。書類には、「米国の入管法は保証契約を認めていない。… これは違法だ」と書かれていた。

FBIのマイケル·ドリスコル補佐官は次のように述べた。「投資家とストロードナー(自分の名前で政治献金をするために他人のお金を違法に使用する人)から数千万ドルが流れ込んだ。彼らは、資金が実を結ぶと期待していた。実際には、『政治権力へのアクセス』という、たった一つの約束事が実を結んだだけである。外国の金は、私たちの移民と民主主義のプロセスを汚染している。我々は、それらを守るためにできる限りのことをしなければならない」。

共和党全国委員会の代表であるトランプ氏と李氏の弁護士であるヒロザワ・ノラ氏は、報道時間までにコメントを求めたが返答はなかった。王氏の弁護士、ジェームズ・ロス氏からもコメントは得られていない。

Eva Fu
エポックタイムズのライター。ニューヨークを拠点に、米国政治、米中関係、信教の自由、人権問題について執筆を行う。