ロックダウンを繰り返す中国では、全身を白い防護服で覆った「大白」と呼ばれる防疫スタッフが頻繁に目撃されるようになった。PCR検査や封鎖状況の監視、陽性患者の輸送など、その業務は多岐にわたる。「政府側の人間」として、市民から罵声を浴びせられることはしばしばだが、彼らも過酷な日々を強いられている。
米公共ラジオ(NPR)はそんな感染対策の第一線で働く「大白」らを取材し、その実態が浮き彫りになった。
不動産会社の営業マンだった陳さんは、4月から発熱患者1万5000人を収容する上海の臨時隔離施設で働くようになった。
中国共産党政権は昨年から、不動産業界への規制を強化したため、倒産した会社が相次いだ。陳さんもその影響を受けた一人だ。
「トレーニングを受けたが、検査の専門知識はなく、操作にも不慣れだった」という。
陳さんは同僚らとともに雨漏りのする部屋で寝泊まりしている。部屋には水道水も飲料水もない。派遣会社にペットボトルの飲用水を求めたが、上司から「近くの川の水を飲め」と言われたという。
劣悪な環境の中で働く自分も「感染するのではないか」と心配している。「陽性と確認された同僚の隣で寝ている」という。感染してもスタッフは休むことができず、隔離施設の外でゴミ収集などの仕事をしている。
陳さんのような「大白」は、季節性労働の需要に応じて各地を転々とする「農民工(農村からの出稼ぎ労働者)」のようだ。ある封鎖区域から別の区域へと絶えず移動し、人手不足が生じたところへ派遣される。
深セン市でPCR検査や、住民の脱走を防ぐためのマンション監視などのアルバイトをした盧さんの場合、仕事は1日6時間の2交代制で、収入は1日600元(約1万2000円)だったという。通常収入の約2倍だが、仕事は不安定で、時には危険な作業もあった。
上海に到着した後、盧さんの雇い主である派遣会社は彼の賃金の大部分を「仲介料」として差し引いた。
「騙された」と感じた盧さんは17日、仲間100人とともに上海市徐匯区の区政府庁舎前で抗議活動を行ったが、「公共の秩序を乱している」として追い払われたという。
仕事にありつけない元同僚らは、都市封鎖で上海を離れられないため、鉄道駅内での寝泊まりを余儀なくされている。
ロックダウン中の上海で、住民に威圧的な態度を取ったり、住民を無理やり連行するなどしているため、市民は政府への批判の矛先を「大白」に向けている。市民と「大白」が衝突を起こす動画が数多くネットに流出している。
ある「大白」に感染が確認されたが、彼が働いた隔離施設は受け入れを拒否した。複数の施設を転々とした後、倉庫のような小屋に入れられたという。「自ら隔離施設での勤務を申し出たが、こんな扱いを受けるとは思わなかった」
(翻訳編集・李凌)
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