漏えいした上海市公安局データベースに法輪功迫害の記録 テキスト送信で逮捕

2022/07/23
更新: 2022/07/20

6月下旬に漏えいが発覚した10億人もの中国国民の個人情報のなかに、法輪功迫害政策の記録が残っていた。中国共産党が市民の通報や監視を利用して迫害を実施していることが、公的な記録からも明らかになった。

ロイター通信などは上海市公安局のデータベースから個人情報が流出し、ハッカーが闇サイトで販売していると報じた。10億の中国国民の身分証明書番号、電話番号、犯罪事案などが含まれており、過去最大規模の個人データ盗難事件とみられている。

漏えいした公安の記録によれば、警察は2012年9月「X教団の内容を含む反体制的なテキストメッセージを携帯で受け取った」との通報を受けて、法輪功学習者の柏根娣氏を逮捕した。「X教団を利用して法の執行を妨害した」事案と説明されている。

柏根娣氏は国有石油大手・中国石油化工(シノペック)直轄の北京石油人事部門で幹部を務め、上海市でも最も豊かな徐匯区に住んでいた。迫害を調査する法輪功迫害国際組織(WOIPFG)にも、同氏が逮捕され拘禁されたとの報告がある。

柏根娣氏は国有石油大手・中国石油化工(シノペック)直轄の北京石油人事部門で幹部を務め、上海市でも最も豊かな徐匯区に住んでいた。(明慧ネット)

一般市民に通報「協力」請う

中国政府は法輪功弾圧強化策として一般市民に対する報奨金付きの通報を呼びかけている。2020年にも、通報を奨励するよう各省や直轄市に通知しており、一部の地方公安局は、懸賞金の最高額は10万元(約150万円)と発表している。通報対象は横断幕、スローガン、リーフレット、印刷物、USBメモリ、CD-ROM、テレビスポット宣伝など。

90年代には中国全土で7000万人を数えるまで人気を博した気功修煉法・法輪功。学習者たちは「真善忍」の理念で自らの道徳性の向上および健康増進に努めている。しかし1999年、当時の中国共産党最高指導者・江沢民元国家主席が法輪功弾圧を決定。法輪功の系統的な撲滅のために、「党中央法輪功問題処理指導グループ弁公室(610弁公室と呼ばれる)」を中央から地方政府まで設置した。

明慧ネットの報道によると、2022年上半期(1月〜6月)に2707人の法輪功学習者が身柄を拘束され、嫌がらせを受けた。943人は警察等に家財を押収され、32人は迫害から逃れるため放浪生活を余儀なくされ、51人は無理やり唾液とDNAを採取され、採血された。

明慧によると、上海の徐匡迪市長(当時)は上海の大学生に呼びかけ北京を訪問したことで影響力のある存在とみなし、柏根娣氏に重い処罰を計画した。大手企業に勤務する柏氏は、迫害初期における「ターゲット」となった。1999年の強制労働を皮切りに6度の釈放と拘束が繰り返され、その拘禁期間は計14年以上に及ぶ。自宅や病院にいても、610弁公室の関係者が彼女を監視していた。拷問等で衰弱した柏氏は、2017年6月に亡くなった。

法輪功に違法性はない 弾圧こそ犯罪

北京裁判所の元判事で法輪功を修める王崇明氏によると、中国の現行法で「法輪功の修煉が違法であると規定する法律は一つもない」と大紀元の取材に答えた。その資料を広めることも全くの合法だと指摘する。王氏は現在、米サンフランシスコに住む。

「中国の法律は公民に信仰の自由、表現の自由、政府や国家機関を監督する権利をそれぞれ定めている。公民に信仰の権利があり、これを広める権利もある。法輪大法の信仰を堅持すること、真、善、忍の信仰を広めること、迫害の実態を知らせることもすべて合法であり、法律の保護を受けるべきだ」。

中国共産党は「社会の安定」を名目に法輪功などへの思想弾圧を正当化している。人権弁護士の余文生氏は以前の大紀元のインタビューで、「現在の(共産党体制化の)中国は無神論的な思想で統治されている」「表向きには『信仰の自由』の看板を掲げているが、実際には共産党以外を信仰することを許していない。法輪功を信じる人が多くなれば、当局は(コントロールできない組織が大きくなるとみて)規制をかけ、さらに情け容赦なく弾圧するだろう」と述べた。

法輪功迫害問題に取り組んだ同氏もまた、延伸した迫害政策の被害を受けている。2015年の人権弁護士一斉拘束「709事件」で逮捕され、2018年には弁護士資格を剥奪された。2022年に釈放されたが刑務所で受けた暴行により、右手が自由に使えなくなるなどの後遺症が残っている。

余文生氏は、前出の王氏同様、法輪功が違法であるとの法的根拠はなく「法に背いているのは検察官、警察、法廷だ」と指摘する。「迫害こそが犯罪であり、彼らには将来的に責任を追及されるかもしれないと認識させるべきだ」と主張する。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。